お礼がしたい!
「あ、あのお。話がよくわからないんですけれど……。」
人狼の母親が申し訳なさそうに私たちを見た。
「ああ、すみません。説明させていただきますね。」
私は、なるべく長くならないよう、簡潔に説明をした。
私は、違う世界の記憶を持っていること。転生者であること。その記憶が、マリーちゃんが召喚される前にいた世界と同じ世界の記憶であること。そんなことをまとめて簡単に話すと、2人は納得したように頷いた。
「驚きますよねー。急に魔法のある世界に来ちゃったんですから。」
まあ、確かに混乱したな。悪役令嬢だったし、神様のミスだったし。
「ねえ、カトレア。外に誰か来てるよ?なんか、敵意持ってるけど。」
ゼラがそういうと、急に目の前にこの家の周りの地図が表示された。そこには、敵意を持った人が何人、どこにいるかまで示されていた。どうやらゼラが表示してくれたらしい。
「敵がいるようなんですけど、心当たりあります?」
人狼2人の顔が強張る。心当たりがあるのだろうか?
「はいっ。」
マリーちゃんが手をあげる。
「多分、迎えだと思います。」
私たちがドアを開けるとややこしいことになりそうだったので、ドアはマリーちゃんに開けてもらうことにした。ガチャリとドアを開ける。マリーちゃんがドアからひょっこり顔を出して、
「大丈夫ですよー。」
といって笑うと、敵意は消えていき、さほどまで赤で表示されてていたのが、青色に変わった。
なるほと、敵は赤で、それ以外の人は青で表示されるのか。便利だな、これ。
「そうでしょー。」
ゼラが自慢げにそういいながら地図を消す。
「やっぱり、お迎えだったようです。……お礼がしたいので、ローズさん、一緒に来ていただいてもいいですか?」
お礼をされるほどのことはしていない気がするが。
「お願いします!」
マリーちゃんがそれで気が済むというのならいっても問題はないだろう。
「どこに行くの?」
マリーちゃんはまるで当たり前のことを言っているかのように
「城です。」
と答えた。え、城!?王様のいるところ!?
「わ、わかった。」
先に聞いておいて良かった。城に行くなら、ある程度は着飾っておかないと、貴族としてのメンツが……ああ、私はもう貴族じゃないんだっけ。
「カトレアさんのドレスを出しましょうか?」
「お願いします。じゃあ、着替えてくるからちょっと待っててくれる?」
マリーちゃんの方を振り返って笑うと、マリーちゃんはこくんとうなずいた。