人狼の家
揺れる背中に必死に捕まりながら、人狼のお母さんの怪我を治せたことを実感する。私の力で直せたのだと思うと、達成感だとか、嬉しさなどが込み上げてきて、なんだか楽しかった。
移動中はとても2人と話す余裕などなく、しがみついていることに精一杯だった。
「夜が近づいてきましたので、もう少し飛ばしますね。」
え、これ以上飛ばすの?ちょっとしんどいかも。吐いたらどうしよう……。
「頑張れ、カトレア!」
うえーん!
なんとか人狼たちの家にたどり着いた私たち。人狼の母親の背中からおり、ゆっくり地面に足をつけると、なんだかフラフラしている気がする。車に酔うみたいに、酔ってしまったのだろうか?
「ふふふ。大丈夫ですか?」
そう言って人間の体になった親子。先ほどは怪我に気を取られてよく見ていなかったが、2人とも綺麗な顔立ちをしている。
「だ、大丈夫です。」
今にも転けてしまいそうなほど足元がおぼつかないが、なんとかまだ立っていられる。
「もうそろそろ夕方です。どうぞ、今夜はうちに泊まっていってください。」
ゆっくり扉を開け、私に向かって手招きをする。私はつられるがままに家の中に入っていった。
「お風呂、どうぞ。」
「夕飯です。」
「こちらで寝てくださいね。」
その日は、何から何まで至れり尽くせりで、それはまた令嬢に戻ったのではないかと錯覚させられるほどだった。
ベッドにゴロンと横になると、今日の疲れを感じた。森を歩いたり、魔力を切れるまで使ったり。流石に疲れてしまうだろうと言うような内容を過ごした私が眠りにつくまで、そう、長い時間はかからなかった。
コンコンコン、と言うノックの音で目が覚める。
「おはようございます。朝食の支度ができましたよー。」
まるで本当の母親の声のようだった。朝だと声をかけにきてくれたメイドの声のようだった。ああ、どれだけあの場所に戻りたいことか。ぐしゃり、と、綺麗な表情は潰れ、今にも泣き出してしまいそうになる。
「カトレアさん?」
「あっ、はい。今行きますね。」
ダメダメ。泣いちゃダメ。私は、強く生きていくんだから。
「大丈夫?カトレア。」
ゼラが心配してくれたのか、私に声をかけてくれた。私は笑顔で
「大丈夫。」
と答える。追放された以上、頑張って生きていくしかないのだから。




