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神様派遣会社  作者: 快刀乱麻
2章
5/8

神様なんていない

「ねぇねぇ知ってる?」


「何々?」


「今話題になってる新興宗教事件、何でも神様が関わってるって噂」


「何それ~?都市伝説か何か?」



 神様?そんなの居るわけ無いじゃない。もし居るなら、どうしてこうも世界は不公平なのよ。



「ねぇ、茜はどう思う?」


「どうせただの噂でしょう?」


「それが捕まった全員、神様が······神様が······って、言ってるんだって」


「うわ~······怖っ」


「······ふ~ん」



 もし居るなら文句言いたい。どうして練習を頑張っていた私だけ、こんなに辛い思いをしないといけないの?ってね。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日のニュースも、新興宗教事件ばかりですね」


「ほっとけ、ほっとけ。人の噂も75日って言って、すぐに忘れ去られる」


「75日って長い」


「モノの例えだ。今は昔と違って流れが早いから、もっと早く忘れ去られるよ」



 俺達は何時ものように、のんびりと部屋で寛いでいた。仕事、仕事と煩いゲブも、今回ばかりは黙ってニュースを見ている。まっ、俺達の仕事は、あまり表沙汰になったらマズいからね。


 ただ少しやり過ぎた感は否めないが、さっきも言ったように皆すぐに忘れるさ。



「神藤、暇なら洋服買いに行きたい」



 また寝ようかな?っと、思った時、雑誌を読んでいたテミスからデートのお誘いを受けた。



「テミスとデート!」


「違う。芹華が学校に行ってるから、神藤に頼んでるだけ」


「バッサリですね······」


「ありがとうございます!?」


「変態」


「変態ですね」



 確かに今の俺の容姿だと、テミスと歩いてる時点で捕まるだろ。せっかくだから軽く身支度を済ませるか。でも、テミス以外の女性から声をかけられたらどうしよう。



「それは無いですね」


「神藤、変態オーラ出てる」


「君達はエスパーか!?」


「ボキャブラリーが少ない。神藤、もっとセンス磨いて」


「もっと罵倒して下さい!」


「はぁ~······」


 深い溜息をついたゲブを残し、俺とテミスはショッピングモールへ向かった。ここはよく芹華が、友達と遊びに行くらしい。


 しかし大学に行き始めてすぐに友達が出来るあたり、元々人を惹き付ける力があるんだな。


 そんな事を考えていると、テミスが周りのお客がこっちを見ている事に気付いた。



「神藤、皆が見てる」


「見てるな」



 ショッピングモールまでの移動手段は車だった為、それほど気にならなかったが······。やはり俺達の格好が目に付くんだろ。


 テミスはその金髪碧眼に合わせるかのような純白のドレスに、ピンクのリボンをあしらっている。その容姿は神と言うか天使。


 そして俺はそのテミスに合わせ、真っ黒のスーツを着ている。そりゃ目を引くよな。だってテミス可愛いし。



「神藤も決まってる」



 テミスがデレた~!!これで勝てる!!何にかには知らん!!まさに有頂天とはこの事だ!!


 そんな周りの視線を浴びつつ、俺達は買い物を楽しんだ。対応してくれた店員さんは、かなり緊張してたがな。



「大量」


「いっぱい買ったな」


「芹華とゲブのも買ったから」



 久々に好きなモノを沢山買えてご機嫌のようだ。しかし、そのご機嫌を損なう様な不穏な空気を出している者がいた。



「ところで神藤、気付いてる?」


「あぁ······あの客、動きが怪しいな」


「どうするの?」


「どうしてほしい?」


「質問に質問で返すのは感心しない」


「悪い悪い」


「······神藤の格好いい所見たい」



 テミスにそう言われたら頑張るしかないよな。さて、久しぶりに格好いい所を見せる為に、悪い子にはお仕置きだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「茜、いいのあった?」


「このシューズかな?あっ、こっちも良さげ」


「そんなのより、可愛い服買えばいいのに」


「今は夏の大会が大事だから」



 乙葉も静香も、スランプの私を心配してくれてるのはわかるけど、今は練習がしたい。でも怪我して練習もまともに出来てなければ、スランプにもなるよね······。



「キャッ~!?誰かその人を捕まえて!?」


「!?」


「「茜!?」」



 女性の店員さんが悲鳴を上げた後、そのお店から黒いカバンを抱えた男性が逃げるのが見えた。


 私はその瞬間、その男性目掛けて駆け出した。スランプ中だけど、アレ位なら追い付ける!


 だけど後数mと言う所で、足に痛みが走ったのです。



「ッ······足が······」



 やっぱり神様なんて居ない!こんな時に痛みが······!?


 神様······!もし本当に居るなら、私を助けてよ!私がそう願った瞬間



「ノワァ!?」



 走っていた男性が派手に転けたのです。



「ハァ······ハァ······」



 私は足を止めて息を整えゆっくりと顔を上げると、そこには神々しいまでの女の子と、それに付き添う漆黒の男性が立っていました。


 それはまさに、神様が現れたかのような錯覚を覚えたのです。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「キャッ~!?誰かその人を捕まえて~!?」



 その声と共に、さっきの怪しい男がこちらに走ってきた。しかも周りのお客を突き飛ばしながら。


 ヤレヤレ······。盗みを働くなら、もう少し場所を考えろよな。こんな所じゃ、逃走経路もままならないのにさ。



「神藤、残り距離100m」


「はいよ」



 テミスのナビと同時に、相手との距離をカウントする。建物の構造上、どうやっても俺の横を通り過ぎないと行けない。


 残り数m。大声で何やら喚き散らしてるので、少しだけ進路から外れると同時に足をだす。



「よっ」


「ノワァ!?」



 すると走ってきた男を俺の足に躓き、派手に転んですっ飛んでいった。いや~凄い勢いで転けたなぁ~。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お~い······大丈夫かぁ~?」


「死んだ?」


「あれで死なれたらたまったもんじゃない」



 女の子と男性はこちらに気付かずに、転んだ男性を見ながら話してる。いったい、この人達は何者なの?それ以前に本当に人?


 私が思考を巡らせていると、倒れていた男性が起き上がりナイフを構えたのです。あんなのを持ってたなんて!?



「テメェ!?」


「神藤、気が変わった。せっかく楽しんでるのに、それを邪魔した罪は重い」


「では姫にお任せします」



 ナイフを構えた男性が、その二人に向かって走り出した。それと同時に、男性の後ろにいた女の子が前に出てきたのです。



「ちょっ······危ないっ!?」


「大丈夫」


「まっ、見てなって。如月きさらぎ あかねさん」


「······えっ?」



 どうして私の名前を?いや、そんな事より女の子が!


 私がそう思った刹那、女の子はその身を縮め、向かってくるナイフを軽く左手で流し、そして右手で男性の鳩尾に、正拳突きを入れたのです。



「グフハァッ!?」



 正拳突きを受けた男は転けた時以上に凄い勢いで吹き飛び、その衝撃からか女の子も軽く後ろに飛びましたが、後ろに居た男性が受け止めました。



「吹っ飛んだな」


他人ひとの迷惑にならない方に飛ばした。後、盗んだバックはちゃんと回収した」


「さすがテミス。だけど俺の見せ場が······」


「神藤、ドンマイ」



 まるで周りの事などお構いなしに、二人で会話を繰り広げてる。この人達、本当に何者?



「このバックは君に預けておくよ。あぁ、俺達の事が気になるならここへ来るといい」



 そう男性が言うと、バックと名刺を渡してきた。その名刺には、『神様派遣会社』と書かれていたのです。



「さて、騒ぎが大きくなる前に帰るか」


「うん」


「それじゃ行くか」


「ちょ、ちょっと待って!?貴方達は一体何者?」


「さてな。知りたければ来るんだな」


「待ってるね」


「あぁ、そうだ。君は神様を信じるかい?」


 そう男性は言い、何事も無かったかのようにその場から立ち去ったのでした。



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