うわ...私の評価、低すぎ...?
そして俺はまたダンジョン都市に戻ってきた。
多少のブランクはあれど、20年間冒険者家業をやってきた俺だ。
ギルトカードに書ける目立ったスキルこそないものの、長年の冒険者稼業で培ってきた経験とノウハウには多少の自負はある。
何より、俺はB級ダンジョンにも潜った実績がある。
ちなみに、簡単に説明するとダンジョンにはS~Eまでの6ランクがある。
Eランクは初心者向けの簡単な迷宮であり、まずは冒険者になりたての新人たちが挑むランク。
Dランクは初心者卒業をして2~3年目の冒険者が挑むランク。ここまでなら才能がなくとも地道に頑張ればだれでもクリアできるレベルだ。
Cランクからは本格的なダンジョン。努力だけでは踏破できない、純然たる才能が必要になってくる。
Bランクはベテラン冒険者たちでもあっさりと死ぬリスクがある高難易度の迷宮だ。
Aランク以降は一般の冒険者達では挑むことすらできない。ギルドの試験に合格し、その才能を認められた選ばれし冒険者たちしか挑めない迷宮となっている。
つまり、B級ダンジョンに潜ったことがある俺は普通に凄いのだ。
なので週に3日ぐらいの緩い募集でも、すぐに見つかるだろうと思ったのだが...
「クリス様。申し訳ございませんがご希望のパーティの募集はありません。週に三日、それも低階層のみの探索限定となると需要はほぼありません。せめて週に五日。階層も応相談で良ければご紹介できないこともないのですが...」
そう言ってギルドの受付嬢は申し訳なさそうに説明してきた。
クソ!これでもう2カ月間もパーティーを組むことが出来ていない!
そもそも冒険者というのはハイリスクハイリターンな職業だ。
リスクを取りたくない奴はとっくのとうに引退するから、基本的に緩く働くなんて働き方は求められていない。
つまり週に3日程度で働きたい、という奴はそもそも冒険者を引退して店を開いたり独立していたりしている。
低階層ではなくそれなりに深い階層であれば需要はあるかもしれないが、その場合は相応の危険と負担を背負うこととなる。
勿論それなりのリターンはあるが、別にそれなりのリターンはいらない。俺は緩く働きたいだけであって、がっつり働きたいわけじゃないしな。ていうかそれはもうFIREじゃない。
仕方なく受付嬢には断りの返答をして、俺はギルドを後にした。
まずいな...ダンジョン都市はその名の通りダンジョンに潜り一定の成果を出す人間には税制などの優遇措置が取られるが、ダンジョンに挑まない人間には当然優遇措置は取られない。
今の宿屋もお世辞にも高級宿とは言えないが、そのくせ結構な家賃を取られている。
食事や日用雑貨も割高だし、この2か月だけで結構な額を支払っている。
勿論、五千万という大金がすぐになくなるわけではないが...何の手立ても取らないままだと、15,6年程で底をついてしまう。
50代で何のスキルもなく貯金ゼロの独身男性...客観的に見てやばい。
病気か何かでもすれば一発で詰んでしまう。
というか、自由を手に入れる為にFIREをしたのに、全然精神的に自由じゃない。
どうなってんだこれ?
「あれ...クリスさん、ですか?」
そんな風にじりじりと焦っている時に声をかけてきたのは、元のパーティメンバーの一人である僧侶のマナだった。