白のネックレス
男の子が真っ先に駆け寄ったのは、アクセサリーの売っている屋台だった。
「どれが似合うかな?」
お母さんにアクセサリーを探しているのだろうか?それなら、私がお金を出してやりたいところだが、残念なことに今私はお金を持っていない。つけていたアクセサリーなどを売れば、少しはお金になるだろうか?
でも、これは家族からもらったものだし、あんまり売りたくないなあ……。
「これだっ。」
男のが指したのは、白い花を模したネックレスだった。
「わあ。きれいだね。」
確かに、この子の母親なら白色も似合うだろう。
「これください!」
男の子は元気よく店主のおばあさんにそのネックレスを差し出した。
男の子はポケットからお金を取り出し、ぴったりの額を払った。
きれいに包装されたネックレスを嬉しそうに手にとり、男の子は笑った。
お母さんのことが大好きなんだろうなあ。
「はいっ。お姉ちゃん!」
私の前にずいっとネックレスの入った袋が差し出される。
「えっ。」
お母さんに渡すんじゃ……?
「お姉ちゃんのために買ったんだよ?」
男の子はそう言って先ほどの青年のように首を傾げた。その姿は可愛らしく見られたが、私は少し驚いていた。
私にくれるとは、思っていなかったのだ。
「お姉ちゃんに、お礼なの!」
男の子は私の手を取り、そっとそのネックレスを握らせた。
「お母さんを助けてくれた、お礼。」
男の子は、優しく笑った。
「ありがとう、の、気持ちなの。」
困っている人を助けるのは当たり前のことだと思っていた。だから、こんなに感謝されるだなんて思っても見なかった。でも。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
ああ、感謝されるってこんなに気持ちの良いことなのか。王子にアイを取られてから、アイに王子を取られてから、こんな気持ち、感じていなかった気がする。あの時は、憎しみに心を奪われて……。
「お姉ちゃんには、きっと白が似合うよねー。……お姉ちゃん?」
でも、今は違う。いまは、大丈夫。
私は自分を安心させるようにそう心の中で私に言い聞かせると、
「ありがとう。」
と言って微笑んだ。大切にしよう。私はネックレスをポケットにしまった。
昨日着ていたドレスにポケットはないが、この人狼の母親に借りた服にはポケットがあったので助かった。
「じゃあ、次、どこ行こうか?」
「そうだなあ……。お姉ちゃんはどこに行きたい?」