序章
これは人類が進歩しすぎた未来の話。
人類は順調に文明を進め、生活圏は地球だけでなく宇宙にまで進出した。
未だに地球外生命体は確認出来ていないが、太陽系を突破した居住型宇宙航行船も存在している。
増加しすぎた人口の対策として、まだ見ぬ未知への探求として、それらは宇宙の彼方へと旅立った。
地球での暮らしも大幅に変わった。ビル群はさらに背を伸ばし、成層圏を突き抜けたものなど珍しくもない。軌道エレベーターなんてものは空想のものではなくなった。旧国際宇宙ステーションから見られる地球は、数百年前のとは比べ物にならないほど歪なものだ。
これも何もかもアークライトと呼ばれる新エネルギーの発見によるものだった。
このエネルギーの出現により、石油や石炭果ては原子力エネルギーなども時代遅れの産物となった。
人々の暮らしは豊かになった。貧困などというものはなく、隣人同士のいざこざこそは無くなりはしなかったが、戦争や紛争などといった抗争は見られなくなった。人々はなんの疑いもなく、この豊かで平和な世界を謳歌している。
人類はそれでもなお進化し続ける。毎年のように新たな技術が生まれる。行き過ぎた進化は身を滅ぼす。星が最後に爆発するのもそのためだ。
星(超新星爆発を起こすのは太陽より10倍ちかく大きい恒星)は自らの重力で崩壊(重力崩壊)することを防ぐために中心部で核融合反応を起こし続けている。とても簡単に言ってしまえばその均衡が崩れた結果、超新星爆発が起こるのだ。自らの力によって。
すべての事象は永遠には続かない。すべての事象には必ず終わりがある。そしてその終の直前にはその事象の頂点が存在する。
人類の歴史はこのまま永遠と続くのだろうか。
それとも、行き過ぎた進化によって、自らを滅ぼすのか。
因果に囚われ、収束を受けたものは確実に滅びる。
それに抗うということは神に反旗を翻すということだ。
人類の進化は神にとって抑圧するべきものなのだろうか、
神の意志と人間の進化。
これは果たして本当に一致しているのだろうか。
これは長い人類の歴史のほんの一瞬の物語。