そして100年後に向けた戦いが始まる
娯楽本を渡したり、演劇を見せたりと交流が続いた。
なんか頭良さそうな奴らがバタバタしている。
俺達はしばし、まったりしようと娯楽を楽しんでは眠るを繰り返した。
すると陛下から呼び出しを受けた。
「私に献上した島が盗品だというのは本当か」
「いえ、違います。落ちていただけです」
陛下は頭が痛そうにする。
見かねたベルが告げる。
「陛下。想像してください。他国の美術館があります」
「うむ」
「その美術館は、みんなに愛されていて、多くの国民が親しんでいました。国民は自分の絵を寄贈する事もでき、その美術館を我が物として愛していました。財産全て寄贈する国民も出るほど、愛されていたのです」
「うむ」
理解しがたいが、文化的執着が強い国民性なんだろうと国王は頷く。
「それを、我が国の魔法使いが誤って美術館を召喚してしまいました。事故です」
「ふむ。禁術の召喚術を何故に間違って使うのか分かりかねるが、うむ」
召喚術は盗難か誘拐にしかならないので、どこの国でも基本アウトである。
魔物の召喚も、犯罪に使えるので基本的にアウトだ。
盗みがいけない事だというのと同じくらい常識である。
色々功績もあるとはいえ、縛首の刑罰が王の頭をよぎった。
「召喚した絵は、実体化する魔法の絵になっていました。事故です」
「ええ……? そのような事があるのか?」
あくまでも事故と言い張るベル。
国1番の魔法使いといえど、そんな魔法が使えるのかと戸惑う国王。
「一度魔法の絵になってしまったら、もう元へは戻りません。さて、魔法使いはその別物になった絵を他国へ返す必要性がありますかね?」
「いやいやいや。なおさら悪いではないか。要は盗んで使っちゃったからもうありませんと言いたいのか? 少なくとも賠償はすべきであろう。当然」
「返したいですか? 島。あの美しい島を?」
ベルは一生懸命説得しようとするが、国王はにべもなかった。
「確かに手元に置いておきたいほど素晴らしい島だが、盗品であろう。しかるべき賠償はすべきであろう。盗んだ物勝ちはまずい」
「何を綺麗事を」
「召喚術による犯罪は基本死罪だからな?」
「じゃあ建国します」
「召喚術を犯罪としない国家は危険すぎるのですぐに宣戦布告するが?」
当たり前の事である。
当然、庶民に至るまでガッチガチに召喚魔法対策はしているが。
国王はすぐに文官に合図した。
文官は頷いて、即座に召喚魔法に対する対策を教え、広める計画を立てる。
これができてない国との接触は危険すぎる。その国の国民が、だ。
いくら召喚術を法律で禁止しても、無敵の人というのは存在する。
少なくとも、王侯貴族要人子息の召喚対策はしてもらわないと困る。
「向こうの被害者との面談にはこちらの刑務官も立ち会う。……ところで」
国王は座った目で告げた。
「それほどの大魔法となれば、かなりの魔力を消費したであろうな」
「はっ」
「魔物の領域があまりにも静かだと報告が来ているが……。このような痛ましい犯罪は二度と起きない。そうであろうな?」
絶対零度のゴミを見る瞳に、俺とベルは黙って頭を下げた。
なんてこった。
被害者に謝罪と賠償をする事になってしまった。
日本の外交官、我が国の外交官、俺とベル君、ゲーム会社の社長の天津 矢織さんと問題の島のギルマスの原澤 葵くん、更に同じようなゲームを運営する社長達、傍聴席に周辺国の大使達、各国マスコミという、大変な会議になってしまった。
国交が樹立されてないので、裁判でなく会議という形なのだけが救いである。
無論味方はベル君だけである。
ピリッとした空気にプルプルと震える。
あからさまにやばいオタクっぽいギルマスらしき人間がやばい空気を出している。
絡まれたらどうしよう。
「まず、ゲームの概要と被害総額をご説明いたします」
通貨価値の説明から始まり、このプロジェクトが数100億掛けたプロジェクトであること、100周年記念の準備が自体沈静化の為に消費された事、数百人のスタッフがいる仕事が消えた事、一億人のゲームを愛するプレイヤーがいたこと、無論落ちているのではなく、大変大事に電脳空間に保存されていたがバックアップ含め全部消えた事、他にも同じ場所に多くのゲームがあり、ゲーム会社が心配している事を告げた。
「ゲームは俺の人生だった。頼む、俺の人生を返してくれ。お願いします」
その後、ギルマスが涙ながらにゲームへの愛を語り、100周年のイベントに備えて課金していた事、ゲームに費やした時間や財産、作り上げた芸術や仲間との絆を話していく。そして、度重なる侮辱と個人のものである財産の開示に尊厳を破壊されたことも涙ながらに付け加える。そうね。服の趣味とか性癖とかね。
外交官が、今回行われた召喚魔法について説明していく。
プレイヤーも下手すれば巻き込まれていた事、召喚術はいかなる場合であれ禁止されている事、責任持って対召喚術の対策方法を各国に無償で提供、その後格安で対策に必要なものを提供する事を伝える。
味方はベル君だけである。
「だがもうデータを戻せなどというのは無理だぞ、どうしろというんだ!」
俺が吠えると、外交官が俺の頭を掴んで机に叩きつけた。
「まずごめんなさいでしょう!」
「ごめんなさい……」
そして、外交官は言う。
「我が国は、このクズから財産を没収して、召喚対策の周知と国際召喚術対策組織の創設、御社への賠償を考えております」
「今回の事は一部の者の暴走と考え、当国は貴国の計らいに感謝し、国際召喚術対策組織への支援をしたいと考えております」
外交官達が言葉を交わす。
要は「ごめんやで」「ええんやで。国としては遺恨を持たないから仲良くしよ」という事である。
「当社としては、当社が中心となって皆でゲームを作って、その実体化をしていただく事で水に流したいと思います。幸い顧客データは残っているので、プレイヤーに対するそのゲームの優先参加券を認めていただければと。もちろん、貴方への参加も認めますので、貴方もトイレのある島が得られますよ」
なかなかいい提案だ。しかし。
「しかし……。もう魔王とか強大な魔獣とか、根こそぎ召喚術で消費しちゃったしなぁ。あと100年ぐらい無理だぞ」
「では技術の継承なりなんなりして、100年後にその実行をお願いします」
即断である。
「よかろう。魔法使いは寿命が長い。私本人がその魔法の行使をできると思う。100年後の電脳世界実体化の為のチケットをお配りしよう。ただし、繋がりを必要とする為、私がしばらくプレイヤーとして遊んでなくては無理だぞ」
「無料プレイチケットを、そうですね、お友達もいるでしょうから、十二人分と、課金チケットをお渡しします。ですが、100年後には今のプレイヤーは誰も生きてませんから、代わりに今、全プレイヤーにポーションを1ダースずつ、私たちゲーム会社のメンバーには残念会の為のゲーム料理でも配っていただければと」
「一億人に12本ずつということか!?」
「配るだけでも費用がやばいぞ……」
ざわざわざわ。
うーむ。とんでもない量だが、実際持ってるし、元々向こうのなんだよなぁ。
「当社としてはそれ以上を望みません。罰も、死罪になると賠償していただけなくなりますし。ただ、無断で罪を重ねるなどしなければ満足です」
仕方あるまい。
「一億人に1ダースか……。よかろう。だが、こちらが一億人に配るのは絶対無理だ。食料やポーションをしこたま積んだ島と船をそちらに渡すから、郵送はそちらがしてくれ。手数料迷惑料賠償その他諸々それで飲み込んでくれ。同じ物を祖国と日本に渡すので、皆もそれで許してくれ」
「ありがとうございます。ファーストコンタクトは不幸な出会いでしたが、これからいい関係を築いていきましょう」
マスコミが握手する写真を撮り、大使達は早速新たな友人を得ようと日本の外交官に群がっていく。
「どうやら、乗り切りましたね……」
「うむ。これで後は100年後の俺がなんとかしてくれる。よって遊び放題だ!」
こうして、話し合いは無事終わり、俺は公式の島をなんとか探し出し、そこに物資をしこたま乗せて配ったのだった。
さっさと済ませて日本円を手に入れて遊園地行きたい。




