第5話 〜芳しい情報屋〜
【平和の象徴】 ギルドメンバー File.2
ミラー・グランド
「は〜」
「お? ミラーちゃん、空なんて見てどうしたんだ?」
「うーん、恋ってやつかな」
「こ、恋!? おいおい、ミラーちゃんにも遂に春が来たのか!?」
迷宮都市 ゼイウス。今日も今日とて、平和な日。ある所は花屋で恋を実らせている、花娘や、
「お父さん見てー! お父さんの似顔絵描いてみたー!」
「あははは、ミラーの絵は上手だが。……お父さんはまだフサフサだよ」
ある家庭はのんびりと休日を過ごし、
「デュフフ。ミラーいいではないか、いいではないか」
「だーめ。もうちょっとお金がないと」
ある遊楽では娼婦と金持ちを男が寝そべをする。ゼイウスには1000人弱のミラーという名前の少女や女性がいる。総人口20万人のゼイウスではちっぽけかもしれないが、その裏には本当のミラーがいる。
「どの情報が欲しいの?」
「……この3人の男がどこにいるか……教えて欲しい」
「300万ゼイウス……ってとこかしら」
「……し、知ってるのか!? こいつらを!?」
「知ってるわよ。3人とも何をしているか、どこに住んでいるのか、どんな人と暮らしているか。全部」
ゼイウスの闇市。ある建物、その中の地下へ通ずる階段を下りると、そこは市場となっている。ある所では猛毒が、ある所では麻薬が、ある所では情報が蠢いている。
その闇市でも一際人気を博している、情報屋がいる。情報館【ヒア二ティ】。認識阻害がされている薄い布切れ越しでも分かる、ボッキュボンの体格。紫の衣装、胸が強調され、リアンのガサツな色気ではない。大人の色気を醸し出す。部屋は紫の光が怪しげに光り、6畳ほどの部屋の天井や壁には目を疑うような絵が施されている。
「教えて欲しい。300万ゼイウスならここにある……頼む。頼む」
懇願する頭をボリボリと掻く、茶髪短髪の男性。目は虚ろで、貧乏揺すりが激しい。服装は質素であるが、床に置いてある紙袋から大金がちらりと伺える。
「……いや。やっぱり気が変わった。お前の情報を対価に情報を教えてやる」
「お……れの? いいぞ、なんでもいい。あいつら3人の情報を教えてくれるなら俺は何でもくれてやる」
男はくしゃくしゃに笑いながら、ミラーに今までにあったことを話す。祖父が冒険者で大成されていたが、モンスターの呪いによって、産まれてくる子供が病弱な家庭になった。彼も病弱だが、祖父が冒険者時代に稼いだお金を使って、高度な回復薬を使い一命を取り留めた。その後は事業が成功し、順風満帆な生活を送っていたが、彼の子供も呪いのせいで危篤な状態なった。男は大金を教会へ持ち運ぼうとした時、3人の男が現れた。街中でありながら、盗みを働き、護衛の第3級冒険者を殺害し、逃げ去った。
お金を失った男は、お金を集める目処が経たずに、娘は死んで行った。母親は娘を失ったショックで自殺をしてしまった。
「それは悲しかったな。他にもいいことを聞けた。3人の男はこの場所だ。何をしようとも勝手だが、死ぬぞ?」
「あははは。いいんだよ。死んでも。俺が絶対、何としても……あの3人を殺す」
「ならばいい相談がある」
「いい……そうだん?」
「ああ。この要件を受け入れてくれならば、私が明朝、彼ら3人の首を持っていこう。」
男は一瞬、怪訝そうな顔を浮かべる。情報屋は仏頂面で、
「そのかわり私の知り合いをお前の秘書にして欲しい。事業の大半を教え、お前のビジネスパートナーになる人だ」
「……それ…………だけか?」
「ああ。怪しい、物申しだろうが。闇市1番の情報屋として書類も書こう」
情報屋は腕を動かし、書類に器用に契約内容を書いていく。20秒後、男に情報屋は契約内容を出し、男にどうだろうか? と優美な声色で話す。
「……いい。やってくれ、やって欲しい」
「契約完了だ。では、今夜、お前の家へパートナーが首を持っていこう」
男は片眉を上げて、感謝をしながら出ていった。
「さあ、次の方。入れ」