第3話 〜突撃〜
「おーい、目ー覚ませ。痛いのはわかるけどよぉ〜」
肩に矢が刺さり、壁へ矢の半分以上がめり込み抜け出せなくなった女性の頬をペチペチと叩く。あまりの痛さに気絶していた、黒髪のショートカットの女性が朧気に意識を覚ます。
「だ、誰……お前!」
「おーおー、そんな人を殺しそうな顔すんな。リアンちょー怖くなっちゃった」
「くっ! 私を馬鹿にするな! 早くこの紐を外せ!」
「やなこった」
口角を上げて、リアンは女性の髪の毛を掴む。瞳と瞳がくっつくように女性の顔を凝視し、リアンはぶふっと笑う。
「才能値、67かよ。闇ギルドは相当力付けてるな」
「っ!? なぜ、私の才能値が分かる!? 貴様のような愚者が!?」
「まあまあ、そんなこといいからよ。酒でも飲んで、愉快になろうぜ?」
リアンは彼女の髪の毛引っ張り、顔を仰がせ、スキットルの酒を流し込む。
「ぶっは!? ……さ……け? 貴様! 何をしている!?」
「うるせぇーよー。っでユラはどこだ?」
「……誰がユラ様の場所——!」
彼女の後頭部を石壁に打ち付けて、リアンは目尻を上げる。人を痛めることに躊躇しない。
「ひひひひ、再度聞くぞ? ユラはどこだ?」
殺される、喋らなきゃダメだと彼女の中で脅迫観念が生まれ、女性は呂律が回らない中で言葉を喋る。
「B-1043にい……る」
「よくいった。ありがとな」
リアンは髪の毛から手を離し、頻りに手を拭う。踵を返して、リアンは大剣の柄を握る。スキットルのお酒を飲み込み、大剣を一閃。
女性の首がころんと、床に転がった。
「ふむ、いい酒だ。まるで妾に似合うような、香しい匂い」
桃色に怪しげに光る部屋。長椅子に座り生脚を出す、シスター服を着る漆黒色の腰まである長髪の女性。瞳は血の色のようにどす黒い、色をしている。つり目なその瞳と高い鼻。人目見たら脳裏にこびりつく美麗な顔立ち。
30メートルほどあるこの部屋には、7人のパンイチの逞しい男共がユラを囲む。ユラの周りはむせ返るほどの甘い匂いが漂っている。男共の1人がユラに「きなさい」と誘われ、ユラの隣に座る。生脚を絡ませあれやこれやと男は息を荒くする。
「ふふふ、可愛いのう」
ユラはくすぐったようにはにかんだ。
「———?」
ユラはその足を止めて、上空を仰ぐ。どしんどしんと、振動で埃が落下してくる。顔を傾げるユラ、そして貫かれる天井。部屋のど真ん中に瓦礫と一緒に着地するのは、緑色の装束と狐の仮面を被った人物。ユラは唇を曲げて、薄笑いを浮かべる。
「敵襲とは久しぶりじゃのう。妾を誰か分かっているのか、貴様は」
「ひひひ、知ってるよ。滅殺の……うんこ。違う違う。おばちゃんのコロッケ……うん? 昔ながらの肉じゃがか。……いや、違うな。醜悪なブス……?」
「……殺れ。今すぐあの女狐を殺れッッ!」
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