マリーちゃんは帰れる?
白いレースのついたドレスを身にまとい、追放されたときにつけていた豪華なネックレスと迷いながらも人狼の男の子が買ってくれたネックレスをつけることに決める。お母様とお父様が買ってくれたネックレスの方がいいのはわかっていたけれど、いまだに買ってくれた嬉しさの余韻が残っていたから。
「お待たせー。」
部屋からで、みんなの前に姿を表す。すると、男の子が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「わあ、つけてくれたんだね!」
つけただけで喜んでもらえるなんて。なんだか私も嬉しい気持ちになる。
「じゃあ、行ってくるね。」
マリーちゃんを迎えにきたという馬車に乗り込むと、すでにマリーちゃんが乗っていて、私が乗るとぱああっと笑顔になった。
「いってらっしゃーい。」
「また来てくださいね。」
2人に見送られながらお世話になった家を後にする。きっとまた戻ってこよう。
「でですね、魔王を倒せば戻れるらしいんですよ。」
転生者はもう死んでしまっているから元の世界に戻ることはできない。けれど、召喚された者は別だ。召喚された目的を果たせば、元の世界に変えることができるらしい。
「いいよねー。マリーちゃんは帰れるんだもん。」
つい嫌味が出てしまう。私はこの世界にいたくなかったから。私を追放するような人がいるこの世界より、温かい愛に包まれていたあの世界の方がいいに決まっている。
「ごめんね。気にしないで。」
「い、いえ。軽率でした。」
でも、と、マリーちゃんが続ける。
「帰るつもりは、ないんです。」
マリーちゃんは下を向いたままそう言った。
「魔王を殺すなんてこと……可哀想で、できないんです。」
そういうマリーちゃんはどこか寂しそうだった。こんな歳で元の世界にいる家族や友達と別れる道を選んだのだから、当然のことだろう。
「あら、大丈夫よ。倒せばいいんでしょ?殺さなきゃいけないわけじゃないじゃない。」
ようするに、マリーちゃんを召喚した人に魔王を倒したと認めさせればいいわけで。
「そもそも、どうして魔王を倒さなくちゃいけないの?」
少なくとも、ここ数十年、魔王は何も悪いことはしていないはずだ。
「実力をわかってもらいたかったそうですよ。私は魔王を倒せるくらい強い勇者を召喚できるんだーって。」
何がしたいんだ、その人は。そもそも、誰がマリーちゃんを召喚したんだろう?
「じゅ、獣人國のお姫様です……。」
えええええっ!?