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サンドイッチ

音楽室の鍵が閉まった音が、まるで運命の錠のように響いた。

戸惑いと混乱の入り混じった表情をする陽を、後ろから澪が抱き留める。


「ごめんね……でも、もう我慢できなかったの」


澪はそっと、陽の首筋に顔を寄せ、鼻先を埋めるようにして囁く。


前からは詩帆が、音もなく近づいてくる。


「逃げないで……陽ちゃん」


その声は、まるで詩の一節のように静かで、しかし強い意志を孕んでいた。


「……で、でも」


陽は目を伏せたまま、声を震わせる。

澪の腕が、その細い腰に回された。


そして。


「ん……」


詩帆がそっと、陽の唇に触れた。

なぞるようにして、優しく、柔らかく。


「や……んん……」


抗うように首を振るも、背中から抱き締める澪が陽を離さない。


「次は、わたしね」


そう囁くと、今度は澪が陽の耳元に口づけを落とした。

そのまま顎へ、頬へ、そして。


「陽……」


唇を、重ねた。


サンドイッチのように左右から、前後から。

陽の逃げ場は、もうどこにもなかった。


「だめ……そんなに、いっぺんにされたら……」


陽の肩が小刻みに震える。

息が浅くなり、頬は火照っている。


「でも、やめられないよ……だって、こんなに可愛いんだもん」


澪の声は、少しだけ甘やかに変わっていた。


「陽ちゃんが、わたしたちのものになるまで……何度でも、教えるから」


詩帆の瞳もまた、熱を帯びている。


前から、後ろから。

頬に、額に、耳に、首筋に。

順番に、交互に、確かめるように――

まるでゆっくりと、心を溶かしていくように。


キスが、重ねられていく。


「や……やさしく、してって……言ったのに……」


陽は小さな声で、かすれるように訴える。

だがもう、脚の力が抜けかけていた。

背中に預ける澪の胸が、支えのようになり、前にいる詩帆の指先が、髪を撫でた。


「ごめんね、陽ちゃん。これが、優しさの限界」


「もう少しだけ……甘えさせて」


音楽室の外には、誰もいない。

カーテンが揺れるたび、春の光だけが、彼女たちをそっと見つめていた。



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