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認識の外側  作者: 御餅
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序章 見えざる者たち

よろしくお願いします。

突然だけどこんにちわ!

俺は今、まだ明るい夕方の学校の廊下を全力で走っています。

俺の名前は霧岡 悠兵。17さい、つまり高校2年生だ。みんなからは「ユウヘー」とか呼ばれたりする。少し不良っぽい顔をしてはいるが、高校1年生の時に少しやんちゃだっただけで今では健全などこにでもいる一般生徒である。

話は戻るがなぜ、こんな健全な一般生徒である俺が学校の廊下を全力で走っているかというと・・。


「もう堪忍したらどうだ。ユウヘー!!」

「うるせー!お前のは補習じゃなくて拷問っていうんだよ!」

そう、逃げ回っているのは補習を受けさせようとしている同じ学校の制服を着た女子である。

名前は、逢坂 結衣。藍色の腰まで届きそうな長い髪と整った顔立ち、あとはその少し活発的なところが印象的な女の子だった。

まぁもう少しスタイルが良ければね、尚良かった。


「今、すんごおおおく失礼なこと考えてなかった!?」

「お、お前テレパシーでも使えんの!?」

「つまり考えてたということか・・補習覚えてろよ・・。」

そう言って不敵な笑みを浮かべる逢坂。

怖いです。凄く怖い・・。

ところでなんだかんだ言ってるが、俺たちは全力で走ってるわけだ。少なくとも俺は。もう2階と3階を何往復したか分からない・・。なのに彼女は息も切らさずに追いついてくる。俺が決して遅い訳では無く、彼女の家が武術に携わるんだったかな、確か。それで小さい頃から厳しい鍛練に勤しんだ結果だろう。

それは置いといて、そもそも学校から出て帰宅してしまえばいい訳だがそうも行かない。カバンを教室に置きっ放しなのだ。あの中には今晩の夕餉のためのお金や携帯電話なんかも入れっぱなし。それに今日は金曜日、何が何でも回収しなくてはいけない・・。

教室は3階の隅の方にある、つまり道中にある訳だ。しかし一度教室に入ってしまえば、逢坂に捕まるのは火を見るよりも明らか。どうしたもんかと考えていると。


「どうした、ユウヘー!教室には寄らないのか?」


筒抜けだった!!

どうする、どうする俺!

ちらっと俺の在籍する2年2組教室を覗く。すると2つのカバンと風に揺れるカーテンが目に入った。普段の時に見たのなら、絵になるなぁと考え耽っていたが、そろそろ限界だ・・足が限界に来ている。次がラストチャンスになるだろうきっと。そう考えているうちに2階も終わり3階に登ろうという時だ。ふとある考えが浮かんだ。


「これに賭けるしかない・・。」


そう言って俺は自分の教室に飛び込む。


「観念したか、ユウヘー。さぁ楽しい補習の時間だよ。」


勝った という顔をしながら逢坂が教室に入って来た。が驚愕の顔に変わる。そして恐ろしいスピードで近づいて来る。きっと俺のやろうとした事が分かったのだろう。だが遅い!

俺は窓際にある自分の席にあるカバンを取ると、思いっきりカーテンを翻した。そして俺はそのまま窓から身を投げだした。決して自殺をしようとしたわけでは無く、これは計算の内。ここの下にはプールがあるのだ。

じゃあな逢坂!と思いながらちらっと顔だけ振り返る。窓の淵を踏むようにして飛んだため少しだけ落下に余裕があったおかげだ。

が、そこで見たのは窓の淵に到達している逢坂。そして手には愛用の木刀が。

そうか、ここはあいつの教室でもあった。きっと自分のところからその木刀を取り出して・・と思ったところで首の後ろ当たりに強烈な痛みを感じ、木刀だろうそれが襟に引っかかり落下が止まる。まぁ当然首が閉まるわけで、そこで一度意識が暗転した。


そこからは地獄だった。そしてどれだけ時間が経ったか、


「今日はこの辺にしておこうか。外も暗くなって来ちゃったしね。」

「いや、だいぶ前から暗くなっていたんですが・・。もう7時切ってるよ。」

「ユウヘーが全然勉強出来ないのが悪い。」

「いやいや、問題量がおかしいから絶対に。」


ふと机の脇を見ると見上げるほどのプリントの山があり、いや俺がんばったよ、うん。

そんな考えに耽っていると、いつの間にか帰る準備のできた逢坂が、


「ほら、早くしないと学校置いてくぞ!」

「あ、ちょっと待って。プリントどうするの?」

「ん?自分の席に置いておけば?」

「それもそうか、少し待ってくれ。」

「あいよー。」


俺も急いで身支度をして教室を出る。すると逢坂が待ちくたびれたように待っていた。2人並ぶように歩き始める。


「逢坂も大変だよな。」

「何が?」

「生徒会だよ生徒会、副会長だっけ。わざわざ俺なんかに付き合わせちゃって。」

「そう思うなら逃げないでよ。」

「この放課後の拷問・・もとい補習だけはちょっと・・。」


確かに罪悪感はあるのだ、俺のせいで逢坂の青春が潰れてるんじゃ無いかと。元はと言えば俺自身が原因な訳なんだし・・。


「拷問?何言ってんの?というかもうどれだけユウヘーの補習担当してると・・どの位だっけ?」

「忘れてるんかい。確か逢坂とは2月末辺りだから、もう3ヶ月近くになるのか。」

「そっかー、もうそんな経つんだ。って寒っ!?」


学校から出ると、もうすぐ夏とは思えないほど冷え込んでいた。俺は手をポケットに突っ込んでまた歩き出す。逢坂も真似でもするよにポケットに手を突っ込んで付いてくる。逢坂とは途中まで一緒なのだ。


「もうそんなに経つのか、ユウヘーも丸くなったね。」

「う、うるせーよ。」


チクショー・・自分でも分かる位の照れ隠しだ。


「否定はしねーよ。というか丸くさせたのはお前だろ!」

「確かにあの出会いは劇的だったね。懐かしいなぁ・・。」


そんな憂い顔を見て思う。やっぱり俺は逢坂の事が・・

と思ったところで、逢坂が立ち止まる。俺もつられて足を止める。

なんだ、どうしたんだ?

逢坂が見てる方向を見るが別段変わったことは無く、若干街灯が暗い位だ。しかし逢坂は先程よりも酷く焦っているように見える。


「ユウヘー、悪いけど急用を思い出した。ちゃんと復習しとくんだよ!じゃあまた来週。」

「お、おう。またな。」


逢坂は慌ただしくかけて行く。なんだったんだろう。もう一度、逢坂が見つめた方向を見るが何も異変はなかった。


「うーん考えても仕方ない。気分転換に走りますか!」


やっぱりスッキリしたい時は運動に限る。

俺は自宅まで走って帰ることにしたのだが、逢坂との追いかけっこが足に響き、途中で思いっきり転んだのは内緒である。


そんな彼を見ていた何かがいた。それは決して真面な人間には見えない。見えてはいけない。だがそれは確かにその何かは彼を認識した。そして・・


「・・・ミツ・・ケタ」


確かにそう言った。


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