笛吹男とフランケン
笛吹き男が現れて子供がみーんな消え去った
どうして子供はついてった?
どうして男は笛吹いた?
謎が謎を呼ぶ怪事件さ
見つかったのは男の足跡
涙涙の物語さ
見つかったのは子供らの躯
切ない愛の物語さ
暴かれたのは娘の墓場
小説の様には語れないので
真実をあるがまま書くとしよう
事の始まりは切なく悲しい別れだった。
「僕は君と出会う為に生まれてきたんだ」
彼はそう言ってプロポーズ
言われた彼女は顔を赤らめ
「私も同じ」
とキスをした。
所が真実は違ったのだ、神様が居るとしたらの話だが
運命が、決まっているならの話だが
二人は分れる為に生まれたのだ、おっと小説みたいになっちまうな。
落ち着こう…俺はあるがままの事件を記す。
ここまで読んで解るだろうが、二人に別れが訪れた。
娘は若くして死んだのだ、原因不明の病だった。
頭痛や吐き気、湿疹みたいな解りやすい症状なんてなく、ある日を境に衰弱し、枯葉のように朽ちて死んだ。
さて、残された男は堪らない…半身を捥がれたように痛ましく、彼もどんどんと衰弱していく…生きる気力がなかったのだ。生きる意味などなかったのだ。何故なら彼の生はそう「彼女と出会う為の生」だったから
「彼女とは天国で出会えるさ、そのためには必死に生きなければいけないよ」
友人が聖書を持ってきた。男が何も答えないので、友人は丁寧にゆっくりと聖書を読み上げた。
「自ら命を絶った者は地獄に落ちる」
なんとも残酷な神様だ、愛する者と出会う為には、愛を失った悲しみを越えてゆかなければならないらしい…
「神は絶対、この世の全ては神が作った」
ならばどうして病を作った?あぁ、どうして彼女は死んだのか
通い続ける友人の努力も虚しく、男は神を呪い始めた、そしてそのまま弱り果てた。
そんな時、悪魔が現れたのだ。
「恋人を蘇られせる方法を教えよう」
ここからが悍ましい、事件となる。
まず第一に、男が犯した罪は墓荒らしだ。
彼は恋人の亡骸を掘り出した、そうして骨で笛を作った。
「人の魂は死ぬと大きな光に包まれ溶かされる、そうして他の様々な魂と混ざりあい、小さく千切られて新しい魂として人になる」
悪魔は男に知識を与えた。
「だから、死者を蘇らせるのは難しい。その魂はバラバラだ、一部だけなら可能だが、記憶か人格か長所か短所か、多くは寿命も欠けてしまう」
男は笛に唇を当てる、あの日のキスと言葉を胸に
“僕は君と出会う為に生まれてきたんだ”
「笛を吹いて集めるといい、バラバラになった彼女の魂は…きっと幼く生まれている。」
それは奇妙な音だった、不快に背筋の凍る音
それは悍ましい音だった、死者のすすり泣く声の様に
しかし
あぁしかし
悲しみの分だけ、その愛は深く
冷たさの分だけ、暖かく
恐ろしさの分だけ、楽し気に
悍ましさの分だけ、愛おしく
子供達の耳には聞こえたようだ。
いや違う、子供達の中の彼女に届いた。
笛吹き男が現れて子供がみーんな消え去った
どうして子供はついてった?
どうして男は笛吹いた?
謎が謎を呼ぶ怪事件さ
見つかったのは男の足跡
涙涙の物語さ
見つかったのは子供らの躯
切ない愛の物語さ
暴かれたのは娘の墓場
集められた魂にて、蘇った娘はこう言った。
「私はあなたに会う為生まれて来たの」
男は涙で頬を濡らし、僕も同じだとキスをした。
拍手をするのは笑顔の悪魔
娘一人を蘇らせて、子供を何百人殺せたか
地獄へ続く嘆きのパレード
悪魔にとっては凱旋だ
さてさてと
「さぁさ、あんたも地獄行きだよ?」
残った娘はフランケン、男に会うために何をする?