仕事って楽しい!
「ヒュー!こいつ銀製の小手を装備してやがるぜ!大した腕もない癖に装備だけは一丁前だな」
「まぁそういうなよ。そういう奴が俺らの飯のタネになってくれるんだからよ」
「ちげえねぇ笑」
リックとその相棒であるカミラが雑談をしながら死んだ冒険者の装備を剥ぎ取っていく。
話しながらもその手際はベテランのもので、あっという間に冒険者は真っ裸になった。あとはダンジョン内のモンスターが骨まで食べてくれるだろう。
リックのパーティーに入ってから数か月。俺は立派なハイエナになっていた。
最初こそ同業の装備を剥ぎ取るなんて...と抵抗感があったがそれも4,5回目あたりでなくなっていった。
慣れというものは良くも悪くも人間の精神を安定させてくれる。
「おーい、クリス。そっちはどうだ?」
「ああ、こっちは鉄製の短剣を持っていた。あとはたいしたもんはないな」
「そうか、まぁそうそう美味しい武器ばっかり持ってるやつばかりじゃないわな」
そう言いながら、俺たちのハイエナクラン「血煙旅団」はダンジョンを後にした。
順調だ。下手をしたら冒険者をやっていた時よりも稼いでいる。
稼ぎもいいが、基本的にモンスターと戦わないので武具の消耗も少ないし、アイテムの補充もそんなに頻繁にしなくてよいことがでかい。
経費が少ないと、ここまで違うものか...
俺は目から鱗が落ちる気持ちだった。一度ハイエナになるとやめられないというが、確かにそれはそうだ。こんな美味しい商売、味わったら抜け出せなくなる。
あんなに必死こいて戦っていた冒険者時代が馬鹿みたいだ。
この調子で金を貯めていけば、もしかしたらまたFIRE生活に戻れるかもしれない...
いや、もうFIREは良いか。
結局やることがなくなり暇つぶしに金を浪費する生活。
じりじりと資産が目減りしていくあの何とも言えない気持ちはもうこりごりだ。
確かにこの仕事は蔑まされる職業かもしれないが、別にいいじゃないか。馬鹿にされたって。
聖職者である僧侶が詐欺師になって金をだまし取る世の中だ。
そんな世界でプライドなんて何の役にも立たないだけではなく、寧ろ害悪にしかならない。
まぁ、今はFIRE出来る資産もないし、金を稼ぐとするか...
覚えてしまった娼館通いが辞められないから、そもそもFIRE出来ないかもしれないな。
そう思いながらも、不思議と俺は自分の今の境遇に不満を持たないのであった。