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理科部冒険記NEXT  作者: Taku-3
瓦礫の街編
18/22

第十八幕・Sink and melt


………。


…帰らなくちゃ…


…私は、帰らなくちゃ…


…帰らなくちゃ、いけないんだ…。


………。


帰るって…、



『…帰るって、何処に?』




『お前は…人を傷付けたお前は…』


『もう、人間には戻れないだろう…。』


…確かあの人は、そう言っていたんだ…。



・ ・ ・


「ここが…我らが魔王様の牙城…。遂に私も魔王様へのお力添えが出来るのですね…!」

先の戦いで"相棒1号"と称されていた、みすぼらしい中年の姿をしたモンスターが、口角を吊り上げて言った。


城と周囲を隔つ谷を跨ぐ石橋を、3体のモンスターが横に並んで歩いている。

彼等の背を小走りで追いながら、中年のモンスターが声を掛けた。


「ウェルダー様!私めに、どうかご指示を!

魔王軍新参者として、人類殲滅の為に如何なる助力を惜しまない事を誓います!」

ウェルダーは、ゆっくりと振り返った。

「指示か…そうだな…。じゃあ…」

軽く首を傾げて呟くや否や、ウェルダーは"相棒1号"の首を掴み上げた。

「!?…ウェルダー様…何をっ…?」

苦悶と困惑を表情に浮かべる1号の問いに対し、ウェルダーは一切反応する様子を見せない。ただ黒光りする右腕に、濁った空が反射するのみだ。


「…"水質調査"でも、して貰おうか。」

そう言うとウェルダーは、1号を石橋の外に、城を囲む深い谷に放り投げた。

「うわあぁぁあっ!!!」

「おいウェルダー、何を…」

横目で見ていたプロミネンスが言葉を発した。

「言ったろ?"水質調査"だって。」

ウェルダーはその言葉を即座に遮った。

ほとんど間も無く、谷底から悲鳴が反響し、辺り一帯を埋め尽くした。


「…あがァっ…!うがッ…アギゃぁぁぁぁぁあぁああ!!!」

谷底には、澱んだ液体が溜まっていた。

飛沫しぶきを上げてもがき、液体の中を浮いたり沈んだりしている内に、1号の姿は醜く変貌していく。

表皮が爛れ、肉が露出し、骨は軟らかい樹脂のように歪んでいく…その姿を最後に、1号は沈んだまま再び浮かび上がる事は無かった。


「…無駄な殺生はよせ」

谷底を見下ろしたまま、プロミネンスは言った。

「"無駄"?コイツにゃ戦闘は向いてなかった。コイツが銃弾一発で倒れるポンコツだから、俺も奥の手を晒す羽目になっちまったんだぜ?それでも俺は見捨てず、適職を見つけてやったんだ。」

ウェルダーはプロミネンスの真横に歩み寄り、プロミネンスが見つめていた谷底を指差し、続けた。

「アイツの働きぶりのお陰で、この"強酸の湖"に異常が無いか確かめれたんだぜ?なのに…それを"無駄"だあ?

…お前、心っつうのが無いんじゃねえのか?」

ウェルダーはプロミネンスに顔を近付けて言った。

「…もういい…行くぞ。」

プロミネンスはウェルダーと目を合わせないまま、石橋の上を再び歩き出した。


「…開きましたぞ。」

アビスは振り向くことなく、城の扉に面したまま言った。


アビスが手をかざす先にある扉は、人の身をゆうに超える巨大な物だった。金属のような光沢を見せると共に、まばらな黒錆が浮かんでいた。


扉と石畳が擦れ、削れるような音と共に、扉が開いていく。


扉の先には、仄暗い廊下が何処までも続き、紫色の炎を纏う松明が、その果てを追い掛けるように等間隔で並んでいる。


3体のモンスターは、終わりの見えない闇の中へと歩み進んでいく__



To Be Continued

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短あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…
2025/06/10 15:42 ピョートルダム大聖堂内
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