あく、やく……令嬢!?②
「お姉さまは悪くありません!悪いのは、私です!」
アイはそう大きな声で叫んだ。誰かに話しているというよりかは、まるで自分に言い聞かせているかのようだ。
「な、なぜだ!?アイは悪くない!」
王子は状況が飲み込めず、焦っているように見えた。愛するアイが、自分の意見とは反することを言っていて驚いているのだろう。
「だって、だって……約束、だったのに。」
アイはついにポロポロと泣き始めた。王子が慌ててアイのほおを伝う涙を拭うも、その涙が途切れる気配はない。
「約束だったんです。学園生活、一緒に楽しもうねって……なのに、なのに。」
なんだか私もつられて泣いてしまいそうな気分だった。けれど、上を向き、ぐっと涙とこらえる。
「私は裏切ってしまったんです……お姉様とではなく、王子様と一緒に過ごしてしまった……。」
アイに寄り添って、ごめんなさいを言いたい。大丈夫だと言いたい。けれど、王子は私が近づくことを許さないだろう。
「……とっ、とにかく、アイは悪くない!悪いのはあいつだ!」
そう言って王子は私を指差した。どきっと、心臓が怯えた。アイのせいなんかじゃない。王子のせいなんかじゃない。……私が、悪いんだ。意地悪なんてした、私が悪いんだ。
「申し訳……ありませんでした。」
もう涙を堪えることはできなかった。
「妹は約束を破るし……王子は私の婚約者なのに、他の女と仲良くするし……もう、耐えられませんでした。」
だからといって、してはいいことではなかった。それはもう、十分にわかっている。私がもっと、我慢のできる子であればよかったんだ。
私はゆっくりと後ろを向いた。
「さようなら。」
もう、ここに戻ってくることはないだろう。なぜなら、悪役令嬢の私は追放される運……命……え?あく、やく……令嬢!?え、どうしてそんな言葉が出てくるの?
「お姉様?」
アイに呼ばれ、はっと現実に戻る。考えるのはあとね。
「こいつを森に追放しろ!婚約破棄だ!きっと父上もお許しになられる!」
兵隊たちが集まってきて。私の腕を掴み、連れていく。追放って……どこに?もしかして、今ちょっとやばい?
「お姉様!お姉様!」
「アイ!元気に過ごすのですよ!病気や怪我をしたら、この姉が許しませんからね!」
アイは何も悪くない。アイは何も……。せめて、愛だけでも幸せに暮らせるように。あの王子や、アイを溺愛している弟、お母様、お父様がいるのだから、きっと大丈夫。
「お姉様っ!私、絶対お姉様を探し出しますから!待ったてください。」
あー、いいのいいの。あなたさえ幸せに暮らしてくれれば、それでいいの。探さなくて、いいからね……。




