表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/26

路地の女の子

 次は食べ物が見たいな、と思いつつ、お金がないのでそんなことも言えないな、などと考えながら男の子の並んで歩く。けれど、まだ数歩しか歩いていないのに、男の子はピタリと足を止めた。

「……お姉ちゃん。」

その顔は、真剣な表情をしていた。何かを見つけたのだろうか?

「……血の匂いがする。かすかだけれど。」

人間より、獣人より遥かに強い五感を持つ人狼。その嗅覚は、水のかすかな違いも嗅ぎ分けられるほどだという。

「行こう!」

そう言って男の子が私に手を差し出した。私は頷いてその手を取った。


 はあ、はあ、と息を荒げながら走る。男の子は、一切苦しそうではなかった。これが種族の差か……。けれど、いまはそんなことを言っている場合ではない。誰かが怪我をしているかもしれないのだ。五十路で向かわないと。

「匂いが濃くなってきた。」

近づいている、と、男の子は言った。あまり重症だと私の回復魔法では治せないかもしれないから、そこまで重い怪我じゃないと良いんだけど……。

「ここだ!」

男の子が指さしたのは、細い路地だった。よく見ると、奥に女の子が倒れている。

「大丈夫!?」

急いで駆け寄る。どうやら意識はあるようだ。女の子は起き上がって、

「こないで!」

と叫んだ。その手には、小さなナイフが握られていた。

あれは、警戒している目だ。怯えている目だ。……何か、あったんだ。

「大丈夫よ。危害を加えるつもりはないわ。」

心からの笑顔で笑いながらそういうと、どうやらその女の子は信じてくれたようで、安心したのかパタリと倒れてしまった。

「えっ。だ、大丈夫?」

ゼラ、あの子は?

「気絶しただけ。怪我も、転んですりむいただけみたいだよ。」

ゼラは冷静に事態を分析し、そう教えてくれた。

「気絶してるだけみたいだよ。私は、怪我を治しちゃうから、そこで待っててくれる?」

男の子は真剣な顔のまま頷いて、一歩後ろへ引いた。私の邪魔にならないようにしてくれているのだろう。

「怪我をしているのは膝。治してあげて。」

女の子を仰向けに寝かせ、膝に目を向けると、右膝をすりむいていた。

治れ。

心の中で一言そう念じると、膝の怪我は淡い光とともに消えていった。

「この子、どうしようか?」

どこかに運んでやりたい。けれど、どこが良いだろうか?

「いまなら転移魔法が使えるよ。」

て、転移魔法?

「そ。聞いたことないかな?」

聞いたことはある。けれど、かなりレアな魔法で、人間国でも数人しか使い手がいなかった貴重な魔法だ。

「いまはレベル1だから、いったことのあるところにだけ転移できるはずだよ。」

本当に使って良いのだろうか?人狼の、この男の子の子のは信頼しているつもりだが、他の誰かに見られていないとは限らない。転移魔法の使い手は貴重。つまり、狙われやすいのだ。

「僕が家まで運んで行こうか?僕にも、そのくらいの力はあるよ。」

ここは、やはりこの子に任せるべきだろう。少し目立つかもしれないが、仕方ない。私の力では、彼女を運んでやれない。

「お願いね。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ