あく、やく、令嬢……!?①
グイッと腕を掴まれ、拘束される。
「何をなさるのですか!?」
必死に抵抗するも、私を拘束している私の弟の力には敵わない。弟といえど、この子は男なのだから。私の非力な女の力では到底敵いもしなかった。
「離してくださる?」
弟の顔を見て、ギョッとした。弟の目は、今まで見たことがないくらい怒りに燃えていたのだから。
「……こんな状況ではまともに話もできませんわ。」
私がそういうと、私の弟はやっと私の腕を離した。
「さて、いったい何事ですの?」
私の真正面には、この国の王子、私の婚約者が私の妹、アイを庇うようにして立っていた。私とアイに血のつながりはなく、アイは私の両親の養子だ。本当に可愛くていい子で、私はいつもアイに引っ付いていた。
「何をいう!お前がアイをいじめたからだろう!」
王子が私に向かって大きな声でそう言った。
ポカーンと開いた口を閉じることができない。いったい何を言っているのだ?この王子は?私が意地悪をしていたのはアイではないわよ?むしろ。
「私はどれだけ何をされようが構わない。」
そう、私が意地悪をしていたのは王子とのほうだ。
「アイに手を出すのは許さない!」
なのに、私がいつアイに意地悪をしたと?私はアイのことが大切でたまらないのに。……ああ、でも、たしかに愛に厳しくしたことはあったかもしれない。でもそれは、アイが大切だったから。社交界で生きていくために、必要なものを身につけて欲しかった。アイが困らないように……。
「アイのためですわ!アイにいろんなことを身につけて欲しくて、少し厳しくしてしまいましたの……。」
アイとの最近の交流を思い出す。ああ、たしかにこれは厳しすぎたかもしれない。
「た、たとえそうだとしても、王子への不敬罪が残っているぞ!」
それは……。言い訳は私のプライドに誓ってしたくない。でも、こんな理由恥ずかしすぎて……。
「そ、それは……アイと王子が悪う御座います。」
そっぽを向きながら小さな声で呟く。……聞こえてしまっただろうか?
「なぜ私とアイが悪いと!?」
王子が激怒し、私に殴りかかろうとしてくる。それを止めたのは、この怒りに満ちた雰囲気に怯えていたアイだった。
「やめてください。たしかに、私と王子が悪かったと思います!」
どうやら、アイには私がそう言った理由がわかったらしい。