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土魔法使い蓮牙!

忘年会の帰り道に土魔法を考えてたらなんかできました。

「はぁ〜!?習得魔法が土魔法だけ?」

冒険者ギルドにてパーティーメンバーを募集していたハゲマッチョが馬鹿にしたように笑う⋯我慢だ、土魔法使いは地味で無能な不人気職業、これくらいでキレていたら身体が持たない。

「はい、募集要項にあった遠距離攻撃も可能で、B級モンスターのコウモリネズミも討伐した経験があります」

「⋯俺だって石投げれるぜ?」

「⋯石ではなく、魔ブロックを投げました。」

っどっと笑いが起きる冒険者ギルド、土魔法使いの扱いはこんなもんだ⋯うん、慣れてる、慣れてるからキレてない。キレてない俺。俺の心は石のように静かだ。うん。

「んじゃぁ⋯不採用なんだけど⋯どうするか、いちよ決まりだから裏でテストするか?」

「ありがとう御座います!」

土魔法使いの蓮牙!

⋯そして俺、土魔法使い蓮牙はD級冒険者パーティー「ストーンヘッド」に加わる事が出来たのだ!


◇  ◆  ◇  ◆


「リーダー本気かよ、土魔法使いだなんて⋯そんなに応募者来なかったの?」

冒険者ギルドに併設された食事何処でストーンヘッドの面々が水ワインを飲みながら呆れている。上記の不満をこぼしたのは鉄拳を装備した黒髪の美少女ファイター=パンチランさんというらしい。

「そうたせリーダー!火魔法使い採用すれは面倒な火起こししなくていいっていってたしゃん!」

こちらは歯抜けの金髪剣士=ハキシリさん

「まぁまぁそういうな、俺がテストしたんだ。実力は本物だよ」

最後にこちらが先程の面接官、ストーンヘッドのリーダーにして薬草取りの名人=アナドルだ。

「はじめてまして、上級土魔法使いの蓮牙です!」

「「上級!?」」

驚くパンチランとハギシリ、無理もない上級魔法使いともなればA級B級に所属するレベルなのだ、土魔法は無能なので初級は門前払い、中級で他の特技合わせてギリ採用という悲しき扱い、そして問題の上級の実力は!?

「ねぇ、土魔法の上級って何が出来るの?」

不人気職業No.1の土魔法⋯そもそも極める人はいないのだ、パンチランの疑問はもっともである。蓮牙は肩をすくめてテーブルの上に手を置いた。

【魔ストーン】

机の上に石が現れる、これぞ石魔法の基礎の基礎!剣士や村人が手遊び感覚で覚えるだけのなんの約にも立たない石を生成する魔法だ!

「へぇ〜地面のないところで出来るんだ、それだけ?」

半分感心しながら実用性が思いつかないアピールに微妙な顔をするパンチラン、黒髪美少女の呆れ顔にやや興奮を覚えつつ蓮牙は次の魔法を唱える。

【魔サラサラ】

石が砂となり崩れた。渾身のドヤ顔

「これが土魔法の極みですよ」

「「「⋯⋯⋯」」」

かくして土魔法使い蓮牙は正式にパーティーに加わったのだ!


◆  ◇  ◆  ◇


 街から出て街道を歩く事3時間、街道沿いの古びた避難小屋を目印に森に入り昼休憩を挟みながら奥地へと向かう。

「土魔法便利だな、いつもよりサクサク歩けるぞ」

「ふふふ、お役に立ててうれしいですよ」

【魔ロード】

靴に砂や小石を入れながら、泥やデコボコに足を取られながら道なき道をゆく冒険者の前にそこそこ踏みしめられた道を生成するこの魔法はいわゆる「中級」に位置づけられる便利魔法だ、上級はもとより中級すら見かけない土魔法の意外な利便性にストーンヘッドの面々は感心しきりだ。

「はれも良かったよな、魔チェアとか魔コンロとか」

ハキシリも絶賛である、野外の休憩には座るにしても焚き火をするにしても土を掘ったり石を並べたりが必要である、本来モンスターと戦う為の剣をスコップ代わりに使う事に抵抗があったハキシリは新入りの魔法に感心した。なんてったって土魔法、座りやすい程良い高さの椅子やら焚き火を囲むコの字形のブロック等次々にポンポンと出してくれる。

しまいには「日陰が欲しいですね」と休憩場に4本柱と屋根の生成までやってのけた。

「すげー技術だが、何より魔力量どうなってんだ?道作りから何からずっと魔法使ってないか?」

「⋯ふふ、魔力切れを起こすのは中級までですよ、土魔法の真髄は大地との一体化⋯大地の力を借りて奇跡を起こしていますからね」

「っぱ、上級ってすげーんだな」

こうして一行は人里離れた「狩場」に到着した、D級冒険者パーティー「ストーンヘッド」の今日の獲物は飛び回る薬草、アロエホッパーだ!

トゲトゲのついた緑の身体に逞しい六本の根足がついた子犬程のアロエホッパーの体液は火傷擦り傷の良い薬になる。

「一匹単価300カリー!20匹は行くぞ!」

「「「うぉぉぉ!」」」

⋯慣れた様子で回り込み叫びながら剣を叩き込むハキシリ!ダメージを受けたアロエホッパーが吹き飛ぶと同時に逃げ飛びはじめたアロエホッパー達!しかしそこには黒髪の美少女が先回り⋯

「逃さないわよ!」

【鉄拳3本突き!】

空中でバランスを崩された3体が地面に堕ちる!しかし⋯鉄拳装備と言えど少女の軽い体重ではモンスターを仕留め切ることは出来ない!

「でかした!」

【ソルトスプレー】

薬草取りの名人アナドルの剛腕が霧吹きのトリガーをひく!植物モンスターの根足はナメクジの如く繊細でアナドル特製の塩と薬液の混合液を浴びるとピクピクふにゃふにゃとのたうって、アロエホッパーから機動力を奪い去った。

「ハキシリの仕留めたのは傷ものだから値が下がるな、皮を剥いて身だけ持ち帰れば売れるには売れるが⋯」

「あっ⋯じゃあ自分やっと来ますよ、壺作って入れときますね」

「助かる」

⋯⋯

⋯⋯⋯こうして、土魔法使い蓮牙のはじめてのクエストは終わった。

持ち運びの関係で通常20匹が限界だったアロエホッパー仮は魔ロードと魔台車の合わせ技で倍の40匹収穫が可能になり、ストーンヘッドはD級からC級にランクアップすることが出来た!そして⋯時は流れて⋯


◇  ◆  ◇  ◆


⋯パチン!

指パッチンで敵の頭上に堕ちる巨岩


⋯パチン!

指パッチンで生成された3重の壁は、断熱効果で龍の息吹すら防ぎきる


⋯パチン!

敵にまとわりつく岩の枷


⋯パチン!

おのが石剣をインパクトの寸前で巨大化させて叩ききる!


⋯パチン

しかし、土魔法の真髄とは!

【魔サラサラ】

“万象全て灰燼と帰せ!”


⋯その男、弱小と侮られし土魔法の使い手

上級を超え超級に至りしレジェンド!




【土魔法】

初級は地面の上に小石(種石)を置き、手のひらを重ねて周囲の砂や土で小石を育てるイメージを続ける。1日かけて頭大に育てる事が出来たらスピードの訓練、1分で出来るようになったら次のステージ、やや手を浮かせて同じ事をする、こちらはだんだん地面と手の距離を離して立ったまま、種石無しで石の生成が出来たら【魔ストーン】の習得が認められる。投げても良し、殴っても良し(習得平均時間3年)


次はレンガ形への生成を訓練する

10個連続で同型が作れたら次は重さの均一化、最後はハンマーで叩き硬度をクリアするように頑張る。形、重量、硬度の合格で【魔ストーン】の習得が認められる。投げても良し、殴っても良し(習得平均2年)

最後は厚さ5cm、幅と高さ1mの壁生成、形と重さと硬度の合格が第一段階で次は「1週間風雨の中でも倒れない」ように自分で構造を考えて生成する、出来たら【魔ウォール】の習得が認められる。殴ってくるのを防げる。(習得1年)

⋯魔ストーン、魔ブロック、魔ウォールの習得を持って【初級土魔法使い】の資格を得る、なお就職では使えない(習得平均6年)


⋯⋯

⋯⋯⋯⋯悲しい程に不遇な魔法、それが土魔法なのです。しかも【魔ストーン】は手遊び感覚で村人や戦士職が触りは覚えてたりする為、ペン回しとかと同じ一芸扱いされているのです。

悲しい、悲しいぜ土魔法!

そんな土魔法を極めし者は鋼のような心を得るとか得ないとか

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