箱の中
お題:箱の中のジジイ
制限時間:15分
箱の中を覗くとじじいがいた。
嘘みたいだけど、本当のことだ。
学校からの帰り道、路地裏でミーミー鳴いているのが聞こえた。子猫かと思った。
その日は寒かった。みぞれが音を立てながら、アスファルトを冷たくしていた。呼気が白かった。
だから、鳴き声を聞いてかわいそうだと思ったのが失敗だった。段ボール箱を開けると確かに生き物がいた。
目がぱちっと合った。黒く潤んだ目、その端の細かい皺、白い口髭、茶色いシミ、つるっとした頭に申し訳なさそうに毛が生えている。
猫のサイズ。だけどまごうこと無きジジイである。
絶対に見てはいけないものを見たとわかった。
ミーっとそれは鳴いた。
私は静かに蓋を閉じた。
寒いな。今日は一段と。
みぞれが雪に変わり始めて私は家路を急いだ。