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DRAGOON戦記  作者: 亡霊
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第3話

交戦が開始されてから程なくしてマサキも出撃していた。

味方はタービュランスを先頭に、周辺をレイで固めつつ、帝国軍の阻止線を食い破りつつあった。

警戒と防衛に展開していた帝国軍の駆逐艦、哨戒艦の何隻かが既に撃沈されている。

流石にタービュランスの主砲である荷電粒子砲の前では駆逐艦以下の艦艇は太刀打ちできない。

装甲など紙の様にうち貫かれてしまうのだ。

帝国軍の駆逐艦は対艦ミサイルで応戦しつつ、レールキャノンを撃ってくる物の、戦艦の装甲の前ではほとんど意味がない。

新たに帝国軍の標準的な軽巡洋艦カルナード級が現れるも、やはりまともに対抗出来る物ではない。

唯一対抗可能な手段として、航宙魚雷と言われる無誘導高速弾と呼ばれるロケット弾があるが、威力は戦艦にも効果があるものの、射程が短い。

そのため、速力を生かして肉薄しての使用になる。

とてもではないが数が居れば兎も角、混乱状態にある帝国軍が組織的な攻撃をするにはまだ時間が必要だ。

結果として戦力の逐次投入と言うべき状態になっており、まともに抵抗できる状態に無かった。

「よし、行ける!」

アルバーは状況が有利に運ぶ様子にそう思っていた。

だが、帝国軍とて無能ではない。

通常の阻止防衛線をあっさり破棄すると、基地に近い宙域まで阻止防衛線を後退させたのだ。

タービュランスやTW隊が到達するころには、防衛線の形成は終わってしまうだろう事は明白だ。

ここで撤収、と言うのが一番かもしれないが、与えられた作戦からすれば、今少し打撃を与えねばならなかった。

奇襲を行える、と言う事を帝国軍に知らしめるのも目的ではあるが、ここであっさり引いては帝国軍に「十分に阻止可能」と判断させてしまうかも知れない。

それでは前線の圧力が抑えられないのだ。

少しでも相手の戦力を削る事も目的である以上は、無理でも飛び込まざる得ない。

「TW隊を先行させよ」

アルバーは帝国軍の防衛線が完成させない様に指示をだす。

とは言え、それによってタービュランスの防衛はタービュランスに任される事になる。

極めて危険な判断だといえた。


アルバーの指示で先行する事になったTW隊は速力を生かして一気に形成途中の防衛線に食い付いていく。

無論、帝国軍もTWを出撃させて対抗しようとはしていたが、奇襲によりまだ十分な数を出せていない。

今なら有利に戦えるのだ。

とは言え、連合軍のレイの火力では高が知れている。

レイの火力ではTWや比較的装甲の薄い艦艇にしか対抗できない以上、出撃してくるTWを押さえるか、帝国軍艦艇の注意を引き付けるしか出来ない。

それでも、連合軍のTW隊はやけくそ気味ではあるが果敢に突入を開始した。

「完全に乱戦だな」

帝国軍の防衛線に突入したマサキは、周りの状況を見ながら呟いた。

正面のメインモニターが帝国軍の駆逐艦を映し、左右両側にあるサブモニターが敵味方のTWが入り混じっての戦いを映し出していた。

「取り敢えず、生き残るか!」

自分に気合いを入れて操縦桿を操り、機体を駆逐艦に向けて突進させる。

駆逐艦は此方の動きに気付いていた様で対空火器を盛んに打ち出してきていた。

「く・・・そ・・・!」

悪態を吐きながら飛んでくるミサイルを回避し、対空機銃の弾幕をかいくぐる。

肉薄すれば流石に撃って来れなくなるからだ。

危険ではあるが、上手く飛び込めた事もあり、駆逐艦の上に張り付いた。

そして、張り付くと即座に至近距離から左腕の90mm ACを3発撃ち込む。

宇宙では余り距離は威力に関係しないが、駆逐艦の装甲ならば十分に貫通するだけの威力は持っている。

それを駆逐艦の主砲であるレールキャノンの砲塔周辺に撃つと即座に離脱を開始した。

撃ち出された90mm砲弾は接触と同時に起爆しない。

遅延信管により、やや遅れて起爆するのだ。

これは、密閉された艦艇内部で起爆させる事でより大きな破壊を行う為だ。

これが対TWならば接触信管でなければならないが、元々対艦兵装なのだ。

遅延信管であるのは仕方ないだろう。

そして、その90mm砲弾は的確に動作し、その効果を発揮する。

撃ち込まれた三発の砲弾は立て続けに炸裂し、駆逐艦の内部で壊滅的な損害を発生させた。

主砲は吹き飛び、内部にあった弾薬も巻き込まれた事により艦首を中心に駆逐艦は爆発する。

元々小型な艦体な駆逐艦がそんな状態になれば大破で済めば良い方だろう。

だが、世の中良い方になるとは限らない。

駆逐艦はその破壊に耐えられずに機関を停止し、戦闘力を喪失してしまう。

つまり、撃沈されたのだ。

「まさか初陣で駆逐艦とはいえ一隻撃沈かよ」

自分が行った事とはいえ、予想以上の結果にマサキは戸惑う。

だが、直感が戸惑う時間を許さない。

瞬間的に操縦桿を動かし、バーニアを起動させてその場から動くと、先程までの場所に連続した光線が走った。

「上か!」

宇宙に上下も何も無いが、自分から見て上に当たる所から流れて来た光線から判断し、回避行動を取りながら機体を向ける。

そこには2機のシミターがマサキのレイに向けて砲火を放っていた。

シミターは土星統一帝国軍が木星との戦争に初めて投入したTWだ。

制式採用は太陽系暦465年ではあるが、やはり技術の発展著しい状況に、旧式化してしまっていた。

だが、レイも同時期の機体であるため性能的には大差ない。

ならば、後はパイロットの腕と数の差が物を言うことになる。

はっきり言って数も経験もマサキに取って不利でしかない。

それでも、マサキは自分の技術を直感を信じて機体を操り、相手の攻撃から機体を避け続ける。

二機のシミターの必死とも言うべき追撃から、マサキが沈めた駆逐艦が母艦だったのかも知れない。

だが、そんな事を思ってあげる余力などマサキにはない。

二機がマサキを挟み撃ちにしようと分かれた瞬間、マサキは反撃に転じた。

左右に動いたシミターの内、マサキから見て右にいる機体にレイの37mm SMGを撃ち込む。

相手も咄嗟に回避に動いたが僅かに間に合わずに連続して37mm弾をその身に受けてしまう。

装甲と言う面ではカトラス以下の機体であるシミターが、耐えられる訳がない。

あっという間に機体中を穴だらけにされたシミターは推進剤に引火し、大きな爆発を起こした。

「今度はこっち!」

マサキはシミターの撃墜を見ながらも止まらずに機体を滑らせながらもう一機のシミターに向けて動く。

母艦のみならず、僚機をも撃墜されたシミターのパイロットは逆上したのか、マサキの動きに合わせる様に突進してきた。

お互いが向き合い距離を詰める中、シミターは腰の後ろに固定されていたヒートソードを引き抜く。

マサキもレイに装備されているヒートダガーを展開させる。

互いに近接装備を選択したが、ここに来て僅かな差が明暗を分けた。シミターは先の木星との戦争での教訓から、間合いが広いヒートソードを腰に装備している。

ヒートソードは超高熱にも耐えられる合金製の刀身を荷電し、過熱させて装甲を焼き切る事が出来る。

対して、レイのヒートダガーは動作こそヒートソードと変わらないが、ダガーと言うだけあって短く、近接装備としては間合いで不利だ。

しかし、シミターが腰に装備しているのに対し、右腕に内蔵された形であるレイの方が展開が早いのだ。

間合いで負けて、更に可動域が限られるとはいえ、展開が早い分だけレイのヒートダガーは咄嗟の時には有利だった。

機体同士が正面から衝突した事により、激しい衝撃に襲われた物の、その僅かな差によりマサキは生き延びる事ができた。

レイのヒートダガーは、ヒートソードを振り上げた状態のシミターの胸部の装甲に突き刺さっていた。

コクピットがそこにあったのだ。

TWは正面、しかもコクピットなどの重要な部分には優先的に装甲が回されるのは常識だ。

だが、ヒートダガーは勢いもあったが、その装甲を易々と貫き通し、コクピット内部にまでその刃を潜り込ませていた。

間違いなくシミターのパイロットは助からない。

戦艦の装甲にも通用するヒート系の装備なのだ。

人間が耐えられる訳がない。

瞬時に焼かれて死んでしまう。

当然、シミター自体はまだ生きているが、中のパイロットが居なければ動きようがない。

ヒートソードを振り上げた姿勢のまま、シミターは動きを止めて漂うだけになった。

「はぁ、はぁ、はぁ」

息が上がるがそんな事はお構いなしに戦闘は続いている。

マサキはヒートダガーを引き抜くと同時に格納し、再び戦場の中に身を晒していった。

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