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サイレンスアロー、真丹木にケンカを売る

 訓練牧場のスタッフたちは、真っ青な顔をしていた。

 原因は小生が、2歳馬たちに余計なことを教えたせいだろう。

「ヒヒーン!」

「お前、いつの間に牛歩戦術なんて覚えたんだ!」

「ブルブルブル……」

「君のウマはまだいいだろ この仔なんてバックしてるんだよー!」

「…………」

「動いて、前に進んでってば!」

 仕事をしたくないからと暴れるだけでは芸がない。あえてノロノロと仕事をしたり、そもそも動かなかったり、命令と反対の行動をするのもストライキの手段である。


「シュババ君、アンタの入れ知恵でしょ」

 柿崎ツバメお姉さんはグランパ牧場の牧場主だけあり、すぐに誰が犯人か理解したようだ。

 とはいっても、今回は証拠があるわけでもないので、小生はあえてセコイ政治家のマネをすることにした。

「記憶にございません」

「アンタは一体どこで、そういうしょうもないことばかりを覚えてくるの!?」


 姉のチャチャカグヤは困り顔で言った。

「ツバメお姉さん。このまま訓練牧場にサイレンスアローを置いておけば、スタッフさんたちに迷惑です」

「うん。真丹木さんに相談してみるしかないかもしれないね」



 柿崎ツバメはスマートフォンを取ると、真丹木調教師へと電話をはじめた。

「はい、真丹木です」

「調教師。実は……シュババ君を訓練牧場に仮入学させたら、他の先輩馬たちに悪いことばかり教えるので困っているんです」

 電話越しに真丹木調教師の低い声が聞こえてきた。

【ほほう……それは由々しき事態ですね。わかりました……悪い仔はうちでも引き取らないと本人に言ってやってください】

 ツバメがその通りに伝えてきたら、小生のイタズラ心に火が付いた。

「なんだ、美浦最恐も噂に過ぎないのか~ と伝えて」

【聞こえてるよ。サイレンスアロー君はどうやら、うちの恐ろしさを理解してないようだね】

「小生はね。お父さんよりも怖いものはないと思っているんだ」

【ほほう……あの優しいドドドがねぇ……】


 真丹木はさらに低い声で言った。

【そこまで言うのならいいだろう。うちの厩舎においで……3日持てば褒めてあげよう】

「そっちこそ、僕から逃げ出さなければ一流の調教師と認めてあげるよ」


 そのやり取りを見ていて不安に思ったのか、姉チャチャカグヤが近づいて来た。

「牧場長。私も真丹木厩舎にお邪魔しても構わないでしょうか?」

 柿崎ツバメは目を丸々と開いた。

「え……? 私は構わないけど……真丹木厩舎は厳しいんだよ!」

「真丹木さんは、父上の担当だった人です……悪い人ではありません。それに……」

 そこまで言うと、姉さんはしっかりと僕を見た。


「姉としてサイレンスアローを見守らないと……!」

 こうして、小生と姉さんは茨城県の美浦にあるグランパ牧場の支部へと向かうことになった。さて、真丹木調教師がどのような人物か、たっぷりと確かめさせてもらうとしよう。

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