表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様派遣会社  作者: 快刀乱麻
1章
2/8

交渉

それから一週間後。僕は正装し、営業モードで新興宗教団体『未来への(しるし)』へ向かった。


 この宗教団体と対立してるのが、『司援会(しえんかい)』だ。


 どちらも新しく出来た団体らしく、信者の取り込みに余念がない。その中で『未来への記』が、『司援会』を潰して、そこの信者を引き込むつもりらしい。


 まったくもって面倒くさい依頼だ。既存の神ではなく、新興の神を信じた信者をめぐる対立なんて。


 まっ、確かにデカい所の新興宗教団体ではなく、小さく、しかも出来たばかりの新興宗教にハマる人間なんて騙しやすそうだ。


 成る程。資金繰りに関しても、お互いに信者を取り合ってる所から見て、結構キツいみたいだな。全て資料通りだ。


 さて。それじゃ神様気取りの人間に、本物の神様を派遣してやるか。


「『神様派遣会社』······ね」


「えぇ。私共の会社は神様を派遣し、その人の願いを叶える仕事をしております」



 手筈通りおやっさんの部下に案内され、俺は『未来への記』の教祖、月島 彦根(つきしま ひこね)と面会した。


 意図もたやすく教祖と面会出来たのは、おやっさんの部下が、かなりの信頼を得られてるからだろか。



「ふん。神様を派遣など、詐欺ならもっとましな方法をとるんだな」



 しかしこの月島とか言うの、派手な服装に身を包み、見るからに私腹を肥やしてます、って身体付きだな。よくこんなのを教祖として称え敬えれる。



「皆さん最初はそう仰います。そこで我が社では、三日間のお試し期間を設けてます」


「ふむ······それで?」


「その三日間で、信者の数を十倍にしてみましょう」


「三日間で十倍だと?ふん!そんな事が出来るわけがないだろ」



 よし、食い付いてきたな。ここからが本番だ。



「神様を使えば可能です」


「馬鹿馬鹿しい」


「ではこうしましょう。もし私が三日間で信者を十倍に出来なかった場合、十倍の入信料を払い入信しましょう」


「何っ!?」



 やはり金を吊したら、食いつきがよくなった。さて、もう一押しだ。



「しかも、入信してからかかるお金も十倍払います。しかも数名ですが、入信者のオマケ付きで」


「グヌヌッ······」


「どうですか?悪い話しではないと思いますが?」


「いいだろう。但し見張りを付けさせてもらう」



 そう言って控えていた側近を呼び、何かを耳打ちしてからニヤリと笑った。とてもいい悪者の顔だな。


 数分後。側近が一人の美しい黒髪を腰まで伸ばし、見るもの釘付けにするオーラとスタイル、そして何よりも、全てを見通しそうな深い漆黒の目を持った女性を連れて戻ってきた。


 資料にはのっていなかった女性の登場に、俺はおやっさんの部下に目配せして確認するが、返ってきたのはわからないと言う反応だった。



「紹介しょう。我が教団の神、アイリーンだ」



 おいおい。いくら元が人とは言え、神格化したモノを人前にだしていいのかよ。つか、こっちのアイリーンが信仰のシンボルか。


 このおっさんを教祖様と言いながら信仰するより、何百倍も信仰したくなる。それだけの神々しさは兼ねそろえてるな。


 しかし疑問が湧く。まず資料には、信仰神である彼女の事が何も書かれてなかった事。今回の対応からおやっさんの部下が彼女を知らないのはおかしい。

おっさんが彼女を連れて来た事で、彼女が信仰神であるとわかっただけだ。


 だが何故、信仰神である彼女を連れて来た。その疑問におっさんはすぐに答えた。



「彼女をお前の監視に付ける」


「はっ?」



 何故、彼女を俺の監視に付ける?監視ならその女性を連れてきた側近の方が向いてそうだが。



「千里眼と言うものを知ってるか? 彼女はその千里眼を有してる」



 千里眼だと? まさか彼女の事が資料にのってなく、部下の人が知らない理由って。



「どうやら気付いたらしいな。お前の横に居るのが警察だと言う事は、とうの昔に分かっている」



 やっぱり。これで彼女の事が資料にのってない理由が分かった。わざわざ自分達の切り札を、敵である警察に晒す理由もない。


 だけど彼女を俺の監視に付ける理由が分からない。本当に千里眼を有してるなら、ここからでも俺を監視出来る筈だ。



「千里眼を有してるなら、私の事など監視しなくとも分かるのでは?」


「それがお前の事は見えないらしい。そいつがお前を連れてくるのは見えたようだがな」



 なるほど。簡単にアンタと接触出来た理由も分かった。おやっさんの部下を泳がせてたのも、俺と会うのが目的か。


 そして彼女を僕の監視に付ける理由。それは、近くなら千里眼が働くと考えたからだろな。



「分かりました。彼女を私の監視に付ける事を承諾しましょう」


「ふん。ではその3日間の契約にサインしよう」



 僕は仮契約書を取り出し、月島に渡した。契約書にサインした瞬間、その場の空気が一気に変わった。さぁ、神様のご登場だ。



「な、何だコイツは!?」



 驚くのも無理はない。神様が一時的にも見えるのだから。しかし面白い神様が派遣されたな。



「この神はシヴァ。信者数を増やすには、とてもいい神様ですよ」


「そうなのか?」



 いや、嘘だ。シヴァはヒンドゥー教三大神の一柱。


 そして司る力は破壊だ。その容姿はまさに破壊神と言って過言ではない。まっ。他の新興宗教団体を破壊し、その信者をここに連れて来る事を考えれば嘘ではないか。


 しかし三大神の一人が派遣されるとは、つくづくこのおっさんは悪者だね。



「契約は終わりました。それでは彼女を連れて行きます。また3日後にお会いしましょう」



 さて、その間に彼女の事を調べるか。ゲブとテミスなら、すぐに調べはつくだろ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ