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お笑い保険〜ハートボインスマイル〜

「こんな状況でも入れる保険があるんですか!?」

星を隠す街灯てに照らされた紅白スーツでモヒカンの男は、奇抜な見た目に反して純朴な涙を浮かべていた。

「勿論ですよ!だって…傷ついてるんでしょう!?」

相対するのは灰色スーツの白髪の男、彼は胸ポケットから名刺を取り出すと腰をくの字に曲げて両手で差し出す。


「心の痛みに備える保険:ハートボインスマイル保険社」鳩胸白夫


これはお笑い芸人が壇上で滑った時に降りる保険の物語!



…悲しいほどに受けなかった、会社ではバカウケしたハゲ上司のモノマネも社会では一切通用しない、少し考えるまでもなく身内ネタと大衆ネタは違うというのに…俺の知能は少しどころか停止しているのかもしれない。…冷ややかな観客の目が忘れられない、いうて目があった人らはまだ優しく、スマホ見たりトイレいったり目も合わない人らが多すぎた。辛い…けど!!

「こんな時の為に保険入っててよかった!お願いしま〜す!!」

「え?おりませんよ?」

「うそ〜ん!?」

劇場の裏道、3つ隣のビル5階で芸人はずっこけすぎてバク転をした、こんな清々しく詐欺な事ある?

「…とりあえず消費者相談に」

「見事なバク転ブラボーです、まぁまぁお待ちくださいよ」

詐欺しの男が来客用の椅子をだしてくる。そして粗茶と茶菓子、俺から徴収した保険料が化けたと思えばありがたくもなんともないが…とりあえず座って豆菓子を食べる。というか豆菓子しかない。

「フフフ…いいですか?保険というのは審査がひつようなんですよ?」

「ほほぉ〜う、世間知らずと思って舐めているな!?」

「いやいやいや…例えば、そうですね。労災保険なんかも審査落ちして出ないなんてことはざらにあります。」

・業務外での怪我

・休憩中の怪我

・原因が本人の過失

・主たる原因が持病による場合

………等

「ね?保険っていうのは万能じゃないんです。」

「合法の…詐欺?」

「HAHAHAHA面白い事をいいますね、さすがわお笑い芸人様です。そして私は白い鳩…ハートボインスマイル支店長…鳩胸白夫です!」

「うるせぇ!白黒つけてやる!」

「HAHAHAそんな紅白スーツで何をおっしゃる!赤と白はあっても黒はないんじゃぁないですか?HAHAHA」

…うぜぇ!赤(流血沙汰)がお望みなのか?こちとら失う物がない無敵状態一歩手前なので暴力による終焉もやむなしだが!?

「まぁ待ってください、お客様のご不満に耳を傾け、不安に寄り添い、疑問にお答えするのが企業の努め…きっとご期待にも応えてみせます。」

信用出来ない!

粗茶を飲みながら、無敵一歩手前の紅白芸人はその一歩を守る為に耐え忍ぶ、耐えるのだ…とりあえず茶菓子は全部食べ尽くしてやる。

「…あなたの勢い、行動を見て審査の必要すら感じませんでしたが、ご納得頂くためにはやはり通常の手順を踏んだ方が良さそうですね。それでは申請書類を用意しますので記入お願いします。それと…」

茶菓子の横に保険における事故状況の報告書とボールペンを置き、何やら三脚とカメラを用意しはじめた。

「保険審査ように事故ネタの披露をお願いします。」

……

…………はぁあああああああああ!?

顔が白くなって赤くなる、考えられる最悪な状況でのネタ披露!?なにこれ!?傷ついた心を癒すための保険で傷をえぐりにくると申すか!?

「HAHAHAHA!いいですね〜顔まで赤白白赤と変える芸をお持ちとは!それではそれでは…3,2,1,Q」



…結論から言おう。審査落ちして保険は一切降りなかった。そう…一切だ。やはりあの会社は詐欺会社であることは火を見るより明らかであった…だが…


「よう、新人…落ち込んでるな」

「あっ紅白帽先輩!おはようございます!」

拍手万雷の舞台を終え、打ち上げと打ち合わせをしてから外に出ると一晩中うなだれていただろう後輩芸人が非常階段に座り込んでいた。

登る朝日が街を照らし始める中、非常階段と後輩は冷たい日陰でそこだけがまだ夜のようだ。

「フッ…懐かしいな、昔の俺を見ているようだ」

「えっ?」

…俺も舞台で滑っては落ち込み、滑っては落ち込み、何度芸人をやめようと思ったかわからない…だけど、やめずに続けられた。

「お前にいい話がある」

何度も滑り、傷ついても、支えてくれる保険があった。

「ハートボインっていう胡散臭い保険があるんだけどな」

何度申請しても一銭も落とさない詐欺保険だ、なけなしの生活費をけづり払った保険料は帰らない

「めっちゃいいぞ」

……

…………

「HAHAHAHAHA!めっちゃ面白いじゃないですか!おれは事故どころか名作ですよ!観客が悪いですね!ちょっと時代の先行き過ぎなんじゃないですか!?保険降りないです」

「いや〜古典の良さは若者には分からないのかもしれませんね、インテリジェンスが過ぎるっていか…でもここまで芸術点が高いと保険を出すわけにはいかないですね」

「くぁああヤラれた!ドン引きするほどのシモネタ大洪水!挑戦ですね!うわぁ放送倫理に対する挑戦!え?批判されて傷ついてる?何を言ってるんですか?100万のアンチより1人のファンでしょ?え?私ですが?保険はおりません」

………

……

保険とは何か

金銭的な損害に備える保険ならば、金銭によって救済をくれるものが保険だろう

心の痛みの保険ならば、金銭が降りないのもまた道理である。…はたして、あの保険屋は本当に詐欺ではなかったのかもしれない。金銭では埋まらなかった心の傷を、拍手と言葉と笑顔の称賛で支えてくれた。


「保険には入ったほうが良い、俺は何度も救われたからな」


…こうしてハートボインスマイルはそこそこの顧客数を確保し、案外長寿の保険会社となったという。

一番びびったのは社長の鳩胸白夫、元詐欺師の男であったという。





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