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DRAGOON戦記  作者: 亡霊
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第5話

ヒュタント基地での爆発が確認される少し前、マサキの操るレイは新たに現れた三機のTWに追われながら戦場を駆けていた。

何とか反撃を行おうとはするが、その内の一機がカトラスでもあった為、思うように反撃を行えずにいた。

「くそ!しつこい!」

ロックオン警報が耳に入った瞬間には姿勢制御スラスターに火を入れ、機体を横滑りさせる。

次の瞬間にはカトラスから放たれた42mm SMG弾が抜けていく。

カトラスは前年に制式採用されたばかりの帝国軍の主力TWだ。

既に二線級になったシミターに代わり第一線で運用されている。

装甲こそシミターより僅かに良い程度ではあるが、それに併せて火力と機動性を強化してあり、旧式のレイでは分が悪い。

しかもシミターやレイの様な対航宙機を主眼にした設計と違い対TWを前提とした機体だ。

反応速度や瞬間加速力の違いは大きい。

パイロットの技量によってはレイでも対抗出来ない訳ではないが、それでも条件が五分であればの話だ。

只でさえ不利な状況下ではパイロットの技量が良くてもレイでは中々に厳しい物があった。

「このままじゃやられる!多少無理矢理でも反撃しないと!」

今までは被弾しない様に動かす様にしていたが、回避を優先する余り反撃らしい反撃も出来ていない。

そう思ったマサキは多少の被弾を覚悟の上で、機体を滑らせながら反転させる。

その隙を狙ってマサキを射線に捉えた一機のシミターが37mm SMGを向けてくるが、距離があった為に再び機体を横滑りさせてやり過ごすと、逃げ回るのは止めだ、と言わんばかりに回避直後にバーニアのスロットルを一気に開け機体を加速させる。

カトラスは先程までとは違ったマサキの動きに対応が遅れたのに対し、別のシミターが右側面から回り込んで向かってくる。

しかし、シミターの37mm SMGでは多少被弾しても簡単には落ちない。

先程マサキに撃墜されたシミターの様に撃ち込まれれば危ないが、そうでなければ撃墜されはしない。右側面のシミターが37mm SMGを撃ってくる。

だが、マサキは構わずに正面にいるシミターに更に速度を上げてレイを突撃させた。

それを追いかける様に右側面のシミターが射撃をしたまま此方を狙うが、撃ちすぎで弾切れを起こしたのか射撃が唐突に途絶えた。

チャンスとばかりにマサキはレイの右腕にある37mm SMGを正面のシミターへ向ける。

その間に回避行動を取り始めたシミターだったが、逃げた方向には90mm ACをマサキは向けていた。

誘導されたのだ。

弾速が遅いACではあるが、相手の動く先を狙えば十分に当てる事はできる。

難があるとすれば対艦装備な為、何処まで有効な打撃になるか分からないぐらいだ。

しかし、マサキは構わずに90mm ACを撃った。

回避行動を取り始めたばかりのシミターは、予想していなかった攻撃に機体の反転を即座に行うが、慣性が効いているのと出力の低いバーニアでは即座の反転は逆に機動の妨げになってしまう。

結果、マサキの放った90mm ACはシミターの右脇に命中し、そのまま後方に向けて突き抜けて行った。

そして、打ち抜かれたシミターの背後で遅延信管が起動し爆発する。

貫通した為に致命的なダメージとは言えないが90mm ACの砲弾により大きな破腔が出来ると共に機体の内部機構を破壊、しかも背後で炸裂した事により砲弾の破片を背面に浴び、シミターのメインバーニアは破壊されてしまった。

こうなると機動力を奪われた形になりシミターの戦闘能力は大幅に低下する事になる。

まだ攻撃する事は可能だが、流石に即座に移動を開始していたマサキに追随できなかった。

「まずは一機!」

そう言って気合いを入れながら機体状態を確認する。

やはり回避しきれなかったのだろう。

幾つか被弾を示す表示が映っている。

だが、致命的なダメージは受けていない為、戦闘には支障はない。

その時には漸くカトラスも戦闘に復帰していたが、味方のシミターの一機が大破させられた事に慎重になっていた。

また、弾倉交換の完了したシミターが再度此方に射線を向けてくるが、マサキもまた射線を向けていた。

双方の37mm SMGから放たれた砲火が交差し、互いの機体に向かう。

だが、横に動きながら放ったマサキと、正面に動きながら放った双方の射撃は互いの機体に坑を開ける事はなかった。

マサキは無駄に乱射せずにトリガーを戻すと残弾を確認しながら、機体を小刻みに動かし射線からずらす。

シミターもマサキの動きに合わせて機体の向きを変えながら向かってくる。

「あと一連射か」

レイの37mm SMGの弾倉内の残弾を把握したマサキは、弾倉交換をすべきか残された残弾で決めるかに悩む。

だが、戦闘に復帰したカトラスの存在をレーダーで確認したマサキは残弾で決める事にした。


これでダメなら終わるかな?


と思いながらも、マサキは機体を小刻みに動かしながら、シミターとの距離を詰める。

カトラスが背面に回り込もうとしていたが、小刻みに機動を変えるマサキに上手く背後を取れずにいた。

シミターにしても回避運動のパターンを読み切れずに攻撃を躊躇していた。

二対一である事もあり、マサキはオートでの回避運動は行っていない。

オートであれば意識しなくてもプログラムがパターンに沿った回避運動をしてくれるが、逆にパターン化された物は読まれ易く、読まれれば当然やられるからだ。

昔取った杵柄、と言わんばかりに宙間作業で身に付けた技術でマサキは何とか五分に戦っていた。だが、相手も距離を狭めて来ている中、悠長にもしていられない。

更に元々数の上では不利な戦況であるため、味方がどうなっているかも怖い。

最悪、生き残っても敵中に孤立、なんて言う事もありえる。

そうなれば文字通り袋叩きにされてしまうだろう。

「やるしかねぇ!」

そう叫ぶと回避行動から一転して機体の速力を上げる。

急な動きの変化にも慌てずに動くカトラスのパイロットだが、一方のシミターのパイロットは慌てたのだろう。

狙いも付いていない内から37mm SMGをばらまく様に打ち出してくる。

当然、その様なのは互いに戦闘機動している中では当たるはずもなく、あっという間に50発の弾倉を空にしてしまった。

そして、弾をばらまかれた事でマサキの後背を取ろうとしていたカトラスからしてみれば邪魔された形になり、味方の射撃に巻き込まれ無いように退避する羽目になった。

絶好の機会を得たマサキはレイをシミターに向けて突撃させる。

シミターも弾倉交換する暇などないと判断したのかヒートソードを引き抜く。

だが、マサキは接近戦をする気などなく、ヒートソードを引き抜くシミターに37mm SMGの残りを全弾撃ち込んだ。

シミターは回避も出来ずに胴体部を被弾し、被弾の反動で弾かれる様に仰け反る。

これで致命傷と思えなかったマサキは、弾倉交換をしながら90mm ACを追加で撃った。

レイの左腕が90mm ACである事から、弾倉交換は右腕一本で出来る様、右腰のあたりに予備弾倉が格納されていた。

これによりレイは弾倉交換が素早く出来るのだ。

反面、この部分に被弾した場合は誘爆がありえた。

しかし、現状ではこの速さが助かると言える。

仰け反ったシミターの腹部に90mm ACの砲弾が飛び込み、やはり貫通していく。

だが、今度はそこにあった動力源である核融合炉を粉砕して行った事で機体にスパークが走る。

とは言え、核融合炉を破壊されたから爆発、なんて事はない。核融合炉の核融合反応に必要なエネルギーが供給されなくなり、機能が停止するだけだ。

ただし、予備動力のバッテリーがある為に動けなくなる訳でもない。

それを見越してマサキは貫通した90mm AC砲弾の爆発に紛れてシミターの背面に新しい弾倉を入れた37mm SMGを撃ち込んだ。

撃ち込まれた37mm弾はシミターのバーニアを破壊し、内部の推進剤に引火する。

途端に極めて明るい大輪の花が発生する。

この爆発でカトラスはマサキのレイを見失ってしまうが、想像以上の爆発の衝撃にマサキのレイも月面に向けて押し出されてしまった。

こうなってはマサキも機体の姿勢を維持するのに必死で、自分が何処に向かっているのか、など二の次になってしまっていた。

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