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DRAGOON戦記  作者: 亡霊
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第4話

アルバーの乗艦タービュランスが戦線に差し掛かった時、既に状況は大きく変化していた。

帝国軍のTW隊による防戦により奇襲をかけた連合軍のTW隊は数の差の前に苦戦していたのだ。

そこに艦船からの援護が加わった状況にアルバーは苦い表情を見せる。

「味方部隊より救援要請が来ています!」

通信員からの連絡を受けた物の、予備戦力などあろうはずもないアルバーは応える事が出来ない。

せめて出来る事は後退を援護するためにタービュランスによる砲撃しかなかった。

「味方機に連絡、タービュランスの砲撃に巻き込まれない様注意しろ、また、砲撃に合わせて後退せよ、と」

これ以上の戦闘は犠牲を増やすだけになると判断したアルバーは、不十分な結果ではあるが撤退を決意した。

(思ったより戦力は少ないが、戦果もまた小さいか)

防衛線を引く帝国軍の数は想定よりも少ない為、包囲殲滅だけは免れていた。

しかし、それとて元から差がある以上は時間の問題だろう。

アルバーの指示に合わせてタービュランスの前部にある三基の連装荷電粒子砲がそれぞれの目標に照準を向ける。

それから放たれる光の奔流は強力な破壊力を持って射線上にあるもの全てを消し飛ばしてしまう。

だが、やはり装甲の厚い重巡洋艦ともなれば、大きな損傷を与える事は出来ても撃沈には至らない。

タービュランスから放たれた荷電粒子砲が右舷に突き刺さり、大きな爆炎をあげたものの、帝国軍の重巡洋艦は装甲を大破されはしたが健在だった。

「やはり火力を集中しなければならんか・・・」

分かっていた事ではあるが目の当たりにすると落胆してしまう。

艦艇の装甲は強度のみならず熱にも耐性がある。

無論限度はあるが、大きな艦体を持てば持つだけ装甲に厚みを持たせ、強度と熱に対する耐性を上げる事が可能なのだ。

超硬度排熱装甲と呼ばれる物だが、排熱器の関係から重量が大きく、艦艇にしか付けられない弱点もある。

また、排熱が追いつかない場合には分子構造が解け、熱の運動エネルギーと相まって被害を拡大させる性質もある。

その為、艦艇の内部保護として硬度に欠けるが軟性の高い装甲を併用しなければならない。

その結果、更に重量がかさんでしまう。

軽巡洋艦クラスであればそれ程の厚みを付与出来ない為に装甲を一撃で抜く事が出来るが、これが重巡洋艦ともなれば比較的厚みがあり、一撃で装甲を抜くのは難しい。

更に戦艦ともなれば殴り合いの様相になってしまう。

これがこの時代の戦闘艦艇の問題だった。

唯一これらを破壊可能な兵器は運動エネルギーと熱エネルギーを同時展開出来る無誘導高速弾、すなわち航宙魚雷と艦対艦ミサイルぐらいだ。

それらは弾頭に粒子展開能力を与えられており、着弾と同時に熱エネルギーを高速で装甲に叩き付け、同時に内部にある装甲貫徹部が装甲に運動エネルギーをぶつける構造になっている。

如何に強固な超硬度排熱装甲と言えども、両方同時のダメージには耐えきれない。

排熱が出来る前に弱った装甲に物理ダメージを与えられては持たないのだ。

とは言え、それら装備は弾数に限りがあるので主力兵装としては扱われていない。

かつて人類が地球上にしか存在しなかった時代に生まれた大艦巨砲主義が現代に蘇っていたのだ。


「主砲は撃ち続けろ!」

怯むことなくアルバーは主砲を撃たせる。

たしかに一撃とは行かなくても、重巡洋艦であれば火力で押し切れるからだ。

続けて撃ち込まれた荷電粒子砲により、重巡洋艦は耐えられずに内部から爆発を起こす。

装甲を貫通し内部に荷電粒子が飛び込んだのだ。

装甲さえ貫通してしまえば後は簡単に破壊できてしまう。

それが荷電粒子砲の強みだ。

魚雷やミサイルではこうも行かないだろう。

だが、それは撃沈した側、つまりタービュランスに取っても同様に言える事でもある。

振動が艦長席に座るアルバーを揺らす。

モニターを確認すると艦首左舷に荷電粒子砲を受けたのだ。

「・・・出てきたか」

思わず呻く。

荷電粒子砲を放てるのは機関出力の大きな艦、つまり戦艦だけなのだ。

左舷から艦首を向けて接近してくる帝国軍の戦艦、ウルベ級航宙戦艦がモニターに映っていた。

ウルベ級は帝国軍に置いては標準的な戦艦とされている。

大量建造を前提とした簡易設計により、通常よりコストを下げて生産できるのだ。

その分、一点物と呼ぶべき戦艦よりは性能的にはやや下がるが数でカバー出来るのは大きな強みになる。

ただし、ウルベ級はTWの運用を込められた設計でもあるため、装甲と言う面では標準的な戦艦の中でも薄い方だ。

しかし、火力は同等なのだ。

油断出来る相手ではない。

しかもタービュランスもガーナ級戦艦と言う連合宇宙軍では標準的な戦艦に過ぎない。

ただTW運用能力を持たない艦隊戦型戦艦である分、装甲で有利程度なのだ。

「左舷より戦艦1、いえその背後に更に1!二隻が向かって来ます!」

悲鳴にも似た報告にアルバーの背筋に冷たい物が流れる。

装甲でやや有利であっても火力と数で不利ならば、状況は此方の不利と言えた。

「これまでだ。TW隊に後退を指示させろ!本艦は味方の撤退を援護する!」

悲壮な決意を持ってアルバーは踏みとどまる決断を下した。

最早状況は敗走と言うべき状態になりつつあった。



だが、その中に置いて不可思議な事態が発生する。

突如として帝国軍艦隊の動きが鈍り、タービュランスに対する攻撃が弱まったのだ。

それが起きた要因に最初に気付いたのはレーダー員だった。

「ヒュタントにて複数の爆発を確認!誰かがヒュタントに突入しています!」

それは絶望的状況下に関わらずももたらされた。

アルバーも思わず我が耳を疑った程である。

だが、映し出された高解像度映像にははっきりとヒュタント基地で巻き起こる爆発を映し出していた。

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