町の入り口
男の子とお喋りをしながら町に向かう。と言っても、私は道がわからないので男の子の後についていくだけだ。男の子たち人狼の家は、森の中にポツンとある感じだったので、私はまだ獣人を見ていない。どんな人たちなのだろうか?楽しみだなあ……。
「あ、町が見えてきたよ!」
男の子の指差す方を見る。初めての獣人国……!
「はやくい……こ……。どうしたの?それ。」
男の子の頭の上には、ちょこんと獣のような耳が乗っていた。尻尾も生えている。
「獣人国では、この格好じゃないと目立つからね。いつもはこの格好。半分だけ変身、とかもできるから……。」
どうやら人狼は狼の人間の間だったら好きなように変身できるらしい。獣の耳をつけた男の子。なんか可愛いなあ……。
「お姉ちゃんはそのままでいいよ。ここは小さな町だから、そこまで詳しく検査もされないと思うし。」
え、それって大丈夫?悪い人は入りまくりなんじゃ……。……ああ、でも、あれがあるのか。
この世界の国には、それぞれ魔道具による結界が張られていて、国はその結界により守られている。犯罪を犯そうとしている人を結界からはじき出すのだ。だから、この世界では犯罪はほとんど起きていない。
前の世界、地球じゃあこんなのなかったから、混乱するなあ……。
「こんにちはー。」
街の周りには柵が巡らされていて、その柵が途切れたところには2人の兵隊が立っていた。
「こんにちは。隣の女性は誰だい?」
鎧を着た青年は首を傾げながら男の子に尋ねた。
「僕のお母さん、ううん、僕たちを助けてくれたお姉ちゃんだよ!カトレアお姉ちゃんっていうんだ!」
青年は
「そうか。よかったねえ。」
と言って笑うと、私たちを通してくれた。振り返ると、2人はにっこり笑いながら手を振ってくれた。私も笑いながら手を振り返す。
「行こっ!」
男の子に手を引っ張られ、街の中に入っていく。
町には、たくさんの獣人がいた。その姿は、昔授業で習った通り、私の手を引っ張る男の子そっくりだ。頭に獣のような耳があり、尻尾も生えている。
はあ、もふもふしたいなあ……。
「お姉ちゃん。あっち、見に行こっ!」
男の子が屋台の並んでいる通りを指差す。
「うん。いいよ。」
せっかくの楽しいお出かけだ。遠慮せず、楽しまなきゃ!