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理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜  作者: Taku-3
第1部 理科部冒険記NEXT
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第23幕・業拳剛剣

「喰らえッ!!!」

大剣をウェルダー目掛けて振り下ろす。


鈍い金属音が響く。

直後、剣とウェルダーの身体の間に"何か"が割り込んでいる事に気づいた。


…奴の左腕だ。完全に反応されている…!


「くっ…流石"鋼鉄の魔人"を名乗るだけの事はあるな…。」

「…なあ、リカブ、人間とは不完全な生物だ。

だが、才能を帯びた者や勇気ある者を、有象無象と共に滅ぼしてしまうのは少々勿体無いだろう?」


「…だから"それ"でモンスターに変貌させた…とでも言うつもりだろう…!理解など…するものかッ!!!」


一層…いや、何層も強い力を込めて、大剣を奴の腕に押し込む。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」


奴の足元の石畳に亀裂が入る。


「…チッ」


ウェルダーが左腕を振り抜く。

大剣は弾かれ、劈くような金属音と共に火花が散った。


「…俺は残念だよ。

お前みたいに能ある人間程、人間である事に固執する事が、たまらなくな…。

だが…もういい、攻守交代だ。」


ウェルダーは拳を振りかざす。


「がっ…!?」


防御を意識した瞬間、既に頬に激痛が走っていた。

激しい耳鳴りに襲われながら、私は地面を転がる。


目の前が霞む。

喉に血の味が流れ込んでくる…。


 ――直後に聞こえてきたのは激しい金属音。直後、右肩に激痛が走った。

咄嗟に手で押さえると、歪んだ鎧が肩に突き刺さっているのが分かった。


…だが、怯んでいる暇は無い。

既に背後から、奴の重い足音が響いてくる…!


私は即座に立ち上がり、間髪入れずに背後に剣を振り回した。

だが、一切の手応えは得られない。


続いて後頭部に痛みが走る。眼球が飛び出したと錯覚する程、視界が大きく揺らぐ。

朦朧とする意識の中、再び背後に大剣を振るうも、耳に届いたのは空を切る音のみ。


いつの間にか、私の身体は体重さえも感じなくなっていた。

全身が、浮遊感を覚える。


 ――倒れる。


そう確信した時、私の膝は地に着いた。


私は咄嗟に、剣を地面に突き立てる。

辛うじて私の上半身は垂直を保った。

だが――


(殺傷力と防御力を兼ね揃えた鋼鉄の身体に…このスピード…弱点が…見つからん…!)

…思考を整理しても、打開案など浮かばない。

身体の自由が効かない今となっては、絶望を深めるだけに過ぎなかった。


「ここまでか…。あんだけ粋がっていた癖に、全く呆気ないモンだ。確かお前、"お前は私の手で殺す"とか言ってたよなあ?

…で、どんな気分だ?

今!ここで!俺に殺される気分はよぉ!?」


そう言い切ると同時に、ウェルダーは私の顔面を蹴り飛ばした。


狭窄する視界。

その中に映るものが、ウェルダーの姿から赤い空へと遷移していく。


だが…次第にそれも――



 見

    え 

  な 

   



・ ・ ・



『お前は――責務を果たさないまま逃げるつもりか?』


…頭の中に、聞き覚えのある(・・・・・・・)声が響いた。


『結局…お前は、肝心な時に1人では何も成せず、何も出来ない…無力な人間だったのだ。』


『私は…失望したよ。』


…走馬灯。

死の間際に流れ出す、人生のエンドロール…。


それは、私の命が残り少ない事を示――


『美味っ!?世界獲れるレベルですよ!』


ヨシヒコ君…?


…そうだ、昨日の夕飯はオムライスだったな…。


…走馬灯というのは、死の間際に流れる。

しかしそれは、最期に人生の反省会をする為の物ではない。

今この状況を…打開する術を探す為の物だ…。


彼等との関係は、僅か数日だった。

だが…誰かと共に在る数日は…かけがえの無いものだった…。


彼等を残して…私が死ぬ訳にはいかない。


私は…彼等の居る日常に、生きて戻りたい…。

私が今、帰るべき日常に――



だから…こんな所で終わっていいはずがない。

私には成し遂げるべき事が…成し遂げられ(・・・・・・)なかった事(・・・・・)が山程あるのだから…!


 ――私は目を開いて、立ち上がった。


そのままウェルダーに目掛けて全身で――ぶち当たる。


「…図に……乗るなァァァッ!!!」


ウェルダーの、重車輌の如く重い身をジリジリと押し退ける。


死にかけていた五感も、失われかけていた勇気と意思も、号声と共に息を吹き返す。


「うぉぉぉぉぉぉおァァァァアァアア!!!」


微かに怯んだ様子を見せたウェルダーに、大剣を振り下ろした。


鋭い金属音と共に、大剣がウェルダーの身体を削り取る。


「…はぁ?マジかよ…しぶとい奴だな…。」

「…ぬあぁぁあぁぁああああああ!!!」



ウェルダーが腕を掲げ、大剣を防ぐ。

…金属音とは異なる、生々しく湿った音。


ウェルダーの右腕はヒビ割れ、金属製の腕を、そして指先を伝い、黒い血液が地面に流れ落ちた。


「チッ…相棒1号ッ!」


…背後から石畳を砕く音が響く。

(マズいッ…後ろか…!)


「死ねっ!リカブ・イン!」

中年のモンスターが私の頭部に掴みかかる。



途端、銃声と共に頭部を掴んでいた力が失われる。


「今だッ…やれ!リカブ!!!」

振り向くと、大型の拳銃を構えたマワリ監督官の姿があった。


大剣がウェルダーの右腕にめり込んだままの、互いに行動を起こせない膠着状態。


私は剣を手放し、ウェルダーに全力で蹴りを入れる。


「!?」

ウェルダーが怯み、隙を見せた瞬間――


「"ディメンション・オーダー"ッ!」

私は"とある魔法"を詠唱する。


「コイツ…魔法まで…!」


「…さあ、制裁を受けるが良いッ!!!」


…魔法"ディメンション・オーダー"によって取り出したロケット砲を、

ウェルダー目掛けてぶっ放す。


眼前で爆発が巻き起こる。


奴の身体を、黒煙と炎が呑み込んだ。


「動ける者、鉄野郎に総攻撃だッ!」


マワリ監督官が怒号を上げ、付近の戦士は黒煙に突入する。魔導士達はウェルダーを取り囲むように、一斉に光線を放つ。


「…ここで死ぬのは…お前の方だ…!」




…煙が晴れていく。

取り巻きのモンスター達は、膝をついて見守っている。

力尽きて倒れそうになる私を、マワリ監督官が後ろから支えた。




「がっ……!?」

近くに居た戦士が声を上げる。

ふと目をやった先には、腹に無数の刺傷や裂傷を持ち、のたうち回る戦士達。

光と共に胸に穴を開け、静かに倒れ込む魔導士達。


私には、困惑する暇すら与えられなかった。


突如ロケット砲が爆発を起こす。

私は吹き飛ばされ、部分的に残っていた鎧すらもら粉々に砕け散った。

石畳を背に、再び倒れ込む。


(……身体が……動かない…。)

それでも必死に視線を動かす。


その先に居たのは、ヒビ割れた黒いガラスのようなドームに身を包むウェルダーだった。

その"黒いガラス"は、半透明でありながら金属のような光沢を持っている。

(…あれは…何だ……? …障壁…。…魔法…?)


「…さてと、リカブ・イン。

お前みたいに度胸と力のある奴は嫌いじゃない…。だが、今の俺は腹が立って仕方が無いんだ。」


冷たく、貼り付いた笑顔のままウェルダーはこちらに歩み寄り、私の首を左手で掴み上げた。


「死ね」


鎧を失い、生身の私の腹に、金属製の拳がめり込む。


肋骨が砕ける音と共に、

口腔内は血の味で埋め尽くされ、

地面には血の混じった吐瀉物が溢れ落ちる。



…私の意識は、ここで完全に途絶えた。



To Be Continued

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