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牧場危機vs天才仔馬(後編)

 最初のうち、ツバメお姉さんたちは小生の考えに驚いていたが、粘り強く説得することでどうにか意図を理解して勝負に出てくれた。

「商品名は生き残ったリンゴ。売る相手は就職活動をする人」

「なるほどね。お手並み拝見ね」

 ペルルが見守る中、百貨店や神社での売り出しが始まった。


 ツバメお姉さんのスマートフォンが鳴ったのは、夕方ごろになったときだった。

「……うん、うん、わかった」

 電話を切ると、彼女はにっこりと笑って言った。

「シュババ君、リンゴやナシ……売れたよ」

 その言葉を聞いて小生はホッと胸をなでおろした。予想に反して売れないこともあるため、こういう商売ごとを下駄をはくまでわからないものだ。

「よかった……就職活動をする人たちに認められたんだね」

 そう答えると、ツバメはニヤッと笑った。


「何と、買ってくれた人は……学生さんでした」

「……え? それって大学生??」

「もちろん大学生もいるみたいだけど、高校生の間で話題になってるみたいだよ」


 予想からは少し外れた結果となったけれど、これでグランパ牧場も薄皮一枚で食いつなぐことができるはずだ。

「あとは、姉さんが頑張ってくれるのを祈るだけだね」

 そう言って小生は笑ったが、ペルルは不思議そうにこちらを眺めていた。

「……どうしたんだい?」

「教えて欲しいんだけど……もし、売れなかったらどうするつもりだったの?」


 小生は頷きながら答えた。

「その時は、スッパリとリンゴのことは諦めて、緑のベッドで寝るよ」

 ペルルは怪訝な表情をした。

「それって泣き寝入り?」

「いや、正確にはスマートフォン越しの狸寝入り」

 彼女は表情を変えたが、小生は話を続けた。

「枕の上でスヤスヤと寝れば、枕を売りたい会社からCMの出演依頼が来るかもしれない」

 そう答えると、ペルルは疑うように小生を眺めた。


「それも相手にされなかったら?」

「枕をツバメお姉さんに返して、そうだねえ……森に生えている葉っぱでも売ってみるかな」

「葉っぱ!?」

 ペルルがキョトンとしたので、小生は説明することにした。

「葉っぱは料理の飾りとして使うことがあるから、色合いの見事なものをツバメお姉さんに摘み取ってもらって、料理に飾り付けてプロの料理人に見てもらう」

「そんなことできるの?」

「追い詰められたらやってみる。できなければ別の手を考えるという話さ」


 ペルルは、遠慮がちに言った。

「たびたびこういう質問をして悪いけど、それも……ダメだったら?」

「こらこらペルル……やる前からダメダメ言ってたらダメだよ」

 そう叱ったらペルルは委縮したので、小生は言った。

「もしそれも空振りだったら……そうだねえ。もう手も思い浮かばないし、小生が競輪やボートレースを予想する動画でも上げるかな」

「け、競輪……ボートレース!?」

「特に最近は、たっぷりとお小遣いを稼がせてもらっているしね」


 その話をすると、ツバメが振り返った。

「この前、税務署から凄い額の税金が来たけど……あれってシュババ君の仕業だったんだね!?」

「あ、そうか……派手に儲けると、競輪とかボートレースでも税金がかかるんだね」

「かかるよ。私のお小遣いを返しなさい!」

「僕用の口座から抜いておいて!」

 ペルルは、何なのこのウマは……と言いたそうな表情をしていた。

 まあ、とにかく……これで露払いは終わった。後は、ペルルとの決戦の舞台を少しずつ組み立てていくだけだ。

【作者からの挨拶】

 ここまで読んでいただき、まことにありがとうございます。そして、ブックマークや評価をして頂いたおかげで普段よりも執筆が捗っています。

 ここで前半部が終了し、いよいよ次回からサイレンスアローの新馬戦が始まります。


 同年代のライバルとの出会い。障壁となる重賞戦。屈辱的な敗戦。好敵手エレオノールペルルとの死闘。そして、最大の試練となる東京優駿戦を予定しています。明日以降も、こうご期待ください!


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