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人外(人)生は荷が重い  作者: 和日太
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悪魔が増えました。

この部分はあまり大きくは変えてません。

「じゃ。とりあえず、もう一度魔力の扱いを練習してみろ」

「え?なんで??」


 召喚には魔力操作が必要、とのことできんちゃんは力の使い方を教えようとするのだが……


「……何故感じることさえできない?自分の身体の中に流れているんだぞ??

 それも、溢れるほど!!」

「……すみません……」


 私の影が頭を抱えてうんうん唸っている。

 私自身は既に諦めているので、完全に他人事としてその様子を見守っていた。


 ……だって、自分の中に流れてる血液とか、感じながら普通生きてないじゃん。


 力の存在すら分からない私に、きんちゃんはついに諦めたらしい。

 身体の主導権を交代し、才能のない私はまたまた影に入り、召喚が行われることになった。


 私の姿をしたきんちゃんが手をかざすと、焼き印をするように床がこげ、円型模様が現れる。


 ――ひぃい!!フローリングがぁ~!!!


 ムンクよろしく叫ぶ。ちなみに影の形はきんちゃんの動きに従っている。こんなとこにも才能の差が現れるんだね…


「ダンタリアン、ちょっと来れるか?」


 友達にいま暇?って聞くときと同じテンションできんちゃんが呼び掛ける。…召喚ってこんな軽いもんなの?…

 そしてその円陣から、二人目の悪魔が現れた。


「はい。このダンタリアン、貴方様のお呼びとあらば何処にでも馳せ参じます!」


 ――水蒸気だ。

 炊飯器からもうすぐご飯炊けるよ~って頃に勢いよくでてる時のあの水蒸気にしか見えない。え、悪魔って水蒸気なの?そりゃこれじゃあ依代でもなきゃ何もできないよね…すごい納得した。


「おう、呼びつけてすまんな。こんな格好してるが、さすがだな。すぐ我だとわかったようだな」


「もちろんです、貧相な人間の器に御身を落とされても尚、貴方様の荘厳さは隠しきれませんから。」


 水蒸気、じゃなくダンタリアンは、紫がかっていた色合いをほんのりピンクにいろづかせている。


 あ、そういうキャラなわけですね。鬱陶しいといわれるわけだ。

 ダンタリアンは、興奮気味に一気にまくしたてた。


「ついに、契約されたのですね!

 あまりに長く契約せず魂を摂取されておられなかったので、僭越ながら心配しておりましたが、心から安堵致しました!

 このまま消滅されるおつもりなのだ、という不届きな噂をする輩もいたのです!後程、制裁を加えてやらねばなりませんね。

 それで、この度のご用命はこの娘の魂の良質化でしょうか?…確かにあまり質のいいものではなさそうですね…

 ご安心ください!必ずやご満足頂けるものに改良した魂を、貴方様に献上してみせます!!」

「うおぉい?!」


 話が違う!!


「あー、ちょっとお主ら落ち着け…」


 きんちゃんは面倒そうにため息をついてから、まず身体を私に返してくれる。


「きんちゃん!契約は嘘じゃないよねっ?!」


 半べそかきながら自分の影に向かう。

 多少の認識の相違はあるかも、と思っていたが、これは相違どころではないっ!!


「…娘、口を慎みなさい。大体その呼び方は何なのですか、…羨ましい…」

「そっちこそ黙っててもらえます??今きんちゃんと話してるので!」


 水蒸気にじろり、と睨み付けられた気がしたがどってことない。だって水蒸気だもん。


「金烏さま、何故この者に依代を使わせていらっしゃるのでしょう?…あぁ躾をご希望ですか?」


 影にはいったきんちゃんは表情は分からないが、横になって耳をほじるような影の動きから、だいぶ面倒くさそうだ。

 というか人の影でおっさんみたいなこと止めて欲しい。


「あー、あのな、ダンタリアン。さっき言ってた噂な、それ、マジなやつ。」


 ……は?と一言発して、ダンタリアンは停止した。さっきまでシューっと、音をだしながら水蒸気がでてた感じだが、今は写真に撮った動かない水蒸気だ。


「この娘と契約したのは、死に場と決めた場所に行くためだ。

 そのために面倒事を極力避けられるよう、お前に人心操作を頼もうと思って呼んだのだ。ちなみに我の消滅後はこの娘に自由を約束している。」


 その言葉を聞いた途端、水蒸気はぐらぐら煮え立つ、空焚きになる直前のヤカンみたいに激しくなる。


「そ、そのような事、仰らないでくださいっっ!!我が喜びは貴方様のお役に立つことなのです…消滅など、考えられないっっ…

 私は貴方様のためならばどんなものでも用意して見せましょう!!どうか、どうかお考え直しを…っっ!」


 悲痛な声で懇願している。なにが彼(?)をここまでさせているんだろう


 …あぁ、でも…今さらだけど、ホントにきんちゃんは死ぬためにここに来たんだと、改めて気付く。きんちゃんには、どういう訳があるんだろう……

 まぁ、心変わりされたら困るのは私だけども。


 私が1人悶々している中、きんちゃんは鬱陶しくなってきたようで、


「我の命は我が好きにする。お前の意見は聞かん。

 納得できんなら帰っていい。お前に頼まんでもなんとでもなる。」


 突き放すように言う。

 あ、可哀想かも…いや、私的にはつっぱねてもらって助かったけど…


 ダンタリアンは、黙ったままだ。

 きんちゃんが私に円陣を消すように言う


 。…ん?焦げ付いた模様どう消すの?

 と、人知れずとまどっているとダンタリアンが重い口調で口をひらいた。


「……それは、貴方様の願いなのでしょうか?」

 泣きそうな声だった。

「そうだ。」

 きんちゃんは、絶対に揺るがない意思を感じさせる、力強い声で答える。


 ダンタリアンはそれで諦めたようだ。


「…わかりました、では、私も共に同行させてください。貴方様の最期の瞬間まで共にいることをお許しください。それを契約とし、貴方様と貴方様の契約者をお守りします。」


 こうしてダンタリアンが仲間に加わった。


 彼の能力はさすがで、記憶はもちろん、SNSにあげられていた高速飛行物体の写真など一切の情報も消去されていた。

 心臓が飛び出るかも、と思うほど緊張しながら愛に電話をしたが、彼女の反応も拍子抜けするほどいつも通りだった。

 あの事故に関することは、完全に記憶から無くなっているらしい。

 あの時の、狂わんばかりに泣き叫んでいた姿など、微塵もない。


 良かった………


 ダンタリアンは、第一印象最っ悪だが、彼の働きに関しては称賛するしかなさそうだ。



  ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇




 ゆっくり進む各停電車の旅もいいものだ。

 真夏よりも少し優しい色合いの青い空、まだ穂がでてきたものの、まだ青みの強い稲が広がる田園風景を眺めていると、喧騒を忘れ穏やかな気持ちに……


「ふむぅ、こいつはいまいちノロマでつまらんな~、始めに乗った鳥の嘴みたいな箱のほうが速いしかっこ良かったぞ…」


 私の影が勝手ににょろにょろ動いて吊手をつついてみたり、喋ったりしている。不思議。

 とりあえず他に人のいない車両で良かった。


金烏(きんう)さまが退屈されています。瑞希さま、何か芸などお見せしてくださいますか。」


 疑問文なのに何故か命令文に聞こえる台詞で無茶ぶりしてくるやたら美形な人もいる。


 今、私は契約を果たすためきんちゃんの目的地にむかっている。電車なのはきんちゃんの高速移動がこりごりなのと、以外にも目的地が公共機関で6時間ほどで行ける場所だったからだ。


 きんちゃんの目的地は、山陰地方にある、かなり奥深い山の中らしい。

 新幹線、急行電車、普通電車と乗り換えながら約四時間。いよいよこれから目的地の最寄り駅に向かう電車が出ている駅へ向かう。


 ……それにしても。

 昨日の一連の関係する人達の記憶操作をしてもらっておいて本当に良かった、と改めて思う。


 何故なら、私達は目立ちまくっていた。


 正確にいうとダンタリアンが人目を集めまくっていた。


 まぁ、水蒸気の時から薄々そんな感じだろうと思っていたが、依代を得て行動を共にするため人の姿となった彼は、精巧な造り物のように美しく化けた。


 緩くウェーブがかかった薄いクリーム色の髪は肩口まであり、白い陶磁器のような顔の輪郭を華やかに彩っている。長い睫毛に縁取られた瞳は透けるような紫色。身長は190センチ近くあるだろうが、威圧感はなく、中性的な美貌が美しい青年。


 老若男女問わず、周囲の人間を根こそぎ魅了しながらここまできた。記憶操作がなかったら、こいつと一歩歩いた時点で各方面に見つかって今頃実験室にでも監禁されていたかもしれない。


 ……あ、でもこいつが居なきゃここまで目立たなかったな……

 ……うん、まぁ考えないでおこう。


 周囲の人間の羨望の眼差しが、外見詐欺悪魔、ダンタリアンの隣にいる私につきささる。

 …全然嬉しくないんだけどね…だいたい男の人の長髪ウェーブは私の好みじゃないし。

 そもそもこいつは、本来水蒸気だし。依代だってなに使ってるかってガーベラなのだ。うちの花瓶に活けてた花。


 きんちゃんが依代に卒倒中の私の家族を勧めたときは怒ったものだったけど、


「せっかくのご提案に大変心苦しいのですが、私の依代は美しいものでないと馴染みません。

 その三名は、いささか貧相ですね……」


 そう言ってこのナルシスト悪魔は花瓶に活けていたガーベラを選んだのだった。安心したような、侮辱されたような

 ……うん、まぁこれも考えないでおこう。


 きんちゃんは、きんちゃんで、人間の世界に来たのは久しぶりらしく、移動中ずっと近代的な建物や乗り物、スマホといった道具など、全てに興味津々であちこち影を伸ばすので気が気でない。


 気を張りすぎて正直つかれた……癒しが欲しい……

 ポケットに忍ばせた非常用糖分、ひと口チョコに手を伸ばしたその時、私は前方にあった無視などできないモノに気づいてしまった。

間かあいてしまいました。

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