アスター王子①
「我々は君たちを含めて5人家族になったわけだ。」
王様はガッハッハ、と笑った。そして、愛おしそうに私たちを見つめる。
「5人、ですか。」
5人家族か。賑やかでいいな。
「はい、お姉様。お父様と、お兄様、私を召喚したお姉様と私、そして、お姉様です。」
あれ?お母様がいない……。王妃は子供たちに取って必要な存在だろうに。
「私の妻は、あいつだけだ。」
……ああ、やっぱり、亡くなってしまっていたのか。
「元気を出して下さい、王様。」
元気付けようと王様に声をかけると、王様は立ち上がり、
「お父様と呼べ。」
と言って、部屋を出て行った。悪いことを聞いてしまっただろうか?
「お姉様。お兄様とお姉様のところにご挨拶にいきましょう。お供いたします。」
マリーが私の腕をがっしりと掴みながらそう言った。
そうだな、家族になったなら、挨拶に行かないと。
「メイドさん。」
マリーが控えていたメイドに声をかける。
「はい、マリー様。」
「お兄様とお姉様に、新しくお姉さまと言う家族が増えたことと、挨拶に伺うことを伝えて下さい。」
あのメイドは、犬、だろうか?声をかけられて嬉しいのか、尻尾をブンブンと振っている。そのメイドは、
「はい。」
と答えると部屋を出て行った。
「では、少し待ってからお兄様のところへいきましょう。」
10分程マリーと話し込んだ後、マリーは
「そろそろですかね?」
と言って立ち上がった。私もつられて立ち上がる。
「お兄様のところへ行きましょう。」
私はうなずき、マリーと私の手を重ねた。マリーは嬉しそうに私の腕にしがみつく。
「ご案内しますね。」
マリーの隣を並んで歩く。マリーはなんだかご機嫌だ。
「お姉様と家族になれて嬉しいです。」
なかなか可愛いことを言ってくれるではないか。マリーが妹なんだと意識すると、可愛く思えて仕方がない。
「あ、ここです。」
マリーが指さしたのは、突き当たりのドアだった。
ドアの前には衛兵が立っていて、私たちが来たことに気がつくと、中にいる王子に伝えてくれた。
「王子、カトレア様とマリー様がいらっしゃいました。」
そう声をかけると、王子自らドアを開けてくれた。青色が好きなのか、全身青づくめの服を着ている。
「はじめまして、姉上。いらっしゃい、マリー。」
「はじめまして……え、あの。」
な、名前がわからない……。
「ふふ。アスターです。どうぞ、お入りになって下さい。」