アスター王子②
アスターくんに招かれるまま部屋の中に入る。やっぱり青が好きなのだろうか?部屋の中には、青色のものが多く感じられた。
「アスターとお呼びください、姉上。」
敬語を、使うべきなのだろうか?王族同士の会話なんてあまりみないから、常識がわからない。
私が困っていることに気がついたのか、アスターは
「敬語も使わなくていいですよ。私は頭の弟ですから。」
と言って、ふふふと笑った。
「ありがとう、アスター。」
アスターと話していると、なんだかほっとする。気を使わなくていい相手のような気がするのだ。
「お兄様!」
「マリー。」
マリーがアスターに駆け寄り、何かを話している。
「そっかあ。」
アスターも幸せそうに笑っていた。アスターはきっと、マリーのことを大切に思っているのだろう。
「何を話しているの?」
声をかけると、マリーはキラキラした目で振り向いて
「カトレアお姉様がどれだけ素晴らしいお方か話していました!」
と言って、私に飛びついてきた。崩れそうになるバランスを、なんとか持ち直す。
一度助けてやっただけで、よくここまで私を好きになれるものだ。正直、かなり驚いている。人狼たちの家にいた時よりも、さらに私に懐いてくれている気がする。
「マリー。どうしてそんなに姉上が好きなんだい?」
アスターがマリーにそう尋ねると、マリーは当たり前のことを言うように
「私を助けてくれましたし、仲間ですし、何よりお話ししいて本当の姉のように感じてしまって……。」
と言った。アスターには仲間、の意味がわからないようで、
「そ、そうなんだ……?」
と、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
椅子に腰掛けると、メイドが紅茶を持ってきた。さっき飲んだからいらないのだけれど、ここは飲んでおいた方がいいだろう。
コクリ、と一口飲み込むと、あまり飲んだことのない。
「私の好きな紅茶なんです。」
確かに、アスターが好きそうな紅茶だ。私はその味が面白くて、もう一口、今度はごくんと大量に飲んでみた。やっぱり、珍しい味だけれど美味しい。
「気に入っていただけたようで何よりです。」
アスターはそう言いながら、紅茶を机の上に置いた。
「それより、次はリジアのところに行くんですか?」
リジア。それがマリーを召喚した人の名前なのだろうか?
「はい。お兄様。」
マリーが少し強張った顔でそう答えると、アスターは、少し心配しそうな表情になった。
「では、私もついて行っても構いませんか?」
マリーと顔を見合わせると、マリーはニコッと笑った。これは、いいということだろうか?
「ええ、構わないわ。」
「ありがとうございます。」
やはりアスターも、マリーのことを心配しているのね……。