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ダービー馬のひとりごと

 これは……モブダービー馬の独り言とでも思ってくれればいい。

 いつの間にか年号が令和になっている。私が命を落としてから何年たったのだろう。

 時代と共に競馬場の様子もどんどん変わっていくものだから、変わらずに残っているモノを見ると親近感が湧いてしまう。


 例えばグランパ牧場だ。これは私が死んで暫くしてから出来た牧場だ。今ではあそこも古参牧場のひとつになっているのだから時代を感じる。

 あそこにはとても心配なダービー馬がいてな。勢いに乗ってダービー馬になったところまでは良かったのだが、その後の戦績は鳴かず飛ばず。種馬になってからも子供は凡走の連続と、酷いありさまだった。


 去年のデビューしたサイレンスアロー君だったか。

 彼はその子孫らしいが、隔世遺伝したのかと言いたくなるくらいよく似ている。アイツも最初はとても優秀な競走馬だった。何だか同じような成績になりそうで心配だ。


 まあ、私も他所のことは言えんか。ダービーを制した直後に死んでしまった身だからな。馬主さんも関係者さんも、私を生き延びさせようと稼いだ賞金の全てを注ぎ込む形で、薬や治療を施してくれたが、私はその努力に応えることなく命を落としてしまった。

 最後まで生きたという点では、アイツの方がよっぽど馬主孝行者だ。



 でもいまだに思うことがある。

 もし、あそこで病気にならなければ。もし、あの病気に打ち勝つことができてターフに立ったなら、私はどこまで戦えたのだろう? 海外で……通用したのだろうか!?


 サイレンスアロー君には夢があると聞いた。それも競走馬の本場であるアメリカに行くという私から見ればまぶしすぎる夢だ。

 はるか昔に死んだ身で、こういうことをするのも難だが……勝負してみてもいいだろうか?


 ただ、今の私にはあいにく体がない。

 だから、君の牧場の同級生の体を貸してもらおうと思う。チャイロジャイロ君だったか。彼の体は現役時代の私の体とかなり近い。

 今から仕込めば、理想的な競走馬の体つきになるはずだ。私が稼いだ賞金はグランパ牧場の経営に役立ててほしいと思う。

 サイレンスアロー君とも、いいレースをしたいものだ!

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