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ダンジョン警備~圧迫面接編~

 オッス!おらの名前は宵闇耳男!偉大なる魔王アザギル様の王国、ライランド生まれの22歳!

 大学卒業を魔近に控えた俺は卒業後の進路に子供の頃からの夢「魔王軍」を選び、黒シャツ黒スーツに血をイメージした真っ赤なネクタイを付けて面接に向かっている所なのさ!

 荒涼たる赤い砂漠を抜け、鬱蒼と茂るデスジャングルを抜け、ついに面接会場へとたどり着いた!


パチパチパチ

「おめでとう、この会場までこれた時点で…君たちの戦闘レベルは最低合格ラインは超えている、次は心の強さを見ようか…圧迫面接を開始する!!」


ドクン

…恐ろしい、インターネットで調べた限り…この面接で落ちていったモンスター達は多い、就職に失敗するだけでなく心に傷を負い、そのまま引きこもりニートになり…勇者ではなく仲間(主に両親)に牙を剥く最低の糞雑魚モンスターになってしまったケースも多々ある。

 今の時代問題になりそうな行為であるが、堂々とはっきりと前もって「圧迫面接」を開始するといわれてしまえば…誰も訴えようもない、我々はそれを承知でここに来て…そして面接官に一礼し着席するのだ!!


「…このブタゴリラ」

「ぶひぃいいいいいいいいいいん!!」


 一名が早々に脱落した、無理もない…この世でもっとも酷い侮蔑の言葉だ。

 雑魚モンスターの代名詞であるミート族でありながらドラゴンの尾を握りつぶせるほどの攻撃力を身に着け、この会場までたどり着いた彼は…しかしメンタルまでは鍛えて居なかったようだ。

 ゴリゴリに鍛えた腕を机に叩きつけ、その下の石床にヒビを走らせつつ泣き崩れた…可哀そうに…きっとあとで請求がくる、魔王軍に慈悲など無いのだ…。


「…つぎは君だよ、ガリガリくん」

「フフッ…お手柔らかにお願いします、魔王軍万歳!」


 スケルトンの青年は侮蔑の言葉を軽く流し、さらに魔王軍万歳を返した!

 これは大学の就職支援センターで教わる面接のテクニック、万歳賛唱!どんな理不尽な事を言われてっも指示されても魔王軍への忠誠を示し続ける誠実さをアピールするテクニックだ!!


「ガリガリ君、いや…ガリガリ、お前は何故ここに来た?何の為に?何を得る為に?お前はこの地獄の軍隊に入ろうというのだ!?」

「憎き勇者を倒す為であります!魔王軍万歳!!」


 これまた就活生の愛読書「面接スキルを身に着けよう」に書かれている模範解答!

 魔王軍の面接では魔王軍を持ち上げ、勇者を落とす…これが必勝の受け答えとなると書かれていた!


「…軽い!軽いぞガリ!貴様の言葉は魚の小骨のように軽い!!」

「…ま…魔王軍万歳!?」


 面接官の赤い目が光る、気だるげに首を傾げつつ肩から生えた棘で頬を掻く…岩すらやすやすと砕くだろうムキムキの腕、その先にある禍々しい鱗に覆われた掌の上…おかれた履歴書を見ているのだ。


「小骨…貴様は北部出身だな?前線から遠いお前がなぜ勇者を恨んでいるのだ?勇者の進行はここ千年南部で抑えられて来たはずだが?」


 本で得た知識、学校でのレクチャーなど意味を成さない、現場では…戦場では…そんな薄っぺらな知識は諸刃の剣だ!今や部屋中を圧迫している面接官のダークオーラを正面から受けつつ…しかし、骨男は小動もせずに言ってのけた!!


「理由などありません!勇者はゴキブリ!勇者殺すべし!魔王軍万歳!!」

「合格!!」


 パチパチパチ


 こんなその場で合否がわかるなんて…圧迫面接の宣言といい、魔王軍の清々しさは異常だ!まだ面接待ちの人が居ると言うのに骨男は星が一つ刻まれた盾と槍を支給されて、奥の部屋へと通されいった。


「さて…次は…おい、耳男!貴様だ!」

「は…はい!魔王軍万歳!!」


 今更だが、僕は確固たる決意の元ここにいる…先ほどの骨男さんと違い、僕は勇者被害が多い南部の出身だ、そして当然…南部では勇者差別と偏見が凄まじい…そして僕はダークエルフ…勇者パーティーであったエルフ僧侶の母と当時魔王軍でバリバリだった父の子供だ!

 幼い時から受けた差別に一矢報いる為に、僕は敢えてこの道を選んだ!魔王軍に入り活躍をして…忠誠を示し、この国に本当の意味で受け入れられたい…そんな思いだ!!


「魔王軍万歳!!!!魔王軍万歳!!!」

「五月蠅い!不合格!!」


 こうして僕は魔王軍への就職を失敗し、代わりに民間企業へ就職した。

 色々な理由で魔王軍で働けなかった人や、単純に底辺が流れ流れて辿り着く職業…警備業だ。

 不法者(主に勇者)からユーザーの施設(主にダンジョン)を守る大切な仕事であるわけだが…その実態は夜の闇よりも暗く、人食い鬼の口よりも臭く汚い


「あっブタゴリの人!」

「あっ五月蠅い人!」


 奇しくも知り合いとなった二人はこれからどんな暗黒に身を投じるのか!?

 二人が就職した企業「ダンジョン警備」とはいかなるものか!?

 以下に詳細な説明を乗せ、この小説は終わる。



【ダンジョン警備】

警備業における1号警備(施設警備・機械警備)に該当する形態の会社で、ユーザーの施設に様々な防犯装置(ゴーレム、毒沼、スライム、仕掛け扉)等を設置したり、常駐モンスターによる立哨や巡回で勇者の侵入を阻止する。

 不法者から市民の平和を守るという点においては魔王軍と同じ業務と言えるが、国王が主導する正規軍と違い、あくまで特権の無い民間人の行う保安業務である為にこの業を行うには多くの制約が存在する。

 

「ダンジョン警備モンスターには魔王軍が有する特権はなく、戦闘における破壊行動の制限、使用できる装備や魔法の制限を受け…(略)」


 人間は誤解をしているようだが、モンスターがみんな凶悪な装備をして、日ごろから火を吹いたり魔法をぶっぱしているわけではない。

 低級な知能しかない野生モンスターは確かにそうだが、社会生活をいとなむ魔王国の一般モンスター達は武器の所持の禁止や、公共の場での魔法の制限を受けている。そして警備員も権限のない一般モンスターなわけであるため当然同様の制限を受けている…ただそれだけの話であるのだ。


「おたくのゴーレム、頑丈なのはいいだが…もっとこう、武器とか持たせられないのけ?」

 ユーザーから良くある問い合わせだ。

 当社のゴーレムは武器の非所持どころか、パーツの角角を研磨して不用意な破壊と傷害を避けるように設計され、そこまでしてやっと国から製造と設置の許可を得ている。


「あくまで民間ですからね、侵入者の発見、通報…そして魔王軍が到着するまでの被害の食い止めを主としております。」

「へぇ~そんなもんかぁ…思ったよりしょっぺーだな…もっと安くならねか?」

「ハハハ…」


 辛い…そんなんいうても仕方ないやん。じゃぁ魔王軍に頼めば良いじゃん!うちのゴーレムはお金かけてないから攻撃力しょぼいんじゃなくて…攻撃力削る事にお金かけてるんだから仕方ないじゃん!法が悪いじゃん!!

 当社の役割は魔王軍が来るまでの時間稼ぎ、防御に全振りするしかないのだ。


<当社設置設備>


・マイルドゴーレム…角の無い滑かなフォルムのゴーレムは勇者の剣を滑らせ時間を稼ぎます。

・マシュマロゴーレム…柔らかな素材で身を包んだゴーレムは勇者の打撃せ吸収し時間を稼ぎます。

・ラバー=ガーゴイル…侵入者を見つけると威嚇するゴム製のガーゴイルです。

・プラスチック=ガーゴイル…侵入者を見つけると威嚇するプラスチック製のガーゴイルです。

・フライングアイ…侵入者を発見します。

・ケルベロス…侵入者を発見します。従業員を襲わないよう鎖を外さないようお願いします。

・仕掛け扉A…開閉呪文を設定し運用します。失敗時に他設備が稼動するよう設定できます。

・仕掛け扉B…他

・ピリピリ毒…ポイズン民間使用法の保安警備項目に明記された特定の毒を法定内の濃度で噴霧する仕掛けを設置できます。こちらを設置する場合、施設内に解毒剤の常備が義務づけられており仕掛けの設置工事とは別に、解毒剤の設置管理の方法を説明させて頂きます。



  完


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