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理科部冒険記NEXT  作者: Taku-3
瓦礫の街編
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第二十二幕・審判

激闘によって巻き上がった砂煙は晴れ、半ば崩壊していた城は、何事も無かったかのように完全な状態へと修復されていた。


「…終わったのですな。」

アビスが跪きながら呟いた。


「…叛意は全て削いだ。既にモンスターとしての自我を取り戻している…最高の状態だ。

…だが、まだ終わりではない。」

魔王は振り向くなり、並んで跪く3名のモンスターと、順番に目を合わせる。


「…寧ろ、これは始まりに過ぎん。人類文明の終焉を磐石な物とする為、これより次の作戦を――」


 ――その瞬間、重金属を引き摺るかの如き轟音が響いた。


3名のモンスターが振り向いた先…魔王の目線の先では…この部屋を隔つ黒鉄の扉が開こうとしていた。


「…遅かったな。ようやく戻ったか。」


「 ――氷結の魔人、"ヘイリー"。 」


魔王は扉の方を向いたまま、荘厳に告げる。



「…いや〜、急に城が崩れるからビックリしたよ〜っ!」


…部屋中に響く甲高い声と共に、扉の隙間から姿を覗かせたのは、色を失ったかのような白い肌を持つ少女だった。


その白さたるや、世界に彩色を忘れられたようにすら見える一方、病的な物とは全く異なる、新雪のような自然的な美麗さを醸し出していた。


「…"夜明けと共に集会を執り行う"と伝えておいた筈だ。何処で何をしていた?ヘイリー。」


「いや〜…あの〜…ホラ?話すと長くなるんだけど…」

歩み寄る魔王から目を逸らし、言葉を詰まらせつつも、少女ヘイリーは澄んだ声で答える。



「――"敗けた"と伝えるのに時間が必要か?」


「うっ……!?」


魔王は足元のヘイリーを睨みつける。

その巨体が醸し出すプレッシャーは、飄々とした態度を崩さないヘイリーの額に冷や汗を浮かばせた。


「なっ……なんだ…知ってるんじゃん……」


「……ウェルダー隊は王都陥落を、プロミネンスとアビスはインフィニティの奪還を成し遂げたというのに……

…"国外遠征"の為、お前に預けた1万程度の部隊は…8割が死んだ。」

「ちょっ…ちょちょ…待ってよ…!

私だって頑張ったんだよ…!?ただ…"ウェザー帝国"の連中がしぶとかったんだってば!!!」


ヘイリーは両腕を広げて弁明の論を叫ぶ。


「ほら、あの国…人間の間じゃ"世界最強の軍事大国"って呼ばれてるんだよ!?

王都丸ごと…とまでは行かなくても千人…いや、2千人は殺せたんだし…寧ろ労ってくれたっていいじゃん…」


…ヘイリーは平静とは程遠い状態でそう言い終わると、魔王の顔色を伺うかのように天を仰いだ。



「――もう良い。」


魔王はただそれだけを呟くと、踵を返して歩き出した。


魔王は静かに王座に腰掛ける。


 ――丁度日が照ってきたのか、ステンドグラス越しに差し込む光が一層強まる。


紫色の光が部屋中を覆った。


「…では、次の話に移る。」


魔王が口を開いた。



「新たに我らが魔王軍の一員となった、"インフィニティ"だ。」


魔王は目線を右にずらす。するとそこには、鳩尾に穴が開く程の傷を負っていた筈の白い髪の女(インフィニティ)が立っていた。


額には角が生え、特徴的な翠眼は反転目へと変貌している。

…最早人間の姿をしていなかった。


「きゃ〜〜〜っ!噂には聞いてたけどこの子なんだね〜!?やった〜!ずっと前から女の子の友達が欲しかったんだ〜〜!」


ヘイリーはインフィニティの元へ駆け寄り、笑顔を浮かべたまま両手を掴んだ。


「私ヘイリー!よろしくねっ!」


インフィニティは眉一つ動かさず、掴まれた腕を眺めて沈黙している。


「あれ〜…?緊張しちゃってる?」

「実はソイツ、お前が来る前まで腹に風穴空いてたんだぜ〜?」

横で眺めていたウェルダーが、ヘイリーの元に近づいて言った。


「ウェルダー…それマジ〜!? 私なんて、ウェザーの騎士に右腕を斬られてから3日位はお箸が持てなかったのに〜!」

「うわっ…片腕斬られるとかマジかよ…身体が脆い奴は苦労してんだなぁ〜!」

「うっさい!この石頭野郎!」

「おいおい、俺の頭は石じゃなくて金属製だぞ〜?」



「………集会中ではなかったのか…?」

……インフィニティを囲んではしゃぐ2者を、プロミネンスは遠い目で見つめている。



「――で、本題だが。」


魔王の一声で、一帯に静寂が戻る。

ヘイリーとウェルダーの目線は、再び魔王に向けられた。


「…インフィニティにはお前達と同じ、"四大魔人"の称号を与える。」


「いいじゃ〜ん!私達同じ階級って事でしょ?コレから気兼ねなくお話できるね、インフィニティちゃん?」

ヘイリーは賛成の意を表した。


「…しかし魔王様。それでは"四大魔人"が"5人"という事になるのでは?」

プロミネンスが言う。


「…四大魔人は、雑兵の編成や指揮などを行う事が認められた、権威ある階級なのです。」


…プロミネンスの呈した疑問に答えるように、アビスが語り出した。


「"船頭多くして船山に登る"。

権力の乱立は、秩序の崩壊を招く…。

…魔王様が導き出した、"秩序と権力のバランス"を保つ上で最適な人数は、"4人"。

"四大魔人"という階級が定められたのは、それ故なのです…。」


「その通りだ、アビス。」




「…よって、これより四大魔人の内、1名を解任する。」


「!?」

「うわっ…マジかよ…」

「え〜?誰だろ誰だろ〜!」


…プロミネンスは戦慄し、ウェルダーは頭を抱える中、ヘイリーは露骨に興味を示している。


しかし、誰もが理解していた。

この"審判者"の決断次第で、自分達がどのような末路を迎えるかを……


…張り詰めた空気が流れ出す中、魔王の決断を見透かしたように、"影"で笑みを浮かべる者の姿があった……。




To Be Continued

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