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キョンシーメイドの天国と地獄

パリーン

「はい、刑期1年追加…」

「………ッ」


 ここは地獄の鬼屋敷、あまり知られていない事だが閻魔庁で働くエリートな鬼たち、彼らの家には人間の奴隷が飼われている。血の池や針山などのガチ地獄へ投獄されるほどではない軽犯罪、そんな罪を犯した罪人はゾンビの肉体に魂を入れられ…罪に応じた期間超低賃金でこき使われるという寸法だ。


「おぃおぃキョンシー娘、体固くなって来たんじゃねーの?ぐへへ…おいらがメンテナンスしてやろうか?」

「…け…結構です。」

パリーン


 さて、これは生前焼肉を食べ過ぎた罪でキョンシーとなった哀れな娘、料理メイドのヘルシーちゃんのお話である。


 ガチチ…ギチチ…

「………ッ…………ック………」

 ヘルシーちゃんは黒ショートヘアでボインな女の子だが、表情は無を決め込んでいる…メイド服をぴっちりと着こなし、体の調子がいい時は一日5回、135人分のご飯をたった一人で作り上げるスゴイ子なのだ…ん?キョンシーに体の調子のいい悪いもあるかって?確かにそうさ!キョンシーは死んでいるわけだから病気にならない!ご飯も睡眠もいらない疲れ知らずの存在だ…しかし、みなさんご存じだろう「死後硬直」という物がある。映画に出てくるキョンシーは腕をピーンとしているだろう?あれだよ、アレ!

 あんなカチコチの体ではどんな仕事も出来やしない、キョンシーは食事も睡眠も不要だが定期的な「マッサージ」が必要なのだ!


 ガチチ…ギチチ…

「///////ッ…///ック……////フゥ!…フゥ!!」


 ヘルシーちゃんは一日の業務を終えると、階段に苦労しながら地下倉庫横の自室に帰る。そして一日の労働で凝り固まった体を丹念に丹念にセルフマッサージを行うのだ。


 モワァ

 発汗をしないキョンシーの体は、加湿しなかれば干からびる一方…これも硬化の原因となる。

 故にヘルシーちゃんは薬を溶かした液体を加湿器にセットし、部屋いっぱいに怪しいピンクの気体を充満させ…その中で自身の体中のツボを押し、擦り、引っ張り、喘ぐ。

 高湿度で生まれた水滴が、彼女の全身を見た目汗だくに変えた所で…保湿の作業へと移行する…そう、オイルだ!


「////ッハァ!////ンッックゥ!」

 地獄産月光蛙のガマ油は臭い、その匂いをごまかす為に様々なハーブを溶かした白濁色の薬液オイルを両手で掬い、豊満な胸の上へと落とす。そして谷間からねっとりと垂れ落ちる液に手を伸ばし、手首から肘まで手全体をつかって体に塗り付け馴染ませる、全身をくまなくオイルでコーティングするため細い指で細かい所にもゆっくりねちねちと擦り込む時には彼女の体は大きく撥ねる。…トロン、業務中は無表情だった顔がトロケる。焦点が定まらなくなった目に開きっぱなしの口…そうだ、唾液も出ないわけだから口内の保湿もしなければならない…、震える片手をオイル壺に伸ばし指を浸す。そしてそれをしゃぶるように唇から舌裏まで白濁のオイルまみれにする。呼吸は必要ない…しかし、主人と会話する為に普段から動かしている横隔膜と肺の動きは良好で、まるでマラソンの後のように細かく息が漏れている。口内を濡らす手とは逆の手で、執拗に繰り返しマッサージを続けているので敏感な場所に触れた時などは思わず呼吸が漏れ、ごプリと涎のようにオイルが口から滴ったりする。


 ハァ ハァ ハァ ハァ …ちゅんちゅんちゅん

 地獄雀の囀りが聞こえる。気付けば朝だ…ヘルシーちゃんは加湿器を止め、塗りすぎたオイルをそっと拭き取り…ベビーパウダーで全身をポンポンとして下着を履く、ブラを付ける、そしてメイド服を身に着けて…さっそうと職場へ向かうのだ。


 シュババババババババババ!!

 昨日のドジっ子ぷりが嘘のように、瞬きの間に数百の皿を洗い拭き上げ…マンドラゴラの首やケルベロスの首を刎ねては鍋にぶち込む勇姿!


「先輩…カッコいいです///」

 新人キョンシーメイドの視線にも気づかず、彼女はしなやかな身体操作であっという間に135人前の朝食を仕上げた!!


「ぐふふ…ヘルシーちゃん調子いいじゃん?昨晩はお楽しみだったの?ぐふふ」

「…………///////ッ」


 刑期が無事に終わるまで、頑張れ負けるなヘルシーちゃん!!

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