第8話 〜ミラー〜
「こんこん、ごめんくだ〜い」
「はい」
ガチャリと扉が開く。憔悴しきった男が現れるが、男は誰も見当たらないと視線を落とす。そこには端麗な少女が、ゴスロリの姿で立ち尽くし、袋を背負っていた。
「今日からここの秘書を務めます、ミラー・グランデです」
ニコリと笑う少女を男に、男は頬を釣り糸に引っ張られているように上げて、少女を押し倒して、袋を奪う。
きたきたきたきたと大声で叫び散らかし、家の中へ。思い出深い、リビングの机の上に袋を置いて、1つ1つ首を持ち上げる。
これは俺達を襲った屈強な男、今でも覚えている。ここの頬の傷を。本物だ、夢にまでみた復讐が遂にかなったと、もう1人、醜い脂肪の塊のような男を確認する。こいつが情報屋の館で見た、今回の元凶、こいつのせいでとと、机の上に乱雑にされていたペンをとって、目をくり抜く。
後1人、後1人は袋を自分の顔を入れるぐらいにめり込ませるがない。
「どこだどこだどこだ! もう1つはッ!?」
「すみません。そのことなんですけど、取り消しということで」
廊下から土足のままは侵入してきた少女は、男の背後から可愛らし気に体を動かす。
「……あ?」
「仮借して頂いてもいいですか?」
「あり……えない」
男はペンを握りしめ、怒気を滲ませながら、男は絶叫する。
「やれぇっ! 早く、持ってこい! そうしないと、お前を今ッ! 殺してやるッッ!!」
「えー、それは困っちゃいます。その前に私の言い分を聞いて貰ってもいいですか?」
「戯言を言うな!! 早く……早く持ってこないとぉぉぉおおおおおお!」
男はペンを握りしめ、怒りに任せてミラーに突進する。ミラーは嘆息を吐き、瞼を落とす。また期待した私が馬鹿だった。怒りに任せて、こんな行動をする人はどうせ、また人を殺そうとする。
そんな危険分子を蔓延らせる訳にはいかない。ミラーは懐から蛙の仮面を取りだし、顔へはめ込む。
「さようなら」
ゼイウスには絶世の情報屋が居る。その情報屋には、様々な憶測が飛び交っている。関わったら殺される、情報は正しいが死人が出る。
「次の方、入れ」
それは諸刃の剣と呼ばれる。情報屋もまた、こちらの情報を欲している。彼らが悪人がどうかを。
もし、彼女の尺度に合わなかった、あなたは終わりでしょう。
「本日はどんなに情報を?」
【平和の象徴】の戦闘員兼諜報員。彼女は世界を知り尽くしている。