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マレビト:Rainmaker  作者: 楠田りた
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姫君の苦悩と日常

普段はなるべく自分の姿を鏡で見ないようにしている。

お風呂に入るときでさえ鏡から目を逸らすようにするが、そうはいっても清潔に保つには全く見ないわけにはいかずそのたびに苦痛を味わう。


楽しいはずの『るいるいタイム』のときもメイクするために嫌でも自分の顔をまじまじと見ざるを得なくて、その度に現実に直面して絶望を覚える。


「可愛くない……」


ANNA SUIの手鏡でフルメイクをした自分の顔をみて溜息をつく。

学校の女子やサッカー部の仲間からはかっこいいと称される切れ長の目も、女の子として生まれるはずだった自分にはあまりにも違和感がある。

インターネットで調べた方法で切れ長の目を女の子らしくするメイクを施す練習はしているものの、その仕上がりが正解なのかもよくわからない。

どんなにメイクを頑張ってもそれで可愛くなれているのか、それで女の子になれているのかさっぱりわからない。

それでもやらないことには自分を保てない。

こんなときに女友達やお姉さんがいて気軽に相談できたらよかったのに……男子に生まれるというだけでそうはいかない。

兄はいるがまさかメイクのことを相談するわけにもいかない。


鼻筋はすっきりしてるからいいし、唇も少し肉厚でぽってりとしていて赤みを帯びてツンとしていて女の子っぽくて悪くはない。

だが、切れ長の目だけは普通に女子として生まれた子たちへの羨望もあるからかどんどん鋭くなってしまっている気さえする。

そういえば、試合のときめちゃくちゃ鬼気迫る目つきでやばかったなんて言われたっけ……。


性同一性障害などのセクシュアルマイノリティやトランスジェンダーを扱う漫画や小説も読んではみたが、何故揃いも揃って女装してもそれなりになる可愛い顔した美少年ばかりなのか。

現実はそんな甘くないんだよ!!と苛ついて床に投げつけていた。

自分も女子から告白というものを何度かされたことはあるから決して顔が悪いわけではないらしいが、自分の認識との乖離がひど過ぎて自分の容姿を客観視することが出来ない。


……あぁダメだ。またヘコんできた……お風呂ゆっくり浸かろう。


ラベンダーのアロマオイルを垂らした湯船に浸かりなんとか気持ちを整えて眠りにつき翌朝を迎えて、いつもと同じくしっくりとくることはなくても表面上は至って普通な日々が始まる。


近所のいつもの曲がり角で莉仁と落ち合って駅まで歩き電車に乗り、駅で灯夜と落ち合い学校へ向かう。


その途中に事件は起きた。

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