門の前にて
バンと激しい音を立てて、勢いよく門が開かれると、土煙の中から、二人の小さな男の子が現れた。その男の子たちは木の葉でと木の枝を紐で編んだような、お粗末な鎧を着込み、桃色の木の枝の先に人の頭ほどのサイズもある尖った黒いきのみをくくりつけて、槍、もしくはハンマーのような武器に仕立て、ソレを俺達の方へ向けて叫んだ。
「穢らわしい、外人共め!!ここは我々エルフしか立入が禁じられた里!! 即刻立ち去れ!!さもなくば…」
キン!! とっ甲高い音がエルフと名乗る少年たちの警告を遮った。 いつの間にかエルエリスが少年達の前に立っており、背中に背負っていた自身の大剣の鞘を抜き片方の少年の頬にくっつけて睨みつけていた。
少年達は、呆気に取られたような表情をしていたが、自身の身につけていた鎧が、知らぬ間に、バラバラに切り裂かれて、体から、砕けてずり落ち、その音で何が起こったのかをようやく把握し、涙ぐみむ絶望的に怯えた表情で震えた。
エルエリスの一連動きの速さは、オレはかろうじて認識できるほどの疾かった。様子からして、アウリンも少年たちと同じくなにが起こったのかすら、暫く把握できていなかった。
「あ、ちょっと…エルエリス、やめて! 下がって…!」
二秒後アウリンが眼の前で起こったことをようやく把握し、片腕でオレを抱いたまま、エルエリスの肩を掴み、静止した。
「知りませんよ…。」
エルエリスはそう返して、黙って目を閉じ、後ろに下がった。
「ごめんね〜。君たち〜。 君たちが、この里の大人たちのために勇気ある行動をしたのは凄く偉いと思う…。 でもね、まずはちゃんと、話し合わないと。 村長さん、知り合いなんだ…呼んできてもらえるかな?」
アウリンは少年たちに近づき、しゃがんで目線を合わせてそういったが、少年たちは、ぶるぶると身震いするだけで、固まってしまっていた。 あの様子じゃ話なんて聞こえちゃいないだろう…。
オレはアウリンに抱かれていたことも合って、そんな少年たちの顔を改めて間近で見た。
眉目秀麗、二人共非常に整った顔立ちに、まるでワックスを漬けて磨かれた金属のように輝く髪色に、宝石を埋め込んだような、眼球を持つ美少年だったが、耳はなじかコウモリのように尖っていた。
「うーん、困ったなー。どうしようね〜?」
いや…んなこといわれても
アウリンはふざけているのか、喋れ無いオレをゆすり、そう聞いてきた。 するとなにか一瞬影が俺達の上に現れた気がした。
「危ない!」
次の瞬間、エルエリスは後ろから、アウリンのお腹に手を回し、後方へ跳んだ。凄まじい跳躍力で10メートルは軽く移動したと思う。 それとほぼ同時、森、山中に響くほど、の音を立てて、ナニかが少年たちの眼の前の、俺達がさっきまでいた場所に、落下した。
「……は、ケホケホなに?」
「…知ってる気配です。…おそらくは、」
「何処の何にでも…侵してはならないテリトリーがある、侵すモノは総じて災いをもたらすからだ…。」
土煙の中から、低い声が響いた。 その煙が晴れると、少年たちの前に独りの長身の男が姿を表した。また、その男を越えるほどのサイズを誇る黒い色の木製の大槍が地面に深く突き刺さっていた。