ダブル告白
「……ご、ごめん。邪魔、しちゃった?」
音楽室の扉が、きぃ、と軋んで開いた瞬間。
そこには星野 陽が、ほんのり頬を赤くして立ち尽くしていた。
「澪と詩帆ちゃんって、そういう関係だったんだね。私、知らなくて」
ぽつりと、笑うように。だけどその声は、どこか心細く揺れていた。
「そっかあ……なんか、ちょっとだけ、寂しいかも。でも」
陽は目を細め、首をかしげた。
「2人のこと、応援するね。お邪魔しないように、帰るから……」
そう言って、くるりと背を向けた瞬間。
「待って」
澪の声が鋭く空気を裂いた。
「え……?」
「ごめんね、陽ちゃん」
詩帆が、苦しそうに笑う。
「ほんとうは、わたしたち……」
「付き合ってなんか、ないの」
澪の声は震えていた。
「ずっと、陽のことが好きだった」
「でも陽は、いつも優しくて、鈍感で」
「何度好意を示しても、友達としか見てくれなくて」
「だから……自分たちで自分たちを慰めるしかなかったの」
二人が、陽に歩み寄る。
その距離が、じりじりと詰められていく。
「え、な、なに、二人とも何か怖いよ……?」
陽は思わず後ずさった。
「……陽ちゃんが、こういうの苦手なの、わかってるよ」
詩帆が囁くように言った。
「でも、これだけは、どうしても伝えたいの」
「好きって、言葉じゃ足りないから……」
「身体ごと、教えてあげる」
そして、ふたりは、左右から陽に寄り添い、そっと彼女の頬に手を添えた。
「まって……ほんとに、ほんとに……っ」
陽の瞳に、僅かな涙が浮かぶ。
「……けど」
「澪と詩帆ちゃんが、そんな辛そうな顔してるの、見るのも……やだ……」
小さな声で、陽がぽつりと呟く。
そして。
「……や、やさしく、して……」
二人の動きが、止まった。
そして、涙を拭う陽の頬へ。
澪が、詩帆が、そっと唇を重ねた。
それは焦がれるような情熱というよりも、
ずっと心にしまい込んできた気持ちが、ようやく形になった、そんな一瞬だった。




