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35歳、第二の人生はじめるぞ

「デュエルスラッシュ!」


そう言ってうちのパーティーの要であるアレスが群れの最後の一匹のオークを倒したことで、俺たちのパーティー「黄昏の暁」は今週の討伐ノルマを達成した。


「ふー、やっぱり中層ともなると楽じゃないな。クリス、水を貰えるか?」


そういうと思っていた俺は荷物の中から素早く水を取り出し、パーティーのリーダーも務めるアレスに渡す。


「うまい!強敵を倒した後の水はやっぱりうまいな。」


そう言ってお礼も言わずに俺に水筒を投げ返す。

ありがとうの一言も言えないのかこいつは...まぁいい。


そんな不満を抱きつつ、俺たちはB級ダンジョン「偽りの黄金郷」を後にした。


俺の名はクリス。今年で35歳になるベテランの冒険者だ。クラスはポーター。つまり荷物持ち。

ダンジョン攻略中に必要な物資の運搬。攻略中に取得したアイテムの保持。仲間たちへのアイテム補給。果てはマップ作成や料理などもこなす。

多岐にわたる雑務を一手に引き受ける、決して派手ではないがパーティーには欠かせない縁の下の力持ち的存在だ。


更に俺は消耗アイテムの補充にあたっての承認との交渉やパーティの経理、冒険者ギルドへの申告等の雑務もこなしている。


自分で言うのもなんだが、俺がいなくてはこのパーティーはやっていけないだろう。

にも拘らず、俺の扱いが軽い。圧倒的に軽い。


確かに前線で戦う剣士に比べると地味ではあるが、大事な存在であることには間違いない。

しかし、どいつもこいつもポーター職と聞くと微妙な顔をする。


口が悪い奴になると、仲間に危険を押し付けて後方で待機し、そのくせ分け前は貰おうとする。

まさにパーティーのお荷物だな笑

等という奴もいるぐらいだ。


モンスターを倒すのがそんなに偉いことなのか?

直接的にモンスターを倒しているわけではないが、俺の陰ながらの後方支援があってこそ前衛は輝く。


そんな後方支援の大変さを分かっていない奴らに囲まれてもう20年。

幾度となく辛いを思いをしてきたのだが...


その後冒険者ギルドに行き、報酬を清算してから解散。

いつものように冒険の打ち上げの誘いを断って宿屋に帰ってきた俺は、顔がにやけるのを止められなかった。


やっと...やっと貯まった!


15歳に実家からたたき出され冒険者になってから、毎日毎日貯金と投資をすることで、苦節20年。

遂に、35歳にしてセミリタイアするための資金である5000万ゴールドが溜まったぞ!


たかが家の手伝いを少しサボったぐらいで俺を追い出したクソ親...

その後、冒険者になってからも俺の後方支援の大切さを理解しないパーティばかりで、いつしか俺は固定パーティを組まない、フリー冒険者となっていた。


こんなクソみたいな働き方から一刻も抜け出すべく、俺は必死に稼いだ金を使わずに貯金貯金貯金。

ある程度資産が出来てからは投資投資投資の日々。


低能どもが娼館や酒場で現を抜かす間も、俺はひたすらに金を貯え続けた。

その結果の5000万ゴールド!

もうこれでクソみたいな冒険者生活ともおさらばだ!


そうとなったら早速俺は次の日にリーダーであるアレスへパーティを抜けることを相談した。


「あぁ、クリス。お前冒険者辞めるのかよ?まぁいいや。今までお疲れさん。」


そう言ってアレスは軽い返事を残し、ダンジョンへと向かっていった。

俺の方が年上なのに、最後まで相変わらずの舐めた態度だ。

少しばかり才能があって顔がイケメンなだけで若手の有望株扱いされているただの剣士のくせに。


前衛職にありがちだが、アレスも俺みたいなポーターを馬鹿にしているのか、ちょくちょく軽んじてくる。

こういう奴がいるから後方支援職は報われないんだよな。


「ちょっと!急に勝手にやめるなんて無責任だと思わないの?そんなんだからその年までうだつの上がらないポーターなんてやっているのよ。まぁ、貴方レベルの代わりならたくさんいるからすぐ見つかるからいいけど笑」


そんな感じで仲間の魔法使いであるリンは煽りながら去っていった。

うぜぇ。ただただうぜぇ。スタイル抜群の美人だからか今までちやほやされてきたのだろう。

顔が良いだけで中身は腐っている阿婆擦れだ。


アレスと付き合っているようで毎晩ダンジョン内でもイチャイチャしやがって。

発情期の盛りのついた猿じゃあるまいし。


どうせ年を取って顔が劣化してきたらあっさり捨てられるに決まっている。

こういう奴が年を取ってフェミニストになるんだろうな。

私たちは、性的搾取をされてきた!みたいな笑。うるせえんだよ。


「クリスさん、大丈夫ですか?もう少し頑張った方が良いのでは...」

心配げに話しかけてくる僧侶のマナ。

清楚な顔立ちに似合わず、こいつはなかなかの巨乳を持っている。

正直エロい。更に年齢もまだ20前後と若い。

嫁にするならこんな子が良いなぁ、と思いアプローチしているのだが、なかなか靡かない。

まぁ俺の魅力が分かるようになるには、まだまだ若すぎるのかもしれないな。


「あー大丈夫だ。多少の貯えもあるし、これからは田舎でゆっくりと過ごすとするよ」

そう言い残し、俺はクソみたいな冒険者家業から足を洗った。


多少じゃないけどな笑。

お前ら金融リテラシーが低い奴には一生貯めれない五千万ゴールドという資産を持ってるけどな笑


俺の第二の人生はこれから始まる!クソみたいな人生とはおさらばだ!

ブラック冒険者を続ける仲間たちが哀れで仕方がないぜ。


精々命を削って稼いで俺の為に税金を納めてくれよな。俺は一足先にセミリタイアさせてもらうぜ笑

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