賢人タイムズ
異世界の海に浮かぶアープール大陸、その中央にある異世界人国家オカムランドはその名の通り異世界ヤマト王国から来た大賢者岡村が作った国である。
岡村はインスタントラーメンのみを持ち転移し、異世界料理ラーメンで財を成し自身の王国まで作ってしまった異世界ドリームの体現者なのである。
…さて、そんな異世界人国家オカムランドの中央、シャンゼリゼ通り天安門広場にて一人の男がスパイスリーフ(タバコ)と宵闇の魔茶を楽しんでいた。異世界において違法薬物指定を受けているこのふたつが楽しめるのがオカムランドの良さと言える。
「ん~!っぷはぁ~!…っぱ煙はうめーわ!次回はこいつの記事にするかな」
国内向けの記事としてはパンチが弱いが、国外向けの記事としてはなかなかに良い題材と思う、男は異世界初の出版社スッパ・ダーカーの記者なのである。
まずは実験的に国内向けの雑誌などを作ってきたが、近隣国の観光客や大使館関係者、冒険者達からの評判も良く国外向け雑誌「賢人タイムズ」の敢行が決定したのだ。これは出世の大チャンスと同僚たちは国外向けのネタを我先にと求めあちらこちらを駆けずっている。愚かな事だ。
「…異世界に来てまで出世レースなんざ、大和国人の社畜魂はスゲーわほんと。」
男はタバコの煙が青空に消えるのを見届けて、温めていたベンチを人に譲って歩き始める。そろそろランチタイムが終わって行きつけの店が空くころである。
「はぁ~、異世界に来てもカレーはうめぇーわ!」
ラーメンに続く、再現された異世界料理カレーである。同僚たちの事を馬鹿にしている男であったが、タバコにコーヒー…カレーがこちらにあって良かったと思う。うん…偉大な先人たちに感謝せねばだ。
「ん~…そうだ、タバコやコーヒーだとイメージが悪いな…一発目の記事はカレーあたりが良いんじゃないか?」
…3か月後、男は同僚たちを押しのけて賢人タイムズの編集室長に抜擢された!
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「編集長!スゴイです!電話がなりっぱなしですよ!」
「ハハハハハ!やはり今回の記事も反応がいいな!」
賢人タイムズ編集室、そこに用意された3台の電話機はなかなか鳴りやむ事が無い…あぁ、心地よい!称賛とクレームの嵐である!!
賢人タイムズ!期待されていた異世界知識や技術は放り投げて…ひたすらに下らないゴシップを振りまく大衆人気の全国雑誌!