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理科部冒険記NEXT  作者: Taku-3
襲撃編
14/22

第十四幕・Infinity

「……なあ、お前。」


「そこに座ってるお前だよ。お前。」


「外は寒いだろ?早く家に帰りな。」


「……何だ。帰る家が無いのか…。」


「……分かった。俺に付いてきな。」


「…ああ、そうだ。聞いてなかったっけ…。」



「 お 前 の 名 前 は ? 」


・ ・ ・


「オイオイ…勘弁してくれよ…。

俺らはガキのお守りする為にこんな事してんじゃねえんだぞ…?」


「まあ良いじゃないですか。………さん。

……様だって、きっと賛成ですよね?」


「…そうだな。お前が着いてくるっつんなら、俺らは一向に構わないさ。


ただし……」


・ ・ ・




街道の煙が晴れていく__


「……お前を失った後は苦労したとも…。

"プロミネンス"を迎え入れるまでの間、人類に存在を悟られない事だけを考えてきたのだから…。


だがこれで…人類に勝ち目は無くなった…。」


ジュウッ


戦場を取り囲んでいた炎が消滅する。


「成程な…。」


「…プロミネンス殿…。」

背後からの声に、アビスはゆっくりと振り向いた。


「…このような僻地への侵攻を行ったのは、

かつての仲間を取り戻す為だったのだな。」

「…ええ、その通りですとも。


此奴は今、昏睡状態にある。

次に目を覚ます時には、全ての記憶を取り戻している事でしょう…。


人類滅亡へのカウントダウンは間も無く始まるのです…。」


アビスは、消えた炎の奥から現れた部下達に告げる。

「カス共よ…"インフィニティ"の再教育を行う…。一度魔王城に帰還するぞ。」


「御意!」

「他の部隊にも連絡して参ります!」




「……俺もウェルダー隊に撤退命令を出す。

…だが…その前に、だ。」

インフィニティを担ぎ上げ、プロミネンスは炎の壁があった場所を見つめる。



「……はぁ…はぁ…っぐッ……

…何処へ……行く気だ……!」


「…まだ動けるとは、想定外だった…。

やはり"火力不足"だったようだな…。」

全身に火傷を負いながら立ち上がったヨシヒコを、プロミネンスは静かに睨みつけた。


「返せッ……!9万職員さんを……!

返せぇッ………!!!」

ヨシヒコはプロミネンスの胸ぐらに掴みかかる。


「退け」

「…っがッ…!?」

ヨシヒコの腹に、プロミネンスの蹴りが命中する。


「くっ……まだだッ……!

返せッ……!仲間を返せッ……!

お前らなんかに…連れて行かせるものか…!!!」

ヨシヒコはプロミネンスの足元にしがみつく。

獅子に噛み付く鼠のように。

蛇を睨み返す蛙のように。

「小童が……邪魔をしおって…!

嬲り殺してくれるわッ!!!」

「よせ、アビス。

こんな奴…"殺す価値も無い"。」


ガンッ


プロミネンスはそれ以上何も言わぬまま、

ヨシヒコの頭を殴りつけた。

「…ッ…あ゛…」


「…帰るぞ。」

「…9……万…職員……さん……。」


…混濁する意識の中、ヨシヒコはただ一点を見つめ続けていた。


「さて、アビス。一つ聞こうか。


…今回の作戦…"インフィニティ"の存在、

そして魔王様の真意を知っておきながら何故、"俺に何も伝えなかった"のだ?」

「…プロミネンス殿…貴方は若い…。

"だからです"…。」


「…どういう意味だ。」

「それを…儂の口から言わせるのですか?」


「……いや、やめておこう。」

プロミネンスは戦場に背を向け歩き出した。


・ ・ ・




「死ね」

ウェルダーの拳は、無防備となったリカブの腹部にめり込んだ。


石畳には、血液が零れ落ちる。


「……ココに居たか。ウェルダー。」

「何だぁ?プロミネンスさんかよぉ?

悪いけど、今俺は忙しいんだ。」

リカブを掴みあげたまま、ウェルダーは答える。


「…"インフィニティ"を取り戻した」

「……ふぅん…?"インフィニティ"の事、知ってるんだな。

…それで?」


「"再教育"を実施する為に、一度撤退するぞ。」

「…今の俺は機嫌が悪いんだ。

せめてコイツを殺すまで、待って貰いたいモンだがね。」

ウェルダーの笑顔が、露骨に陰りを見せた。

プロミネンスは気にしない様子で答える。

「…断る。

魔王軍はお前の機嫌では動かない。

魔王様の意志によってのみ動く物だ。」


「…チッ…

アンタが"魔王様の意志"とか言っちゃうのかよ…。」

プロミネンスを横目で睨みつけつつ、

ウェルダーはリカブを手放した。


ドサリと音を立てて、リカブは地面に倒れ込んだ。


「…分かった分かった。帰りゃいいんでしょ?やっぱり、"適合者"の威光ってのは羨ましいモンですねー…っと。」

そう捨て台詞を残し、村の出口へ向かうウェルダーの表情は笑顔ながら、眉間に皺が集まっていた。



…街道の脇では、撤退するモンスター達を

戦士達の生き残りが見つめている。


…その中に、魔王軍への反撃を試みるものは誰一人として居なかった。



To be continued

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