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卵の世界と神様パスタ
卵の中に世界があった、空っぽの世界だ、世界には内と外が有るだけだった。
卵の外から歌が聞こえた。
美しい音、楽しい音、悲しい音、おぞましい音
難しい言葉、優しい言葉、酷い言葉、叫び、鳴き声、笑い声
卵の中で音は重なり空が生まれた
卵の中で言葉は積り大地が生まれた
そんな卵はコロコロ転がる、温かい日向や冷たい河を通り抜け、春夏秋冬転がり続けた。
地獄のような暑さの中でも、涼しい風音で耐え抜いた。
悪夢の様な凍える夜も、温かい言葉で耐え忍んだ。
コロコロ転がる卵の空に、やがて好きと嫌いが生まれて、それは天使と悪魔になった。
コロコロ転がる卵の大地に、やがて双葉が目を出して地底から言葉を吸い上げて、命に換えて種を撒いた
いつの頃からか、卵の中から歌を聞いていた神様はいつもメソメソ泣いていた。嬉しい時も悲しい時も、腹立つ時も昂ぶる時もいつもメソメソ泣いていた。
涙で出来た海の上、浮かぶ島々で作られたのは、小麦と卵と塩とトマト、タマネギ、ベーコン、キノコとオリーブ
さあさあパスタを作りましょう
美味しいパスタを作りましょう