第4話 〜一件落着〜
軽装な男共、6人が堕ちた表情でリアンへ走る。リアンはスキットルのお酒を傾け、2口飲み込む。
背中にかけていた漆黒の大剣を両手で掴み、姿勢を低くする。
「そやつらは才能値70以上の狂犬よ。貴様に倒せるものか」
「こうも才能値60越えが出てるくるのか。ヤミは寝てんのかよ」
狐の仮面が揺れ、リアンは大剣を豪快に振る。6人の男共の距離は約8メートル。胴体を真っ二つにされた、男共6人。部屋の壁が切り裂かれ、土埃が舞う。リアンは余裕っしょと大剣の矛先を地面につける。瞠目するユラは慌てて立ち上がり、傍においてあったステッキを掴む。
「【滅びよ 滅びよ 彼方に逝く 滅びの賛歌】」
慢心。闇ギルド、第9師団を纏める彼女の本来の立ち位置は本来後衛。魔法が主の立ち位置。前衛で事足りると侮った、ユラの腕が疾走したリアンによって無様に殺られる。
「【賛歌とは鼓舞する力 鼓舞する力は涙なにしには語れない】」
止まらない。腕を切り落としたユラが砂のように散っていく。リアンはチッと舌打ちをして、周囲を見渡すが、ガクッと体が斜めに傾く。頭がガンガンと打ち付けるように鈍痛して、鼻がいかれそうだ。
「この匂い……毒か」
この部屋に充満してた匂い。鼻が曲がりそうな匂いは毒だった。
「【涙の横には 賛歌の横には 滅びの横には 美女が必要だ そうだ魔女はどうだろう 醜悪な貴様に寄り添う 馨しい魔女は さあ 滅びの賛歌を】」
リアンはスキットルを飲んで、魔法に耐える。
「【滅びの揺らめき】」
一瞬の静寂。次にくる猛風。床が、壁が、天井が、照明がボロボロと砂になっていく。2秒経った後か、ダンジョン都市、ゼイウスの一部の地面が崩れた。
「妾を侮辱した報いだ。名も無き女狐が」
ふふふっと地上の、民家の屋根上に避難したユラが口を隠しながら、お淑やかに笑う。いい男を失ったショックはデカいがまた探せばいいと身を翻し、目の前にいたのが女狐。
「よっ、激臭のババア」
瞼が痙攣し、リアンはステッキを構える。
「何故、貴様が生きてる……? 生きられるはずがなかろう! 確実に手応えは感じたはず」
「落ち着けよ、おばさん。私の方が若いんだから。まー若げの覇気? みたいな」
ユラは仮面越しでもリアンが笑っているのが分かる。ユラは魔法の詠唱に入ろうとするが、視界が真反対になる。
「魔法使いがこの距離で近接に勝つわけないだろ」
頭がボトッと地に落ちる。ユラの体が糸が切れたように脱力し、死んでいく。
「もぉ〜わちゃしの人使いがあらいよ〜。急に呼び出すなんて」
「悪い悪い。流石に私も1人で突っ込む馬鹿じゃないからよ」
よいしょっと、家の壁を登ってくる幼女。金髪のツインテールに黒装束ゴスロリと呼ばれ衣装をまとっている。
外見は美形な幼女と名称してもいいぐらいだが、緑色の蛙のお面を被っている。
「しっかしよ〜、私の労働半端ないだろ。あと1人ぐらい仲間が欲しいな〜」
「なーにいってるの。ヤミとマリアなんてもっと大変なんだから。でも、そういう私も手が回ってないのよね〜」
いちいち動きが可愛らしい、幼女はユラの武器とアイテム品を手に取る。
「じゃあ、わちゃしはこれを渡してくるわね。お疲れ様、リアン」
「こっちこそありがとな、助かったよ。ミラー」
フワッと喧騒溢れる街へ、下りっていったミラーを見送り、ユラは頻りに手を払う。スキットルの中身を飲もうとしたら、酒がないもんで、
「行くか! 酒場に!」
語気を強め、鼻歌交じりに路地裏へ下りた。
「知ってるか? あの岩盤が崩れた真相の話?」
程よく汚く、男や女の冒険者が気持ちよく飲んだくれている酒場。いい酒、いい料理、そして安い。低級冒険者には人気ある酒場。広さ10メートルある酒場で、丸机を囲んで飲んでいる男2人が話し始める。
「ありゃあ、岩盤が緩かったってギルドは言ってるけどよ。魔力の残滓があったとさ」
「なに? じゃあ、抗争があったってか?」
「ああ。俺は闇ギルドの住処があったと睨んでるんだよ」
ジョッキに入っているこの酒場特有のお酒、辛酒を意気揚々と喋る男は飲み込み、赤く火照った頬を弛ます。
「その相手が噂の仮面集団じゃねぇかって話だよ」
「仮面集団? あんなの御伽噺のようなものだろ?」
「ホントか? 噂によれば、1000人を超える人を抱えるとか、才能値100以上がゴロゴロいるとか、はたまた3人の至宝と同等の人物がいるとか……な」
「あははははは! 夢見がちだろお前!」
「……そりゃそうか! あははは!」
男2人は良い噂の肴を元に、酒をガブガブと飲み出す。その時、カランカランと酒場の扉が開き、銀髪のウルフヘアの人物が入ってきた。
ルイはカウンターで肉料理を肴に辛酒を飲んでいる、人物の隣に座る。
「やあ、リアン」
「お? ルイ! 元気そうだな! 解決したのか?」
「ああ。起きたら、仲間が戻ってきて。皆無傷だったよ。不思議だよ」
「あぁ? あの話、本当だったのか? ルイが寝ちまったから、嘘だと思ってさ」
辛酒が入ったジョッキを飲みきり、店主、酒をと注文する。
「……だよな。もしかしたらリアンが助けてくれたと思ってさ」
「あん? 有り得ねぇだろ? 万年第4級冒険者の私だぞ? 酒が飲めればいいんだよ。それでその話、詳しく聞かせてくれよ。肴にしたいんだ。店主、こいつにも酒を」
にひひっと微笑むリアンに、ルイはいいぞと笑う。
このゼイウスには、ゼイウスを均衡に保たせる存在がいる。
1人は冒険者を
1人は情報を
1人は闇ギルドを
1人はゼイウスを
1人は彼女を
1人は信念を
1人は人々を
彼等を認識しているのはごく一部の人物。知己してる人物は彼らをこういう
【平和の象徴】と