1/58
00.誰かの記憶
酷い有様だ。
大地と海が黒き焔に焼かれ、永遠を生きる竜が今も呪われた焔に焼かれ続けている。
それがたった一人の人間の手によって引き起こされたと聞けば誰が信じるだろうか。
彼の人となりを知っているなら尚更に。
それでも私は問いたい。どうしてこんな事になってしまったのと。
浅葱色の髪と全身に広がる紋章を浮かべる青年に問い掛けても彼は何も応えず、破壊だけを振り撒く。
北の果ての地に仲間達と冒険の旅に出た彼は、そこで何かを発見して力に溺れ仲間達を裏切った。
彼を愛した私と彼女の気持ちも全て。
彼が力に溺れ理性すらも失ってしまったのなら私が彼を討伐するしかない。
例え私が無理でも彼女が、聖女のあの子がきっと彼を止めてくれると信じて。
今作品も完結を目指して更新していくのでよろしければお付き合いください。