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FIRE民、結婚します

マナにプロポーズをして数日後、俺は頭を抱えて悩んでいた。


「三千万ゴールドがあれば、マナの実家の雑貨屋を立て直すことができる、か」


最初こそ俺のプロポーズに対し渋った様子を見せていたマナであったが、俺が数千万ゴールドの資産を持っていることを仄めかすと急に態度を変えてきた。


結局女は金に弱い。

表向きは優しさとか誠実さとか嘯いているが、札束でひっぱたけば簡単に靡く。


清純そうな顔をしたマナであっても、金さえあれば簡単に股を開くあさましい生き物であることが図らずも証明されてしまった。


しかし、上手くいくかと思ったプロポーズをマナは断ってきた。

俺が何故かを聞くとマナは涙ながらにこう答えたのだ。


「実は、私の実家は雑貨を営んでいるのだけれども最近経営が上手くいってないの。借金が膨らんでいって今では利息を返すので精一杯。私のお給料で何とか持たせている状態だから、やめることはできないの。私だって、こんな仕事をいつまでもつ告げたいと思っていない。でも、どうしようもないの」


酌婦は客に酒を注ぐ仕事、という建前はあるものの勿論仕事はだけではなく、お金を出せば酒場の二階に行ってそういうことをすることが出来る。

というより、多くの男はそれが目的で通っている。

俺もマナとは直ぐにそういう仲になった。


自分の妻が他人に抱かれるのは嫌な俺としては、即刻辞めて欲しいと思っていたのでそういう事情がある女であれば、やはり結婚は止めておこうか、そう思ったのだが


「でも...もし貴方が私の実家の借金を返してくれるのであれば、喜んで貴方の妻になるわ。

ううん、きっと両親も安心して貴方に店を譲るでしょうし、そうなったら貴方と二人で雑貨屋を営むことになると思う。冒険中貴方がいつも言っていた田舎でゆっくりと過ごす日々が出来るのよ。悪くないと思わないかしら?貴方も、自分の妻がいつまでも酌婦をしているのは嫌でしょう?」


自分の金じゃないからって良く言うな。鼻白んだものの確かにその誘いは魅力的だった。

以前田舎でFIREしていた時は地元のしがらみやなんやらで上手くいかなかったが、自分で店を持つのであればまた違った結果だったかもしれない。


愛する妻と一緒に田舎で雑貨屋を営む。ノウハウもマナの両親から教わることである程度やり方も覚えることが出来るだろう。


このままグダグダと都市で金を浪費する生活を送るよりかは、余程素晴らしい生活を送れることになるのではないか?

段々とそう思うようになってきた。


もしマナの借金を肩代わりしたら、恐らくFIREすることはできなくなるだろう。


しかし...FIRE生活をして初めて分かったのだが、人生金だけあっても幸せには慣れない。

仲間や家族、社会の役に立つという充実感も幸せになる為に必要な要素なのだと、今更だが気づいたのだ。


さんざん悩んだが、最終的に俺はマナの両親の借金を肩代わりすることを告げた。


そう告げた時、マナは驚いた顔をして一瞬申し訳なさそうな表情を見せたが、直ぐに満面の笑みを浮かべ涙しながら喜んでくれた。


そのきれいな笑顔を見て、ああ、俺はこのために20年間苦労して金を貯めてきたんだな。

素直にそう思ったのだった。

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