パパ活にハマるFIRE民
「思えば、私たちのパーティーはクリスさんのありがたみに気づいていなかったわ。陰ながら支えてくれた屋台骨の存在であるクリスさんがいなくなったことで、パーティーが崩壊するのは分かりきっていたことなのに。」
「いいんだよ、マナ。しかし、後方支援職は何故こんなにも不当に評価が低いのか?もう少し評価してくれていれば、俺もパーティーを抜けなかったのにな」
「本当にごめんなさい...でも、貴方がお店に会いに来てくれて本当にうれしい。お金は大丈夫なの?無理はしないで。」
「大丈夫だ。こう見えて多少の貯えはあるといっただろ?このぐらいどうってことないさ」
気づけば俺はマナの店の常連客となっていた。柔らかいマナの肩を抱きながら飲む酒だけが俺の無聊を慰めてくれるのだ。
そうして俺は今日も2時間マナを横に座らせて酒を飲み続けた。
「今日もありがとう。また来てね」
マナに手を振りながら宿屋に帰る道中、少しづつ酔いがさめるにつれ俺はまた後悔し始めた。
今月だけで一体何十万ゴールドをマナに使った?
五千万という資産は、浪費をすれば直ぐになくなる程度の小金でしかない。
爪に火を点す気持ちで貯めたお金ではあったが、今現在湯水のごとくマナにつぎ込んでいるせいで、見る見るうちになくなっていっている。
仕方がないのだ。相変わらず週に3日程度の緩い募集では引っかからず、宿屋でボーっとする日々には飽きてしまった。
無聊を慰める為に、週に一回程度と思いマナのいる酒場に通っていたのが段々と週に2日、3日と増えていき、今ではほぼ毎日通ってしまっている始末。
どうせ夕飯ついでに行っているのだから、という自分への言い訳はしかし流石に無理がある。
この調子でマナに金を注ぎ込んでいると、10年たたずに資産がなくなってしまうのは自明の理。
FIREという夢を叶えたのはいいものの、思っている以上に暇が辛い。
夢に邁進している時は酒場で女と飲むなど金の無駄にしか思えなかったが、今となっては唯一の潤いとなってしまっている。
「一体どうすれば良いのか...やはり、もう一度働くしかないのか?」
それもいいのかもしれない。
もう一度冒険者稼業に戻り、マナにプロポーズしてささやかな家庭を持つ。
くだらないと思っていた普通の人生も、マナと一緒であれば悪くないもののように思えてきた。
そうとなれば、明日にでもマナに聞いてみるか。
通っている感触では、恐らくマナは俺に対して好意を持っていると思う。
何より多少目減りしたといっても、俺は数千万円の資産を持っている男。
それをちらつかせれば、酌婦などという底辺から逃れたいと思っているであろうマナからすれば俺は救世主のようなもの。
所詮女など、金さえあればどうとでもなる。
よし、そうと決まったら早速プロポーズ用の花束でも買ってくるか。
女は花に弱いからな笑。