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VS

俺はネット廃人である。


生活の全てのリソースをゲームに費やしてきた。

俺が働くのは、課金する為である。


俺が生まれた時から運営されていた神ゲー。

俺の原初の記憶は両親が仲良くゲームをしていたのをみていたこと。

俺という存在の始まりであり全て。それがエンジェリックオンラインだった。


そのゲームが。

幼き日より愛してきたゲームが。

親子二代でハマってきたゲームが。


ある日、いきなり消失した。


データも何もかも消滅したのだという。

予兆も何もなかった。いきなりの事故で原因も不明という。

俺はすっかり抜け殻になり、会社も休み、いつの間にかクビになった。


その全てが、どうでもいい。


その日もぼーっとしていたが、ギルメンのパルメンテが訪ねてきた。

ランダムで一個直す、という意味の名前らしい。職業はプログラマー。

なんだか仕事を任せるのが不安になってくるやつだ。名前通り、大雑把だが気のいい男。2人で遊んだゲームの記憶がよぎり、俺は布団をかぶって丸まった。

でも、パルメンテは布団を剥ごうとする。


「おい! ギルマス、大変だ!」

「はは、全てどうでもいい。どうでもいいんだ……」

「俺達のギルドが、ゲームデータが見つかったぞ!」

「は?」


 パルメンテがテレビを付ける。


『突如佐渡島の近くに現れた空飛ぶ島に、自衛隊と在日米軍が向かっています!』

『大変な事になりました! しかし、軍が出るのはどうなのでしょうか!?』

『あの島はいったい何なのでしょうか?』


そうして報道される島は。その島は。


「俺達の島!?」

「そうだ、俺達のギルドだ! あの看板の紋章! 間違いない!! 俺達の島がなんでかリアルにログインしてきてんだよ!!!」

「は? は??? はー!??? じゃあ何か? NPCの巫女っちちゃんもいるって事か!?」

「多分!」


 俺の世界は一気に色づいた。

 俺のもんなのだから、なんとか取り戻さなくてはならない。

 たとえ、何があろうともだ。


「残ってるSNSを使ってギルメンを招集する! あと運営に連絡だ!」

「おう! ドキドキしてきたな!!」


 そして、俺達は証拠写真と共にSNSにあれは俺の島ですと投稿。

 それはあっという間にバズっていくのだった。












 ギルド島で、軍人と対峙して。

 ダメ出しされた俺は、冷静に答えた。


「【日本語少ししか出来ないので誤解があるのかもしれない】」

「【誤解の余地はない。国内で勝手に建国は駄目】」


 めちゃくちゃキッパリ、ノーと言える日本人。おかしい。俺の時代と違うようだ。

 まあ、すぐ転生したとしてもあれから30年は経っているのだ。当然か。

 

「【日本語に自信がないので、日本語を学ぶ資料が欲しい】」

「【……いいだろう。それだけ話せれば十分な気がするが、資料を持ってこよう】」

「【漫画とアニメとライトノベルと映画とゲームのランキングを上から順にシリーズものは初めからで発電機とか媒体ごとくれ。あと、キャラメルポップコーンとポテトチップスの塩味を山ほどとコーラを業務用冷蔵庫いっぱいにくれ】」


 とりあえず、それだけ貰えば地球に移動してきた目的は達成したと言える。


「【お前、異世界転生者だったりする? アニメ見たいだけだろ】」

「【なんでそんな酷いこと言うの?】」


 会話をしていると、ベル君も少し日本語がわかるので、顔を輝かせた。


「えーと、お菓子と漫画要求してます? 僕も見たいです! 師匠の世界の食事、美味しいってきてたから楽しみだなぁ!」

「楽しみにしているといい。ここの娯楽は最高だからな!」

「【持ってきてはやるが、変な事するなよ。まじでするなよ!】」


 釘を刺されてしまった。

 ひとまず戻るか。トイレ行きたい。


 そーっと研究所に戻って、そーっとトイレを済ませて、そーっと忘れ物を持って、そーっと天空島に戻る。

 できるだけ目立たないようにしたつもりなのに、姪っ子と甥っ子がそこに滑り込んでいた。


「おじさま! ベル様! 2人だけ楽しもうったってそうはいかねーのです!」

「いかねーのです!」

「リリア。俺は忙しいのだ。あそこに見える島の島民の言葉をこれから勉強するのだ」

「そうですよ、リリア様。僕達は散々自慢された念願のほっぺたが落ちるお菓子を食べて楽しすぎて夢に見るアニメを見て楽しむのです。貴族位を返上した、なんの責任もない平民にしか出来ぬことです。良いですか? 貴族であるリリア様とロイ様には領民を守る尊い責務があるのだから、お家に戻って勉強するのです」

「責任を放棄した駄目な大人に説教されたくはねーのです!」

「ねーのです!」


 リリアとロイは暴れた。


「アニメ見たい見たい見たい!」

「ぐぬぬ。とはいえ、持ってくるのには時間も掛かろう。今日は一緒に冒険する事で満足しておけ」

「「ぼうけん!!」」


 そうして、俺達はギルド島を見て回った。

 全ての部屋をしっかりと見学である。ついでなので軍人達も連れて行ってあげた。

 雑然とした部屋もあれば、殺風景な部屋もあり、素晴らしい部屋も多くあった。


 リリアとロイは宿泊許可を得て侍従を引き連れ、吟味して一番良さそうな部屋を確保した。

 一通り見て回った俺はベル君とゲーム料理を試す事にした。

 ギルド倉庫から料理アイテムを取り出し、焚き火の前に並べていく。


「【レーションを分けるので食事を分けてください】」

「【構わんぞ。レーションめっちゃ興味ある】」

 

 ということで、わいわいと食事をする。

 その頃には、アニメの第一弾が来た。

 俺達はワクワクしながらセッティングされるのを待った。

 スイッチをオンにするところで軍人がストップ。


「【アニメ見せる代わりに、そっちの世界の娯楽をください】」

「なんて言っているの?」

「物々交換で本や演劇を見せて欲しいと言っている」

「まあ! 面白いわ。早速劇団に声をかけましょう」


 なんと演劇が見れる。これは得してしまったな。


 それから、アニメを見た。大盛り上がりだった。

 通訳させられたのには参ったが、セリフのないアニメも混ぜてあり、大いに楽しめた。これだよ、これこれ!


 結局、与えられた部屋ではなく、リビングで雑魚寝をしてしまった。


 翌朝。


「【君はこのギルド、最強青春歌劇団のギルメンだったのか?】」

「【なんだその名前。ださっ】」

「【じゃあ、何故この島を保有してるのかな? ギルマスを名乗る者が猛抗議しているよ】」

「【これは俺が拾った。俺のだ】」


 俺は知らなかった。全てが記録され、放映されていたことを。

 大手ゲームメーカーや、数十年のサービスを行うゲームに付き従う一億に届く数のプレイヤーと俺との間に、戦いのゴングがなった。


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