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第五回なろうラジオ大賞用

この三日月が輝く限り

作者: 城河 ゆう

「……ソルラーク殿下、ごめんなさい。 この場で婚約を破棄させていただきます……」


 婚約者に向けて、私は静かに告げた。



 きっとこれが一番だと、自分に言い聞かせながら……













 隣国の侵略。


 その報を受け、我が国はすぐ守りを固めたが、強大な軍事力に抗う力は我が国に無く、瞬く間に王城へと敵が迫っていた。


「父上達は、もう脱出しただろうか……」

「王様方には、我が父を含め精鋭が付いてます。 ……ぶっちゃけ申し上げて、(わたくし)達より、万倍安全ですわよ」


 城内に多数ある脱出用通路へと先導しながら、殿下の呟きにいつもの(・・・・)調子で返事をする。


「……こんな時でもいつも通りで、少し安心するよ」

「せっかく王様も父上も居ないのですから、堅苦しいのはパスです」


 不敬では?と思わなくもないが、「公の場でなければいい」と言質は取っている。



 それよりも――



「いたぞ!」


 向かう先に姿を見せる敵兵。


 ……こちらもダメか。


 なら――


「殿下、あちらの回廊から私の部屋へ!」


 殿下の手を引き、すぐさま自室へと向かう。


 護衛達も一人、また一人と時間稼ぎに残り、部屋に着いた時には殿下と二人きりだった。


「皆、すまない……」


 部屋の鍵を閉めた私は、壁際で脱力した殿下を尻目に、戸棚から一振の刀剣を取り出す。


 そして壁の燭台を(ひね)り、外へ繋がる通路を開いた。


「さぁ、追手が来る前に行きましょう」

「逃げた所で、もう……」



「殿下――」



 へたり込んだ殿下の腕を掴み、無理矢理立たせた私は、諭すように語りかける。



 国の象徴は城ではなく王家――だから、必ず生き抜いて、と。



 そう言って、殿下を通路内に促した直後。



 ドンドン!



 激しく扉を叩く音が室内に響いた。


 咄嗟に振り返った私の目に映ったのは、今にも破られそうな扉。



 もはや……ここまで……



 覚悟を決めた私は、一瞬だけ振り返り婚約破棄を宣言した。


「ルーナリア!? 何を――」


 驚く殿下を通路内に押し込み、すぐ入口を閉める。



 これでいい。



 彼には幸せになって欲しい。



 そのためにも――



 “婚約者を囮にした王子”には絶対にさせない!



 この瞬間から、私は殿下の婚約者ではなく――


 王家に――いえ……殿下に忠義を尽くす騎士となる。



「――王家の守護者たる侯爵家の者として、一歩も通しません!」



 月光姫と呼ばれた私が輝けたのは、太陽(殿下)のお陰だから。


 幸福な日々をくれた貴方に、私が出来る精一杯を。

 


 きっと優しい貴方は悲しむけれど。



 それでも、あなたを愛しているから。



 三日月刀(我が愛刀)が輝く限り、守り抜いてみせる!

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